第3話

7/chapter


夜という事もあり日中よりは熱くはないが、夜特有の蒸し暑さが浅雨兄妹を襲っていた。

「兄さん暑くない?」

凸毬とまりは手ではたはたと、うちわのように煽っていた。

「いや、大丈夫だ。」

「そっか。」

しかし、すすむはそうでもなさそうだった。

白夜はくや研究所まではそう遠くなかったので、そろそろ着く頃合だ。

「……っ!?」

奨が一歩先を歩いていたが何かに気づいたようで、立ち止まった。

「兄さん?」

凸毬は疑問に思った。

「白夜研究所の前に怪しい人影が見える。裏から侵入する。いいな凸毬」

「あっ…はい!」

2人は裏に周り、勝手口のようなものから侵入した。

「ここは、何か物を洗ったりするようなところでしょうか?蛇口なんかもありますし…」

「変な液体なんかでも流してるんじゃないか?」

「えっ…!?も、もう!兄さん!こんな時に変なこと…」

びちゃ

「ひっ…!」

シンクらしきふちに赤紫色のスライムのような液体が垂れ流れていたようだ。

「な、なにこれ…兄さん、ここヤバイかもしれません。」

「ヤバくないと派遣されないだろ…」

奨は、はぁと、ため息をついてやれやれと呆れた。

「ここは特に何もなさそうだな。」

部屋にあった扉を開けると長い廊下が続いていた。

「兄さん…奥にものすんごーっく怪しげな扉があるのですが…」

「そうだな、まるで歓迎しているみたいだ。」

奨が一歩先を歩いて、奥の扉に向かう。

「何か話し声が聞こえますね。」

中からは話し声がうっすらと聞こえていた。

「そうだな。まぁ、邪魔者はいないみたいだ。暗殺も許可が降りているし突入する。いいな?」

「は、はい。」

ゴクリと唾を飲み込む。

奨が扉を合図で勢いよく開けた。

「お話中悪いが邪魔させてもらう!」

中はしんと静まりかえった。

「あなた達を違法行為の為、処分します!」

「おやおや、もう来てしまったのかい?」

コツコツと高いヒールの履いている背丈の高い女性が近寄ってきた。

「ごめんなさい。」

凸毬は吐き捨てるように言った後、その女性の心臓を短剣で一突きした。

「…っ!」

しかし、彼女の胸は固く、あの柔らかい感触は感じられなかった。

「残念でした。私はね人造人間。人間じゃないのそんな武器じゃ簡単には死なない。」

そっと、凸毬の耳に囁く。

凸毬は咄嗟に、後ろに後退した。

「兄さん…っ!」

「俺がやるから凸毬はあの女の子を確保しろ。」

奨の指が指したところには白髪で黒いセーラー服を着た少女がいた。

「はっはい!」

「どうやら、お前達だけのようだな。」

奨は銃口を女性に向ける。

「ええ。もうここには私とこの子しかいないのよ」

「なぜ研究者がお前しかいない」

女性は背もたれのある椅子に深く腰をかけた。

「だって、他の研究者。この子に食べさせたんだもの。」

「!?」

その時2人に衝撃が走った。

食べさせた?人間を?プログラムに?そんなことがあるのか?そう思った。

「ふふっあはははははははははははははははははははははははははははっ!!!!!そうよ!皆!みんな食べさせたの!私が!ワタシが!この子にネェ!!!」

「狂ってる。」

凸毬が呟いた。

「……エェ?」

「あなた狂ってます。と言いました聞こえませんでしたか?」

凸毬は至って冷静のようだ。

「エェ?あなた、何言ってるの?ワタシが?狂ってる?ドコガァ?」

女性は顔面をぐしゃぐしゃにしながら言った。

「はぁ…言っても無駄なら私が教えてあげますっ!」

凸毬は短剣を持ち直し、女性に突進しに行った。

「あはははは!馬鹿な女!こうすれば貴方も私を攻撃できない!」

そう言って女性は奨を人質に取った。

「なっ…!?」

「兄さん!!」

