第20話 みんなを殺したのか?

 学校に着いた。警察側は誰もいないようだ。こころは体育館か? 体育館に近づく。

 ブーブーブー、ブーブーブー。


【まだ15時にはなっていませんがゲームを再開します。ゲームスタートです!】


 まだ30分しか経ってないのにゲーム再開? どうなってるんだ。林がどこかで俺のことを見ているのか?


「きゃっ!? やめて!」


「いいだろ別にもう死ぬだけなんだからよ」


「んっ、やだっ!」


「なら先に死ぬか?」


 体育館の鉄扉を開け中に入る。


「やめろ!」


「はやと!」


 こころが俺のところまで走ってくる。


「ちっ、はやとか」


「亮! お前何やってたんだ?」


「何ってこれからこころと楽しむところだったんだよ。なぁこころ」


「はやとが来なかったら私……」


「こころもう大丈夫だ。下がってろ」


 こころの頭を撫でる。

 ブーブーブー、ブーブーブー。


【新田はやとにより捕まっていた加藤こころが解放された。泥棒チーム残り8人】


「なんだよ、シカトかよ」


 亮が床に転がっていた金属バットを拾う。


「はやと、何回も俺から逃げやがって。今回こそ逃がさねーぞ!」


 亮が持っている金属バットに目がいく。ボコボコにへこんでいた。血も付いている。


「亮がみんなを殺したのか?」


「あぁ、そうだよ」


「なんでそんなことしたんだ!」


「怖かったんだよ。怖くて怖くて仕方なかったんだ。みんな次々脱落していく。次は自分の番じゃないかと思うと怖くて寝れもしねぇー。もううんざりだ」


 亮の目は充血していてくまができていた。


「だからはやと、お前も俺の為に死んでくれ。泥棒全員死ねばゲームは終わるんだ」


 亮が不気味な笑い声を上げる。


「いかれてやがる」


「何がいかれてるだ!」


 亮がバットを振り回す。後ろに飛び、間一髪でかわす。

 野球部のエースで、がたいもしっかりしてる亮がバットを振ると風が伝わってくる。


「避けるのは上手いな。でも何回避けられるかな!」


 ブンッブンッとバットを振る。俺は堪らず距離をとる。あれに当たったら終わりだ。殴り殺される。


「離れたところで俺からは逃げられないぞ」


 亮がポケットから硬式球を取り出した。ステップを踏んで俺目掛けて投げる。


「グアッ」


 背中にボールが当たった。もの凄い痛みでしゃがみ込む。


「はやと!」


「大丈夫だこころ」


 亮が俺との間合いを詰める。


「何が大丈夫だよ。なぁはやと!」


 亮が振り下ろしたバットを左腕で防ぐ。


「ぐあーーっ!」


「ほらほらもっと声出せよ!」


 亮が殴り蹴るの猛攻を仕掛けてきた。俺は丸くなってじっとそれに耐えるしかなかった。殴っている内に徐々に亮の息が上がってきた。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【新田はやと、桐谷亮により確保。泥棒チーム残り7人】


「んっ? 触ったからか。あー疲れた。ったくしぶといなはやと。だが、これで終わりだ」


 亮がバットを俺の頭の上に振り上げる。やばい、このままじゃやられる。一か八か賭けに出るしかない。

 俺は、最後の力を振り絞って丸くなっていた体の隙間からスマホを出しシャッターを切った。


「お前!」


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【安藤里菜、渡辺洋一、新田はやとが特別ルールを達成。よって桐谷亮が脱落。警察チーム残り7人】


 パンッパンッ。パパパンッ。


「はや……と……」


 亮が銃で何発も撃たれて倒れた。

 撃ったのは、翔子の時に見た緑色の作業着の男たちだ。

 亮の顔を覘き込む。


「笑ってる……」


 この緊張した状態から解き放たれたからなのか、亮は幸せそうに笑ったまま動かなくなっていた。クラスで明るく馬鹿やって騒いでいた亮が人を殺していただなんて考えられない。

 このゲームは人格をも変えてしまう。


「はやと! 体大丈夫?」


「大丈夫じゃないからちょっと休ませて」


「うん」


 こころが俺の体を起こす。亮に殴られたところが全身痛んだ。

 ブーブーブー、ブーブーブー。


【加藤こころにより捕まっていた新田はやとが解放された。泥棒チーム残り8人】

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