第19話 これ以上ゲームは続けられない

「どうする? カメラ機能使うか?」


 雅人がスマホをホーム画面からカメラ機能に切り替える。


「いや、俺と雅人じゃ2人だ。ルールだと3人必要だからただ捕まるだけになるぞ」


「でも俺たち以外の誰かが先に撮ってるかもしれないじゃないか」


「そうかもしれないけどそうじゃなかった時のことを考えろ。泥棒が2人死ぬんだぞ」


 そうこう話している内に翼が突っ込んできた。俺と雅人がバラバラに逃げる。

 俺は、空き家の方に、雅人は北地区に向かった。

 翼は雅人を追っていった。


「雅人大丈夫かな?」


 畑の真ん中で俺が呟く。


「人のこと心配してる余裕があるのかしら?」


「明日香!」


 後ろに明日香が立っていた。全く気が付かなかった。気配を消してきたのか?


「くそっ」


 伸びてきた明日香の手を寸前のところでかわす。俺も北地区に向かった。西地区はまだましかと思っていたけどそうではなかった。

 今度、翼に見つかったら逃げ切れる自信がない。朝からずっと走りっぱなしで足が思うように動かない。


 北地区にきた。明日香からは無事逃げることができた。丸い点も西地区で止まっている。諦めてくれたようだ。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【小池雅人、丹羽翼により確保。泥棒チーム残り9人】


 雅人は逃げ切れなかったか。

 まずい、殺人鬼が動くかもしれない。


 ブーブーブー、ブーブーブー。

 俊介からだ。


『はやと、今大丈夫か?』


「あぁ、だけどマップの四角い点の1つは俺だから警察がいつ寄ってくるか分からない」


『4人の内の1人は、はやとだったのか。今どこにいる?』


「西地区から北地区に入ったすぐのところだよ」


『そうか近いな。俺は対象者じゃなかったから雅人を助けに行ってくる。はやとは自分のことで精一杯だと思うからそのまま逃げ続けろ』


「悪いな俊介」


『他にも何人か一緒に行くから雅人のことは任せとけ』


「ありがとう」


 電話を切る。


 遠くの方に誠を見つけた。歩きスマホをしながらこっちに近づいてくる。丸い点がマップにないことから誠は対象者じゃないことがわかる。

 救出作戦のとき、誠に裏切られて酷い目にあったからな。俺は、誠から離れた。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【小池雅人、ゲーム続行不可能の為、脱落。泥棒チーム残り9人】


 俊介たちは間に合わなかったのか?


 ブーブーブー、ブーブーブー。


「翔子か」


『雅人がゲーム続行不可能ってどうゆうこと? 雅人は死んだの?』


 俺は唇を強く噛みしめる。雅人と翔子と勤はいつも一緒だった。

 俺とこころと誠のようなものだ。だが、勤は1日目に脱落し、雅人は未だ謎の殺人鬼に殺され、翔子だけが残された。翔子の立場が俺だったら……。


「……うん」


『雅人まで……。雅人までいなくなったら私1人だよ』


「……」


 返す言葉がなかった。


『私もうこれ以上ゲームは続けられない。雅人と勤を追うね』


「待て翔子!」


 スマホが地面に落ちた音がした。電話は繋がったままだが翔子の反応がない。

 俺は急いで西地区の空き家に向かった。自分が特別ルール2の対象者だとゆうことを忘れて無我夢中で走った。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【前田翔子、ゲーム続行不可能の為脱落。泥棒チーム残り8人】


 空き家に入る。


「翔子……」


 翔子は空き家で首を吊っていた。舌がダランと口から出ていて目には涙の跡があった。


「はい、どいてどいてー」


「翔子に何するんですか? 誰ですかあなたたちは?」


 緑の作業着を来た男が数人がかりで翔子を床に下ろした。


「政府から派遣されたこのゲームを担当してる者です。私共のことは気にしないで早くゲームに戻って下さい」


「気にしないでって翔子が……」


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【加藤こころ、桐谷亮により確保。泥棒チーム残り7人】


 やばい! こころが! もう自分が対象者だなんてどうでもいい。こころを助ける。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【今から15時まで休憩と致します。それぞれご自由にお過ごし下さい】


 休憩なんて関係ない。こころだけは失いたくない。俺は学校に向かった。

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