Tシャツ メッセージ
昨日、白人の男の子に駅で出くわした。
彼の体よりも大きめの緑のTシャツには白い文字でこう書かれていた。
DON'T WORRY. BE HAPPY!
(心配するなよ。ハッピーで!)
今日はショッピングモールの上りのエスカレーターで
私の前に立ったカップルが後ろに立つ私に「絶対読めよ」と言わんばかりに横並びに立っていた。彼らが着ていた黒いTシャツには白い文字でこう書かれていた。
I LIKE MYSELF!(自分が好きだ~!)
なんだか、見えない高いところからメッセージが毎日一文ずつ届けられている気がする。
明日は誰がどんなTシャツメッセージを届けてくれるんだろう?
なんだか、楽しみが1つ増えて、得した気分だ。
なんとなく過ぎ去っていく時間や日々の中で出会う人や再会するひと、目にするコピーや風景は私たちの心に語り掛けて来る。
それは、もしかすると、私が心の奥深くでAというものを欲していて、A´なものを見つけて無理やりこじ付け、都合の良いように解釈しようとしているのかもしれない。
昨日、1年と9か月ぶりに仕事で一緒になったある人が、とっぴおしもなく、6年付き合った彼女が去っていったことを私に打ち明けてきた。
「6年もつきあったんだぜ。全ては私のせい。と言って、FBも他のSNSからもオレをブロックして、連絡の取りようがない。6年も付き合って、アイツには沢山尽くしてやったんだ」
なるほど、つらい思いをしているのは分かるけれど、聞いてきて気分が良いものではないと無慈悲にも私は思う。
6年を費やして、実らない結果を得たのは彼女も一緒だろう。
どう言う結果を迎えたとしても、どちらかがどちらかにこれだけ多くの事をしてやったなんて思うならば、初めから付き合うことすらしなければよいのだ。
そんな言葉を聞かされて、心打たれる人間はいない。
そんな事を想いながら、私も同じようなことを人にしている気がする。
まるで、雲よりも空よりも高いところから声が聞こえるように
私は諭される。
そして、
後日、久々に見つけたTシャツメッセージは
電車で向かい合わせに座った、非常に恰幅の良い、色白で、御髪の寂しい中国人の中年男性だった。
緑の生地に白字。
「Hello, Darling!」
思わず見えなかったことを決め込むことにしたこと、
楽しみはその瞬間に幕をおろしたことは、
言うまでもない。
小さな楽しみを失った数日後、イケメンの男の子が着ていたTシャツから送られた。
「Get over!」(乗り越えろ!)
悲しいことも、自分を自分で励ましたくなるような現実も、そんな状況にコレでもかと降りかかる仕打ちも、
笑い飛ばすしかないだろう!という泣くにも泣けない状況も。
乗り越えろ。Get over
メッセージは送り続けられる。
人間なんて、所詮、見たいものだけを見て、
聞きたいものだけを聞く。
オンディマンドだ。
高いところから送られていると思うそのメッセージは、
自分の胸の奥底から来る自分へのメッセージ。
明日も、明後日も、探し続ける。
自分の声を...。
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