4日目

第18話 めちゃくちゃなルール

 10月13日(土)


 ブーブーブー、ブーブーブー。


 スマホが振動して俺は飛び起きた。

 選別ゲームが始まってからスマホの振動が嫌いになった。クラスメイトの誰かが脱落した連絡、ゲーム開始の合図。スマホが振動していい知らせだったためしがない。 

 それは今日も同じだ。


【本日のゲームは8時30分から行います。学校に登校しなくて構いません】


 こころと桃もすぐに起きた。テーブルで朝ごはんを食べる。


「はやと、今日も桃っちの家に隠れるんだよね?」


「ここ以上に安全な場所はないからな。桃いいか?」


「うちは全然いいよ!」


 今日も桃の家に隠れて1日やり過ごそう。でも、誰かが捕まったらすぐに助けに行こう。昨日の理久のこともあるし。


 ブーブーブー、ブーブーブー。

 ゲーム開始か。


【8時30分になりました。どろけい4日目ゲームスタートです!】


 ブーブーブー、ブーブーブー。

 なんだよ何回も鳴りやがって。


【ゲーム開始に伴い、只今から特別ルールを更に追加致します。特別ルール2:スマホのホーム画面にそれぞれのチームの4名の現在位置を表示する。四角い点が泥棒チーム、丸い点が警察チーム。対象者はランダムで選ばれ、脱落したら点は消える】


 特別ルールは昨日のだけじゃなかったのか!?


「なんだよこのめちゃくちゃなルールは」


「桃っちの家に四角い点があるよ!」


「あっ、本当だ」


 こころと桃がスマホのホーム画面を開き、点の位置を確認する。同じように俺もスマホを開く。

 ホーム画面には、学校周辺と北地区、西地区のマップが表示されていて四角い点と丸い点が散らばっていた。2人の言う通りここ、桃の家にも四角い点があった。


「まずい! 早く外に出るぞ!」


 こころと桃を外に連れ出す。マップを見た警察が捕まえにくるはずだ。建物の中は特別ルールによって1番安全な場所から1番危険な場所に変わった。


「誰が対象者なんだ? こころと桃、ちょっと広がってくれ!」


 こころと桃が道路に広がる。マップの四角い点は少しも動かない。


「もしかして俺か?」


 マップを見ながら住宅街を走る。点も俺と共に移動した。


「この点は俺のだった。俺と一緒にいると危ないから2人で逃げてくれ」


「はやとはどうするの?」


「俺も絶対逃げのびるから大丈夫だ」


 学校の方から丸い点が近づいてくる。


「ほら来た。こころも桃も絶対逃げるんだぞ」


 こころと桃と別れ、俺は丸い点から逃げた。逃げても逃げても追いかけてくる。敵の居場所が分かっているどろけいなんてぶっ壊れもいいところだ。


 北地区から西地区に移動した。

 西地区は農業エリアで見晴らしが良くて危険だが、居場所がバレている今はそんなことは関係ない。逆に敵を見つけやすくて好都合だ。

 俺は、畑の一角に這いつくばり、身を潜めた。


 丸い点と四角い点が1つずつ近づいてくる。


「んっ? 誰だ?」


 畑から少し顔を上げ四角い点の方角を見る。


「雅人!」


 雅人が走ってこっちに向かってきていた。


「はやとだったのか! 助けてくれ」

 

 助けて?

 もう1度マップに目をやる。雅人の後ろから丸い点が追ってきていた。


「待ちなさいあんたたち!」


 最初に見えていた丸い点は明日香の点だったようだ。凄い形相で走ってくる。


「雅人。とりあえずこっちだ」


 俺は、雅人と一緒にビニールハウスが沢山並んでいる所まで走って逃げた。当然マップに俺たちの点が映っているので明日香ともう1つの点も近づいてくる。


「誰に追われてたんだ?」


「はぁ、はぁ、翼だ。あいつ足早すぎる」


 息を切らしながら雅人が答えた。

 翼は、サッカー部で表彰されたりもする高校生の中では有名な選手だ。当然、足も早いし持久力もある。


「翔子はどうした?」


「あの空き家にいるよ。あそこなら安全だと思うし、メールが来たとき俺と翔子は別な場所にいたから多分バレてないからさ」


「そうか」


 丸い点がかなり近づく。


「ここから離れよう」


 俺と雅人がビニールハウスから離れようとした時、翼が現れた。明日香も一緒だ。 

 その距離約30メートル。

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