第21話 誰だこれ?
体育館に15分くらい残っていたが、マップ上の丸い点を含む警察側の人間は誰も来なかった。
俊介に電話をかける。
「もしもし」
『どうした?』
「殺人鬼の件なんだけど」
『何か分かったのか?』
「亮だったよ。みんなを殺したのかって聞いたら認めたよ」
『亮が……そうだったのか。みんなには伝えておくよ』
「また、悪いな」
『いいよ気にしなくて』
「ありがとう。じゃあな」
『おう』
電話を切る。
殺人鬼は死んだ。亮が死んだ。俺が殺したんだ。
「はやと、顔怖いよ」
「あっ、あぁごめん」
体育館で桃に電話をしたら家で隠れていると言っていたので、俺とこころは桃の家に向かうことにした。
こころの話によると亮に追われているとき、桃を庇ってこころが捕まったらしい。
マップを見ながら桃の家を目指す。
「こころ、ストップ」
丸い点が2つこっちに向かってくる。明日香と翼か?
点の移動するスピードは速くないので恐らく歩いているのだろう。
「誰か見てみる?」
「うーん。見たらすぐ離れよう」
俺たちも丸い点に近づく。すぐそこまで来た。電柱の影に隠れて道路を覘く。
「まこっちゃんだ」
誠が警察4人を率いて堂々と道路を歩いていた。明日香と翼の姿はない。
「やばい」
誠と目が合った。誠の口角が少し上がった。
「離れよう」
誠以外の警察に気付かれないように急いでその場を立ち去った。
なぜか誠は追って来なかった。その場の警察全員に言えば簡単に俺とこころを捕まえることができたはずなのに。
もう今日のルールはクリアしてるから明日の分にでも取っておこうって考えなのか?
誠のあの笑顔が頭に残る。
桃の家に着いた。
「桃! いるか?」
ガタッガタッと音がした後ドアが開いた。
「はやと君、こころちゃん」
部屋に入る。
「こころちゃんごめんね」
「いいよ全然!」
「はやと君、ありがとう」
桃が下を向く。
「桃は、悪くないんだからそんなに落ち込まなくていいんだぞ」
「本当にありがとう」
「うん。いいってことよ」
「そういえば警察の人追ってこないね」
こころが俺にマップを見せる。学校に丸い点が4つ固まっていた。
「今日はもう大丈夫そうだな」
自分で言っていて思った。何が大丈夫だ。今日も何人も死んだ。もうクラスメイトは半分しか生き残っていない。
「はやと、誰か警察の所に行ってるよ」
「えっ?」
マップの四角い点の1つが学校の丸い点の1つに向かって移動していた。
「んっ? 誰だこれ?」
「誰だろうね」
ブーブーブー、ブーブーブー。
【本日のゲームは、只今を持ちまして終了です。お疲れ様でした】
ブーブーブー、ブーブーブー。
【ルールに従い、泥棒チームの以下2名を脱落とする。酒井夏帆、高橋桃。泥棒チーム残り6人】
「えっ!? うち?」
「桃こっちに来い!」
俺は、桃を引き寄せ、銃の盾になることにした。目の前で死なれるのは嫌だ。
玄関が激しい音と共に開き、緑の作業着の男たちが入ってきた。全員銃を桃に向ける。
「危ないので離れて下さい」
「嫌だ」
「あなたごとまとめて撃ち抜きますよ!」
何かこの状況を打開する策はないか?
この絶体絶命の状況を引っ繰り返す何か。
「分かりました。どける気はないとゆうことですね」
男は床に思いっきり何かを叩きつけた。
「煙幕?」
部屋中に煙が広がる。何も見えない。
「はやと、窓開けに行くね」
「頼む」
ぐぁっ。
誰かに突き飛ばされた。
「しまった。桃!」
パンッ。
こころが窓を開き、段々部屋の中が見えてきた。
桃が心臓付近を撃たれ倒れていた。
「あんまりだ。お前たちやり過ぎだろ。こんなことしなくたって別にやり方があるだろ!」
俺は、怒りに任せ1番近くにいた男に殴りかかろうと走る。
男が俺に銃を向けた。
「く、来るな! 撃つぞ」
咄嗟にスライディングをして銃の照準を合わせないように素早く移動する。
ドガッ。右の拳で力いっぱい男の顔面を殴った。男が勢いで転がる。
「痛ってぇーなこのやろー!」
男が銃を再び俺に向ける。
「おい、もうやめろ! 行くぞ」
他の男たちが桃を抱えて部屋から出て行った。
「くそっ!」
男はそう言い残し、部屋から去って行った。
「桃っち……」
こころは窓の横で泣き崩れていた。
ブーブーブー、ブーブーブー。
【笹篤史、ゲーム続行不可能の為脱落。警察チーム残り6人】
「嘘だろ。殺人鬼は亮のはずだろ。なんでまだこのメールが届くんだよ!」
こころが涙を手で拭いスマホを見る。
「はやと、なんで?」
「分からない……」
他にも殺人鬼はいたってことか?
だけど亮は自分だって認めてたし。何がどうなってるんだ。
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