第三話 最大の敵は案外近くに居るようです。
「え?」
イロハちゃんは俺の言葉を聞くなりポカーンとしている。まさか、帰れないのか!?
「うーん、帰れるっちゃ帰れるんだけど……帰る気あったんだ」
「そりゃあね。二次元の女の子は最高だけど、現実の家族が心配だよ」
俺が良いことを言ったら黙り込んでしまった。何か考えてるようだけど。
「解ったわ。帰り方を教えてあげる。でも、大変よ?」
「大変?」
イロハちゃんいわく、元の次元に帰るには例の魔王を倒さなくてはならないらしい。やはりラスボス討伐が必要なようだ。魔王を倒すまで元の次元に帰れない=魔王探しの旅が必然的。故に暫く家には帰れないと。そうと解っていれば溜まってたアニメ全制覇してきたのに。
「それでもいい?って言っても、もう帰れないんだけどね」
「仕方ない。倒すまで帰れないんだろう?行くしかないな」
「それじゃあ、張り切って行きましょう!」
「切り替え早いな」
この世界に居る間は時間が止まっている。だから家族は問題ない……らしい。それなら、魔王探しに支障がでない。
「よし、行くか!」
「……帰る」
「待って、帰ろうとしないで!」
「離せ!離すんだイロハちゃん!いくら嫁の言うことでも聞けない!!」
なんだよ。まだ1㎞も歩いてないんですけど。なんで魔王居るんすか。いやもしかして雑魚?いやいや、あの風貌は魔王だろ。おかしい、おかしすぎる……。
「あのー、さっき我を倒せばどうとかって」
あ、これ完全魔王様だわ。
「ど、どうしてここに魔王が居るの!?こんな始まりの地みたいな所で!」
「娘とピクニックに来たんですよ」
やだぁ、魔王様って良い所あるじゃーん。
「ちょっと、山崎君!白目むいてる!しっかりして!!」
嫁が何か言ってるがもう知ったことか。ラスボスが開始10分弱で出るなんてチートかよ。
「あの、いったん帰りましょうか?」
「こ、これはチャンスよ山崎君!すぐに帰れるじゃない!」
嫁まで頭おかしくなったみたいだ。ラスボスにLv.1の新米が勝てる訳が無いじゃないか。
「これからどうすればいいんだよ……」
人生現実(リアル)あり非現実(ゲーム)あり 琉兎 @damegane6262
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