(ドイツの)シュトレン
ドイツの伝統菓子
曰く、司教ハインリッヒがパン職人のギルド設立を許可したことに対する感謝として、クリスマスの贈り物にシュトレンを2本献上した
とはいえ、今と同じなのは形だけで内容はほとんど違うみたい
(当時の
ちなみに、形は幼児イエス・キリストがおくるみに包まれているのを模しているそうですよ
しかしながら、シュトレンの本場とされているのはザクセン州の州都ドレスデン
最古の記録としては1474年と出遅れていますが、とあるエピソードによってその差を埋めた模様
それは1491年、時のローマ法王イノケンティウス8世から送られた「バター書簡」なるお達しです
節制期間ではバターが使えず、代わりに油を使っていたのですが、これがまぁ不味くて不味くて仕方がない
そんな中、ザクセンの選帝侯がバターの使用許可を願う手紙をだし……
結果、色々な条件はあったようですが許しを得たという史実
この他にも、ドレスデンにはシュトレンに関連する面白いエピソードが沢山あります
16世紀(この頃はまだ、シュトレンの名前が統一されておらず「クリストブロート」「シュトリーツェル」「ワイナハブロート」とも呼ばれていた)
現代では、ドイツ最古のクリスマス市とされている「シュトリーツェル・マルクト」
なのに、
こう書くと穏やかですが、売りにきたジーベンレーンの馬車を暴力はおろか火まで使って追い払っているあたり笑えません
実際、「シュトレン戦争」とまで言われていたとか
しかもその行為を、クリスマス市での独占販売権を与えられるまで続けていたという……
18世紀(既にシュトレンはザクセンの名物となっていた)
100人以上のパン職人によって、重さ1,8トン、長さ7メートル、幅3メートル、高さ30センチもの巨大シュトレンが作られました
命じたのは、「強健王」の異称を持つ選皇帝アウグスト2世
なんでも専用の窯まで作って焼き上げ、8頭立ての馬車で市中を通って運び、長さ1,6メートルのナイフで2万4000個に切り分けて、軍事演習の招待客に振る舞ったとか
とまぁ、ここまで普通に書いていますが……シュトレンの知名度ってどうなんでしょうか?
最近では、
クリスマスのお菓子としては、ビュシュ・ド・ノエルに次ぐ認知度だと思っているのですが――周囲に訊いてみたところ、ほとんど知らないと言われました
というわけで、まず形と見た目から説明していきます
日本で見られるので多いのは「ずんぐり太ったコッペパン」と「緩やかな山形」かな?
表面には、これでもかというくらいに粉砂糖が振られており、さながら雪化粧のよう
事実、化粧のように下地もしっかりしています
焼き上がったら温かい内に、
そのあとも、グラニュー糖やらスパイスシュガーをふりかけ――そうして、最後の仕上げに粉砂糖
次に生地について
分類としてはイーストや酵母を使った発酵菓子になります
簡単に言うと、パン菓子ですね(クグロフ、ババ、サヴァラン……etc.)
その中でも、ふわふわ系ではなくずっしり系の食感
口当たりとしては、パウンドケーキやバターケーキに似ているかも
中には、たっぷりのドライフルーツとナッツ(レーズン、レモンピール、オレンジピール、フィグ、アーモンド、クルミ、ヘーゼルナッツ……etc.)
物によっては、マジパンも入っていたり(アーモンドと砂糖をローラーで潰して、ペースト状にしたもの。日本では食べられる人形や飾りによく用いられる)
また、ドイツでは
ただ、日本で売られているものは量が抑え気味になっている場合が多いです
(もしくは、レモンピールやアニスなどの日本人受けが悪い素材を外している)
どうしても、ドライフルーツやスパイスが苦手な人が多いですからね
ちなみに、ドイツにおけるシュトレンのガイドラインによりますと――
※シュトレンには幾つか種類――産地、ブランド――があり、その名を冠するにはクリアしなければならない項目がある
ドレスデンの「ドレスナーシュトレン」 、バターの多い「バッターシュトレン」、けしの実を使った「モーンシュトレン」……etc.
