第8話 2人を助けて

◆  ◆  ◆


 桃の両親は仕事に行ったらしく、こころと桃が朝ごはんを作ってくれた。

 美味しかった。味噌汁が疲れた体に染みた。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【8時30分になりました。どろけい2日目ゲームスタートです!】


 ふと俺は思った。


「家の中に隠れててもいいんじゃないか?」


「あっ……」


「凄いよはやと! そうだよ隠れてればいいじゃん♪」


 桃が口を半開きにさせながらどろけいのルールを読み直す。


「はやと君の言う通り、どこにも家に隠れてちゃダメって書いてないよ!」


「じゃあ、桃っちの家に隠れてよー」


 こころが桃に抱きつく。

 そうだ、これなら逃げることなく逃げ切れる。まさか警察の奴らも人の家までは入って来ないだろう。鍵もかけてるし。


 俺の作戦通りゲーム開始から1時間経っても、誰も訪ねてくることはなかった。

 みんなも順調に逃げているようだ。そう思っていた時、スマホが振動した。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


「はい」


『はぁー、ふぅ、まなみが警察に追われて、俊介と一緒に逃げてるんだけど……夏帆馬鹿だから1人で逃げちゃって……はやとー、2人を助けて』


 夏帆の呼吸が乱れている。


「まなみと俊介が! 場所はどこだ?」


『北地区の公園の近くではぐれたからその近くにいると思う』


「分かった。夏帆は、逃げてろよ」


『うん。ありがとう』


 電話を切る。


「どうしたの?」


「俊介とまなみが追われてるらしい。助けて欲しいって夏帆から」


「助けに行くの?」


 心配そうな顔でこころがおれに訊く。


「あぁ、助けてって言われたら助けに行かなきゃ。2人は、家で待っててくれ」


「気を付けてね」


「おう!」


 玄関から外に出る。

 公園までは、そう遠い距離ではない。5分もあれば着くだろう。

 果たしてどう助けたらいいものか。やはり、どこかの家に隠れるのが得策か。


 そうこう考えている内に公園に着いた。

 公園には誰もいなかった。もう移動してるよな。あっちかな。

 入り組んだ住宅街の方へ向かう。俺は、歩いて住宅街にいるかもしれない俊介とまなみを探した。


 曲がり角を曲がる。


「俊介! まなみ!!」


 曲がった先に俊介とまなみがいた。それと警察の愛花、五月、樹も一緒にいた。


「はやと!」


「どうしたんだ?」


「いや、それがな途中までは追われてたんだけど急に止まって……」


「浩也君と勤君、死んだんでしょ?」


 愛花が俺に聞く。


「うん」


「私たちが俊介たちを捕まえたらその人が死ぬかもしれないんでしょ? 私、できないよそんなの……。ずっと一緒に勉強とかしてきた友達をクラスメイトをそんな……」


 愛花が泣き出す。

 五月は既に泣いていた。


「だから俺たちは、お前たちを捕まえないよ」


 樹が真っ直ぐな瞳で俺たちを見た。


「そうだよな。クラスメイトでこんなことおかしいよな。でも、樹たちが捕まえないと2人ずつ罰を受けていくぞ」


「俺たち以外が、捕まえに行くはずだ。明日香と桜には気を付けろ」


「ちょっと愛花、五月、樹。何してるの? 早く捕まえなさいよ」


「朝の洋一のことといい、この状況はどういうことかしら?」


 噂をすれば、明日香と桜だ。樹がアイコンタクトで逃げろと言っている。


「逃げるぞ俊介! まなみ!」


 明日香と桜のいない方へ俺たちは走った。


「亮! 翼! そっちに行ったわよ」


 行く先に亮と翼が現れた。

 まずい、ここは1本道だ。見事に挟まれてしまった。


「俊介……」


 まなみが俊介にどうするか聞く。


「引き返そう。明日香と桜を俺が吹っ飛ばすから、そのうちにはやととまなみは逃げろ!」


「でも、それじゃあ俊介が」


「待てコラー!」


 亮と翼が追いかけてくる。野球部にサッカー部だ。足が速い。


「迷ってる暇はない。突っ込むぞ! うおぉーーー!!!」


 俊介が明日香と桜にタックルをし、2人を吹っ飛ばし道を切り開いた。


「はやと!! 後は頼んだぞ!」


 ブーブーブー、ブーブーブー。

 スマホが振動する。

 俊介の腕を明日香が掴んでいた。


「逃げられると思うなよ!」


 亮がすぐそこまで迫っていた。

 ドガッ。


「痛ってーな。何すんだよ、樹ーー!!」


 樹が亮にタックルをして行く手を阻んでくれたようだ。愛花と五月は、翼の足止めをしていた。


ごめん俊介。ありがとう樹、愛花、五月。

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