3日目

第13話 救出作戦開始

◆  ◆  ◆ 


10月12日(金)


 体育館でごうがそわそわと動く。


「どうしよう。もう3日目だよ洋一。はやとたち助けに来るかな?」


「はやとならきっと来るさ」


「俊介……」


 俊介が自信をもって剛に答える。隣に夏帆もいる。


「ちょっと待ってろ」


 洋一は、スマホ片手に3人から遠ざかる。


「もしもし。はやとか?」


『洋一! なんだよいきなり』


「助けにこい。このままじゃ全滅するぞ」


『言われなくても分かってるよ』


「そうか。最後に1つだけ、誠には注意しろ」


『なんでお前にそんなこと言われなくちゃならないんだよ。誠の何を知ってるんだ!』


 はやとに電話を切られた。


「何を知ってるんだって全部知ってるんだよ……。それにこのゲームが辛くなるのはこれからなんだ」


 洋一が小さい声で呟く。


「剛、はやと助けに来るって」


 洋一が剛に伝える。


「はやとに電話してたのか。よっしゃー、待ってるぜはやとー」



◆  ◆  ◆


 3日目の目覚めは最悪だった。洋一からの電話で起きた。何が誠には注意しろだ。何考えてるかわからない洋一の方がよっぽど怖いわ。

 ブーブーブー、ブーブーブー。


【本日のゲームは、8時30分から行います。学校に登校しなくて構いません】


 昨日と同じか。こころと桃はまだ布団の中にいた。揺すって起こす。


「こころ、桃も朝だぞ。起きろ」


「んー、おはよー」


 こころが俺に抱き着いた。


「おい、こころ寝ぼけてるって、これは俺の腕だって」


「はやと君、おはよう」


「おう、おはよう桃。ちょっと手伝ってくれ」


 桃と一緒に俺からこころを引き離した。


「じゃあ、後は任せた」


 桃にそう言い俺は、廊下で雅人に電話をかけた。もちろん出ない。


「雅人。今日の午前中、俺たちは俊介を救出しに行く。雅人と翔子の力も必要なんだ。よかったら一緒に救出に来てくれ」


 留守番電話にそう残した。聞いてくれればいいんだけど。

 ピンポーン。

 桃の家のチャイムが鳴る。来たか。


「はやと君、出て—」


「はいよ」


 玄関に行きドアを開ける。


「おう。里菜、理久」


「おはよう。はやと」


 里菜と理久を呼んでおいたのだ。これからの作戦のために。

 部屋に座り救出作戦の最終確認をした。


「昨日こころと桃が学校を調べてきてくれたんだけど、正門から入って大丈夫だと思う。誠も協力してくれるから上手くいくはずだ」


「大丈夫なのか? 敵を信用して」


 理久も洋一と同じようなことを……。だが、客観的に見れば仕方ないか。

 起きてから時間が経ったので頭が働くようになった。


「誠は信用していい。安心しろ」


「そうか。わかった」


 理久がコクコクと頷く。


「雅人と翔子は?」


「電話したけど出なかった」


「そう。なら私たち5人で行きましょ!」


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【8時30分になりました。どろけい3日目ゲームスタートです!】


「行こう!」


 学校の正門へ向かう。ゲームが始まったというのに警察を1人も見ない。いつもなら前半戦は、全力で追いかけてくるのに。誠が上手いことやってくれてるのか?

 それとも明日香と桜の新しい作戦か?


 9時ジャスト、正門に到着。正門を抜けるとすぐにグラウンド、左手の奥に校舎があり、校舎の右に体育館がある。体育館の前に誠がいた。こちらに気付き手を振っている。


「明日香ちゃんと桜ちゃんたちは、西地区に行ってるよ!」


 やはり誠が上手くやってくれたようだ。

 俺たちは、体育館に向かって一直線に走る。


「やった! 剛を助けられる」


「里菜、喜ぶのは助けてからにしろよ」


 と、言いつつ俺も思わず頬が上がってしまう。これでみんなを助けられる。


 誠がポケットに手を入れた。ポケットから笛を取り出し、思いっきり吹いた。学校の敷地外まで笛の音が響く。


「えっ? なに、なに?」


 こころがキョロキョロと周りを見る。


「何やってるんだよ誠……?」


「泥棒が来たぞー!」


 誠が叫ぶのと同時に、校舎の中から明日香と桜が姿を見せた。

 そして、次々に物陰から警察の奴らが現れた。


「誠、お前……」

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