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本日は二話投稿

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「ねえ、ノトゥス。僕の弟子に何してくれてんのかな?」


そいつはいきなりノトゥスの前に現れた。


「ま、待て待て待て!ヴェイン!その右手にあるものはまずい!」


「ど、こ、が、だい?」


「全部だ!」


ヴェインの右腕にはいくつもの輪が色とりどりに巻きついており、その正体を知るノトゥスからすると恐怖に怯えるしかなかった。


ふう、と息を吐き輪を消したヴェインを見て心の中でため息をつくノトゥス。


「相変わらず人形で動いているのか?」


「まあ、僕はもう長くないからね……身体はもう死んだも同然さ」


「……そうか、だから弟子を取りたいとギルドに出したのか?」


「それもあった。けど一番の理由ではないかな」


「何があった?」


「ファクラくんは僕がたった一回だけ見たある種族にとても似ていた。それをちょうど町で見かけたんだ」


ファクラがこのゲームを始めた初日。ヴェインはファクラを見つけた。


銀髪に赤と青のオッドアイ。ヴェインが求め続けたどり着くことの出来なかった叡智。その原石が何事もないかのようにただ町を歩いていたのだ。


身なりからして冒険者だとわかった。だから裏から手を回してヴェインが仕組んだとわからないように偶然を装ってクエストを頼んだ。完全に動けなくなる前に。


「……そろそろ僕の体は消えてしまう。だから継承するよ?いいね」


「お前のやることに口出せねぇよ。まあ、最後になるか、これが」


「君の伴侶を見ることが出来なかったのは心残りかな」


「俺、300歳いってるからな!もう無理っ!」


「あっははは!」


エルフ族は長寿不老の種族と言われているが不老ではない。個人差はあるが一定の年齢に達すると成長が停止する。100年来の付き合いだが一方的にヴェインがからかってノトゥスが振り回されるままだった。


「じゃあね、親友。弟子を頼んだ」


「……おうよ、糞野郎」


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「ただいま」


「あ、ヴェイン師匠。おかえりです」


師匠が家に帰ってきたので挨拶をするが師匠は急いで奥へ入っていってしまった。まるでなにか焦っているような気がしたが……


「ファクラくん。ちょっといいかい?」


「えあ、はい!」


魔道書に今日追加で覚えた魔法を書き込むのをやめヴェイン師匠に呼ばれた方へ行く。


「見て欲しいものがあるんだ」


「……はい。何でしょうか?」


そう言ってヴェイン師匠は奥の部屋に案内してくれた。奥の部屋はさきほど行ってきたギルドの部屋と似た左右を本棚、中央に机が置かれていた。


ヴェイン師匠は机の方へ歩いていき明かり用の燭台を右へずらし机を左へずらした。すると下に続く階段が現れた。


「うわぁ」


「このまま降りるよ」


先程の燭台にろうそくをつけ火を灯し階段を下っていくヴェイン師匠について行くとそこにはところどころ朽ちた扉があった。


ギィという立付けの悪い音とともに中からひんやりとした空気が頬をなでた。


そこには一人の老人がいた。


「「はじめましてかな、この姿で会うのは」」


しわがれた声とはっきりとした青年の声の二重奏。あぁ、彼こそが


「「人形でいつも喋っていて済まないね。ちょっと待ってくれ」」


そう言って老人が椅子の手すりを指で二度叩くといつも見てきたヴェイン師匠の動きが停止した。


「済まないね……もう体が動かないものだからこうするしかなくてね……」


「ヴェイン師匠……ですよね」


そう言って老人は笑った。その笑い顔はどことなく青年のヴェイン師匠に似ていた。


「あぁ、そういうことだったんですか……」


魔術師であり魔導師の叡智、ヴェイン。書物を読めば必ず出てきた。その絵とヴェイン師匠が一致しないことにどこか違和感を感じてはいたがはっきりとした違和感は最初に感じていた。


体の動きだ。


時々、体が硬直する時があったがそういうことだったんだろう。


「気づいていたかな?」


「いいえ、今やっと違和感がなくなったくらいです」


「あはは……と、世間話はそれくらいにしておくかな」


そう言ってヴェイン師匠は切り出した。





「君に創造魔法を継承したい」



《創造魔導師から継承クエストが発生しました》


《リンクが確立されました。これにより乖離職クエストが開放されました》


《乖離クエストが発生しました。受諾しますか?》



「受けます」


《クエストを受諾しました。これより『魔導師への弟子入り』最終乖離クエスト『創造魔法の継承』難易度;オーバーを開始します》


そうして自分はヴェイン師匠の遺志を継いだ。


ここからやっと自分はスタートラインについたんだとわかった。


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Name:ファクラ


Job:召喚士 Lv.15

種族レベル Lv.30

ステータス

体力値 11

敏捷値 11

器用値 11

筋力値 11

精神値 16

知力値 16


スキルポイント 25


装備

武器1;手頃な刀

武器2;新米魔導師の魔道書→熟練魔道士の指南書

頭;なし

上着;新米魔導師の服→草原狼の革鎧

ズボン;新米魔導師のズボン→草原狼のズボン

靴;新米魔導師の靴→草原狼の靴

アクセサリー1;なし

アクセサリー2;なし

アクセサリー3;なし


スキル

識別 Lv.30

鑑定 Lv.30

召喚魔法 Lv.14+?(継承)

風魔法 Lv.34+?(継承)

土魔法 Lv.32+(継承)

火魔法 Lv.31+(継承)

水魔法 Lv.38+(継承)

光魔法 Lv.31+(継承)

闇魔法 Lv.34+(継承)

創造魔法 Lv.?

錬金術 Lv.29

魔法陣 Lv.30

剣 Lv.40

刀 Lv.32

手業 Lv.33

奇襲 Lv.32

製薬 Lv.31


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|ω・){まさかのヴェイン師匠がここで退場です。作者いわくヴェイン師匠は早めに退場していただく事は決めてた。ここに置くかは迷ったけどこのままだとファクラが旅に出ない気がしたから、とのこと。


|ωΦ*){…………


|ω・){どうかした?


|ωΦ*){いや、何でもないにゃ……


|ω・){なら、いいけどさ。この章でやりたかった事は〝賽の目は転がされた〟って事かな。


|ωΦ*){その賽を振ったのは誰だったのかにゃ……


|ω・){という訳で、第1章『始まりの異変編』終了です!次回から第2章『超級会合と軍団レギオン』を開始します。




※ステータスの訂正を行いました。

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