2日目

第7話 自信があるかどうか

 ゲームがいつ始まるか分からないので、北地区の住宅街に住んでいる桃の家に泊めてもらうことになった。

 さすがにお泊り楽しいねー、なんてこころも桃も言うはずはなく、突き付けられた現実を必死に受け止めようとしていた。

 こころと桃と一緒の部屋で寝たが、誰も特に話さず一夜を明かした。



10月11日(木)


 目覚まし時計が鳴って俺たちは起きた。あんなに不安で眠れない夜はなかった。1時間寝たかどうかだ。


「んー、おはよう。はやと、桃っちー」


 こころが欠伸をしながら起きる。

 桃が目覚ましを止める。7時になろうとしていた。


「おはよう、こころちゃん、はやと君」


「おはよう」


 ブーブーブー、ブーブーブー。

 くそっ。メールだ。


【本日のゲームは、8時30分から行います。学校に登校しなくて構いません】


「8時30分からなんだね」


「だな。何時間続くんだか」


「逃げ切ろうね!」


 桃が声を張る。


「あぁ。今日どうするか俊介と相談しよう」


 昨日の今日で、俊介のメンタルが心配だがリーダーである俊介に方針を決めてもらわないと動けないので聞くしかなかった。

 もちろん俺も相当ショックを受けている。2年間、浩也とは同じクラスだったしよく遊んだ仲だった。


「あれ、出ないな……」


 俊介に電話をかけたが出なかった。

 ブーブーブー、ブーブーブー。

 夏帆からだ。


「もしもし」


『あっ、はやとー。俊介落ち込んじゃってー、元気ないんだよねー』


「そうだよな。今日、どうするか聞こうと思ったんだけど無理そうか?」


『聞いてみるー』


………………。


『昨日と同じでだってー』


「そうか。分かった。ありがとな!」


『うん。んじゃねー』



◆  ◆  ◆


 体育館には、洋一と剛の2人、それを見張っている数人がいた。


「ねぇ、お腹空いたんだけどなんかないの?」


「少しくらい我慢しなさいよ。捕まってる身なんだから」


 洋一が明日香に食べ物を依頼したが、明日香はあっさりとそれを断った。


「我慢の限界だから言ってるんだろ。殺すぞ」


 洋一が凄い形相で睨む。目を見るからに冗談で言っているのではないようだ。


「洋一君、怒んないで。食べ物あるから」


 明日香と共に見張りをしていた阿部愛花あべあいか雪野五月ゆきのさつき古川樹ふるかわたつきがパンやらコンビニのおかずやらを持ってきた。


「剛君もはい」


「ありがとう」


 愛花から食べ物を受け取る。


「あなた本当になんなの?」


 明日香が洋一に質問する。


「クラスメイトだけど?」


「それはそうでしょうけど……いいわ」


 体育館から見張り全員が去って行った。


「剛、そんなに暗い顔しなくても大丈夫だぞ」


 ほぼ話したことがない洋一に何の違和感もなく呼び捨てで呼ばれ剛が驚く。


「大丈夫ってどういうこと?」


「近い内に助けが来るってことだよ」


「なんでそんなことが分かるの?」


「警察側からして、ここを防衛するメリットがないからだ。あっちは、2人捕まえれば全員罰を受けないだろ。わざわざここを防衛して少ない獲物を追うより、いっそのこと俺らを逃がした方がいいだろ」


「じゃあ、助けを待ってれば助かるってことか」


「今の所、そうなんだけど場合によるんだよなー」


「場合って?」


「全滅を狙ってたら助けなんて来させないだろうし、ここをがっちり防衛するはずだ。まぁ、あのクラス委員がそこまで自信があるかどうかなんだけどな」


「凄いね、洋一。そこまで考えてるなんて……」


「あ……あぁ、だからとりあえず今は、ゆっくりと助けを待てばいいのさ」


 洋一と剛は、愛花たちにもらった食べ物を再び食べ始めた。

 2日目のゲームが始まる。

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