(イギリスの)クリスマスプディング
クリスマスプディング
それはクリスマスのお菓子の中で、もっとも子供心をくすぐられる
――響きだけなら
きっと、プリン・ア・ラ・モード的なモノをイメージすると思う
大きなプリンに、クリスマスを意識した華やかなトッピングの数々
そう、響きだけなら――
では、現実はどうかと言いますと……
率直に述べるなら、裏切られた気持ちになりました
イギリス料理が不味いというのは最早、世界各国の共通認識
事実、
紅茶やお菓子、
気になるとこではありますが、そのテーマだけで本が一冊は書けるのでここでは割愛させていただきます
では、このお菓子がどういったモノか簡単に説明していきます
まず、形はプディングというだけあって、いわゆるプリン型(
見た目は茶色で、黒糖ケーキやかりんとうを彷彿させるほど暗いです
つまり、問題なのは中身
当たり前かと思いますが、イギリス料理の中には見た目以前に名前からしてアウトなモノが幾つか存在しますので……
主な材料は小麦粉、パン粉、卵、砂糖、洋酒漬けのドライフルーツ(プラムが沢山)、ナッツ、スパイス
そして、牛脂
正確には、腎臓の周りにあるケンネ脂
それら全てを混ぜ合わせ――
(伝統にならうなら、家族全員が1回ずつ時計回りに生地を混ぜ合わせるそうです。反時計回りに混ぜると縁起が悪い)
およそ一晩、生地を寝かせてからプデイング型に詰め込み――
(この際、コインや指輪、指貫・ボタンなどの小物を入れる場合があります。切り分けた時に、入っていたモノで運命を占うお遊び。ちなみにコインはお金、指輪は結婚、指貫・ボタンは一生独身)
数時間ほど、蒸し焼き(オーブンで焼けばイギリス風クリスマスケーキ)
それで完成かと思いきや、冷暗所で1カ月~1年ほど熟成させるそうです(クリスマスプディングを食べたら、すぐに来年のぶんを作る家庭もあるとか)
そして、食べる前に再度温め、ブランデーなどの洋酒をふりかけて
もちろん、部屋を暗くしてから――
そして、青い幻想的な炎が消えると――やっと完成、出来上がり
肝心のお味はと言いますと……不味いそうです
私も本格的なモノは食べたことないのでなんともいえませんが、不味いそうです
原因の一つに、よくケンネ脂(牛脂)があげられるようですが、それは間違いでなく正しいそうです(現在ではバターが使われることが多い)
食感はねっちょりとしており、舌に甘みと脂身だけでなく、ドライフルーツまでが絡まるとか
その味と食感はイギリス人ですら好き嫌いが分かれるようで、とあるアンケート調査では半数以上が嫌いというデータもあったり
それなのに、どうして現代に続くまで食べられているかと申しますと
――それが伝統であり文化の源だからです
全ては、大航海時代から始まりました
プディングの誕生も船の上で、余っていた材料――パン屑、小麦粉、肉の小片、脂身、卵、ナッツ類、――をかき集め、布に包んで蒸し焼きしたのが始まりと言われています
最初は甘くなく、これにチーズなどを振りかけて食べていたとか
それが一般家庭に伝わり、今日に伝わる甘いプディングなど、様々な種類に発展していきました
その中でも、クリスマスに作られるプディングは特別だったはずです
証するように、クリスマスプディングに使われる材料は13種類でなければならないという迷信が残っています
これはイエス・キリストと12人の弟子に因んでいるそうです
※西洋において13は忌み数とされていますが、キリスト教(イエスの処刑日、裏切りのユダが最後の晩餐で13番目の席についたなど)との関連付けは、近代になってからとの説が有力
また、迷信を打ち破るという意味であえて忌み数を使う場合もあります
この頃はちょうど、イギリスにとって栄光の時代
砂糖、フルーツ、ナッツ、お酒、牛脂――そして、香辛料
これらは世界各地の美味なる食材であると同時に、高価で贅沢なモノでした
それら全てをふんだんに使えたのは、イギリスが7つの海を制覇したからこそ――
ゆえに、クリスマスプディングはイギリスにとって栄光の時代の象徴であり、名残りであり、文化の源とも言われています
そういった理由からか、それとも単に味の問題か日本ではあまり売られていないです
たとえ売られていたとしても、クリスマスプディングとは名ばかりのブランデーケーキの場合が多いかな?
偏見かもしれないけど、一般のケーキ屋よりもホテルで売られている気がします
もし見かけたとしたら、購入前にどういった味か聞いといたほうがいいでしょう
間違いなくお酒は使っているでしょうから、小さなお子さんには注意が必要
また、こだわっているお店だと舌に絡まるほどのドライフルーツが入っているので、「シュトレン」や「パネットーネ」よりも更に人を選ぶかと
ただ、火を付けたり、運勢を占ったり――
クリスマスを楽しむぶんには、一番向いているお菓子かも?
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