「あははははは!イイわぁ!イイわぁ!楽しくなってきたわぁ!」

凸毬は立ち尽くしてしまった。

俯き、膝から崩れ落ちた。

「私は…またっ…また兄さんを…危険な目に合わせて…救えない。出来損ないの隊員なんだ。兄さんのお荷物なんだ…私のせいで……」

「あらぁ?さっきの威勢はどこに行ったのかしらぁ」

凸毬は動かない。

まるで意識を失ったようだった。

「んふふっじゃあ勝手にさせてもらおうかしら、まずは、そうね。貴方を解剖して実験したいわね。」

「……くっ」

ピクっと凸毬が反応した

「やめて…」

「エェ?」

「やめてって……言ってるんだよお!!」

叫び声が研究室に鳴り響いた。

ビリビリと伝わってきた。

「やっと起きたのねぇあなた。さぁあなたの大好きなお兄さんを取り返してみなさいなぁ」

「はっ……」

凸毬はニヤリと不気味に笑っていた。

「なによ…何か変なこといいましたぁ?私。」

女性は少し混乱した。

この子はなぜ不気味にも笑っているんだろう、自分の兄が人質に取られてそんなにも楽しいのかと。

「やり方がさぁ…生ぬるいんですよ。やり方が。」

「どういぅこと?」

「もっとやるならさ、派手にしてくれないかなぁ?こっちもさあんまり出てこれなくて暇してたんだからさぁ」

まるで別人かのような口調に雰囲気だったが、あれはどう見ても凸毬だ。

何があったのだろうか。

「あなた、面白いコネ…いいわ何処からでもかかってきなさいな、ただし貴方のお兄さんがいるのをお忘れなくゥ」

2人で同時に構え、次の瞬間

「遅いんだっつーの」

「ェ……?」

女性の元には奨は居らず、女性は二つにぱっくりと綺麗に割れていた。

「いっ痛いヨぉぉぉぉぉ!!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっっ!!!!!」

女性は叫び尽くした後、まるで一瞬にして魂を抜かれたかのように、ばたりと倒れた。

どうやら、機会部分は胸あたりだけらしく、腹部辺りは生身だった。

なら、最初のは相手を困惑させる為だっと思うのが妥当であろうか。

「おい、お前ダサいから次からこの子を追い詰めさせるのやめてあげなよ。」

「まて」

「ん?なんだ?別人格だからやらしいことでもしたくなったか?」

ニヤニヤと凸毬のような人物が言う。

「単純に聞く、お前は誰だ」

少しの間、沈黙があったが、耐えきれず凸毬のような人物が吹き出した。

「ぷっ…あはははっ!あんた面白いねぇ私は凸毬だよ?」

「違う。お前は凸毬じゃない。誰だ」

奨は真顔で問い詰める

「まぁさ、こっちも色々あるからさ、今度にしてくれない?そのことは」

「話してくれるというなら構わん」

「んじゃ、この子を頼んだよ。おにーさんっ」

ボソッっと奨に詰め寄り、耳元で囁いた。

次の瞬間凸毬はガクッと倒れたところを、奨が受け止めた。

「……んっ…あれ?兄さん?さ、っ!さっきの女性は!?」

「………お前が気を失ってる間に始末しておいた。」

「そ、そうですか…迷惑…また、かけてしまいした。ごめんなさい。」

凸毬は俯き大粒の涙をぼろぼろとこぼした。

「構わん。だから泣くな。」

「は、はい。」

その時だった、唐突に声をかけられた。

「あの、その安っぽいドラマはいつまで続くです?」

奨は少し慌てるように振り向き言った。

「あぁ、悪い。お前確保させてもらうぞ」

奨が顔を向ける先には黒いセーラー服を着た少女がいた。

「やっと終わったのですね。」

すとんっと、モニターに座っていたいた少女は軽々と降りた。

「さぁ、どうぞ。確保して下さい。」



続く

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