第14話 裏切ったのかよ!

「さぁ、全員残らず捕まえなさい!」


 明日香が警察に命令する。命令を受けて警察のメンバー全員が俺たちを追いかける。


「誠の言う通り泥棒が、のこのこと来たわね」


「これでもう泥棒は終わりね」


 明日香と桜が誠の隣に立つ。


「うん。これで僕たち全員が生き残れる」



「くそぉ。誠、裏切ったのかよ! なんで……」


「いいから今は逃げるぞ」


 理久に引っ張られて正門目指して走る。

 必死にグラウンドを走るが、逃げ切るのは厳しそうだ。もう何分ももたないだろう。正門も警察側が占拠して、出口は裏門しかなくなった。


 桃がもう捕まりそうだ。あちこちで捕まりそうになっている。なんたって警察は12人でこっちは5人だ。数で圧倒的に不利だ。

 仮に俺らが全員捕まってしまったら罰を2人、雅人と翔子が受けて泥棒は全滅だ。それだけは避けなくてはならない。


 そんなことを考えていたら、俺は足がもつれてこけた。亮が俺の前に立つ。


「あの時は、逃げられたからな。今度は逃がさないぞ」


 クッ。俺もここまでか。後はみんな逃げのびてくれ……。


 パンッ。


 俺が諦めかけたその時、1発の銃声が響いた。体育館の方からだ。

 体育館に目をやると、中から拳銃を持った洋一が出てきた。体育館の窓を銃で打ち抜いていた。


「なんで洋一が?」


 明日香が驚く。いや、グラウンドにいた全員が驚いた。


「あんたは捕まってるはずでしょ。なんで外に出てきてるのよ」


 俊介、夏帆、剛も出てきた。


「なんでって、ルールに書いてあるじゃねーか。捕まった泥棒は、逃亡している泥棒に触れることで逃亡可能って」


「逃亡してる泥棒って、あっ……」


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【小池雅人、前田翔子により捕まっていた以下4名が解放された。峰岸俊介、鳥旗剛、酒井夏帆、渡辺洋一。泥棒チーム残り11人】


 体育館の中から雅人と翔子が出てきた。


「こいつらが裏門から入ってきて俺たちを助けてくれたんだ」


「け、計画が狂った。私たちの絶対的な計画が……。あなたたちのせいで!!」


 明日香が頭を掻きむしりながら洋一に近づこうとする。


「おっと動くなよ。頭を撃ち抜かれたくなかったらな」


 洋一が明日香に拳銃を向ける。明日香が悔しそうな顔をして止まった。


「そっちにいる奴らもだぞ!」


 洋一のこの一言で形成は大きく逆転した。警察の誰も動けなくなった。洋一たちが俺に向かって歩いてきた。


「雅人、翔子来てくれたんだな」


「あぁ、留守電聞いたよ。昨日、翔子と話し合ってやっぱり今のままを勤は望んでないってなって。はやとに協力することにしたんだ……」


「協力してくれてありがとう。本当にありがとう」


「はやと!」


「俊介」


「お前なら助けに来てくれるって信じてたよ」


 俊介とがっちりと握手をする。

 色々あったが救出作戦は無事に成功し、泥棒チームは7人から11人に増えた。

 洋一が正門に立っている奴に銃を向ける。


「どけよ」


 銃を持っている洋一に逆らえるはずもなくそそくさと道を開けた。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【今から14時まで休憩と致します。それぞれご自由にお過ごし下さい】


 タイミング良く休憩になり、俺たちは北地区の公園に向かった。


 11人全員で砂場を囲む。


「ところで洋一。その拳銃はなんだ?」


「あぁこれか」


 洋一が右手に持っている拳銃を見る。

 そして俺たちは、洋一の過去を知ることになる。誰もが予想していなかった過去だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る