「クリスマスシュトレン」の場合だと、粉100㎏に対しバターが30㎏以上、ドライフルーツが40㎏以上も入るそうですよ
まさに、圧倒的ドライフルーツ
その上、洋酒に漬け込んだものを使います
更には、大量のスパイス
加えて、上記の品々が入っていないと食べられないのでは?と思うほどの砂糖
……日本にあまり馴染まないのも、仕方ないと思います
お値段も、1本2000~6000円とそう安くないですしね(作り手の視点で見ると安いけど、消費者の目だと高い)
まず、知らなければ買わないでしょう
私も地元にいた頃は買いませんでした
けれども、その味を知ってからは毎年、色々なお店で買っています
味が気に入ったのは勿論のこと、常温で日持ちするのも便利(日持ちしないのもあるので注意)
また、コーヒーや紅茶だけでなく、赤ワインとの相性も抜群
日本酒や緑茶とも合うと聞きます
個人的には、「マリアージュ・フレール」の「エスプリ・ド・ノエル」というフレーバーティーと合わせるのがお気に入り
食べ方は1センチ~1,5センチくらいにスライスしたものを
この時、端からではなく中心から切り分けるのを推奨されています(切断面をくっつけて保存できるため)
シュトレンは出来たてよりも、寝かせて熟成させたほうが美味しいと言われますが、手作りでない限り気にする必要はないでしょう(日本では、寝かせたものを販売していますので)
また、出来たてのほうがバターの風味が新鮮で美味しいとおっしゃっているお店もあります
他にも、最近ではチョコレートや抹茶のシュトレンなるものもあったりと本当に幅広いです
では、最後に購入店について
・グローサリーショップやオンラインショップ
ここでは、輸入物のシュトレンが低価格で売られています
日本のクリスマスケーキが大量生産され、あらゆる場所で売られているようなことがドイツでも当然のように起こっているという訳です(大量生産、薄利多売)
その為、本場だからといって『本物』とは限りません
グローサリーショップで買う場合は大丈夫でしょうが、オンラインショップで買う際はその辺りを注意してください
その商品が専門店で売られるモノなのか、それともスーパーで売られるモノなのか
・パティスリー(ケーキ屋)
こちらは、たいていが限定品となりますので予約をするのがおすすめ
設備の問題で量産できないんですよねぇ(1日50本も売っていないお店が多く、人気店は予約で完売してしまう)
味に関してはお店によりけりですが、フランス的か日本的かで分かれると思います
些か暴論ですが、店員に訊いてみて詳しい説明が頂ければフランス的かと
こういったスパイスやアルコールが含まれるお菓子に関しましては、はっきりおっしゃってくれるはずです――「お口に合わない方もいらっしゃいます」と
・ブーランジェリー(パン屋)
一日の長があると言いますか、こちらでは大量生産できる設備とシステムが出来あがっています
ですので、そうそう売り切れることもなく、予約しないでも安心して購入できるかと(それでも人気店は完売する)
やはり、シュトレンは製パンの分野です
日本人に合うシュトレンを思考錯誤して生み出したのもパン職人です
クリスマスケーキに対抗しようと、頑張ったんです(特に1980年代)
パン業界が長い年月をかけてクリスマス菓子として育てていったのに……
ケーキ屋までシュトレンを販売するようになるなんて、ちょっと酷いですよねぇ
シュトレンは数か月前から準備でき、それがマイナスにならない商品です
保存も運送も、ケーキより断然楽で商品単価も高く――
特別な設備も器具もいらず、日本人向けのレシピも既に確立されている上に包装、形などにオリジナリティも出しやすい
そういった理由もあって、販売が盛んになっていきました
なので、パン屋だから絶対に美味しいとも言えない
それにスパイスの使用量は人によってかなり好みが分かれますので……
(現に、お店によって量から種類まで違う)
とりあえず、毎年、好調に売っているところなら間違いないかな?
クリスマスケーキと違って結局は定番になりきれなかった商品ですから、クリスマスだからという理由だけで売れるようなものではありません
繰り返しますが、決して安くないので――
継続して売れるには、それなりの味と品質が保証されているかと
もっとも、販売数があまりに少ないお店は別です
異常に多いお店も、一度冷凍したものを解凍して売っている可能性があります
じゃぁ、どうすればいいかといいますと……
やっぱり、自分の行動範囲にあるお店で買うのが一番です
ですので、ドライフルーツやナッツ、洋酒が嫌いじゃない方は是非ともシュトレンを買ってみてください
更に付け加えるなら、甘い物が好きでカロリーを気にされない方
なんとなく察している方もいるでしょうが、このお菓子、もの凄く高カロリーです
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます