第2話

4/chapter


久しぶりに本部の出勤となった。

凸毱とまりは本部で育ったそうだがすすむは普通に学校に通い普通の男の子として暮らしていた。それは前の話。

今は凸毱と一瞬に、凸毱の為に…

「兄さん本部に来るのは随分久しぶりだね…」

今まで沈黙だったが凸毱が呟いた。

「そうだな。」

奨はあまり本部にてこれといった思い出などはないので、凸毱と違って特に何も感じなかった。

「あのさ、兄さんに伝えたい事があって…」

徐ろに凸毱が口を開く

「なんだよ」

「実はね…私、IPGを辞めたいの」

唐突だった。

奨は唖然とする。

「私。将来の夢があって…それで、ここで働いててもなんの意味もないって気づいたの。」

奨は未だ唖然としている。

「なんだ、そんな事か…」

少し兄さんの声が震えていた。

「あっあの…ごめんなさい。でも、でも…」

凸毱は俯いた。

「わかったよ。俺は凸毱の味方だから応援するよ」

「うん。ありがとう兄さん。任務頑張ろうね」

凸毱が微笑む。

奨は返事をする訳でもなく頷く事もせずそっぽを向いた。

本部に着いた時にはもうお昼時だった。

「あっ来たわね2人共」

司令室に行くと奏恋かれんが椅子に座り待っていた。

「それで奏恋さん今回は何の用だ」

奏恋がコーヒーの入ったコーヒーカップを置く。

「今回は計画を阻止する仕事よ。」

「計画って…何のですか?」

「プロジェクトα《アルファ》…白夜はくや研究所が進行し始めているの。それを2人には阻止してもらいます。」

そう言って奏恋は資料を机の上に出した。

「……」

「どう?報酬は割といいわよ。それに、あなた達じゃないと出来ない。」

「……」

「まぁ、引き受けるかは自由だから任せるけど…」

「引き受けます。」

凸毱が資料を机の上に力強く置く

「そう。じゃあ頼んだわ。」

「はい。行こう兄さん」

そう言って凸毱は強引に手を引っ張った。

「凸毱…なんで引き受けたんだ。いくら何でも急じゃないか?」

「……」

凸毱が奨の手を離す。

「白夜…私の前の名字なの」

「それって…」

奨はゴクリと唾を飲み込む。

「だから、親近感湧いちゃったのかな…勝手なのはわかってる…でも、」

「じゃあ、やるしかないな」

「えっ…?」

「だって、凸毱がしたいんだろ?だったらやるしかないだろ」

「兄さん…っ」

凸毱の目からは涙が溢れでた。

「ごめんね。ありがとうお兄ちゃん。」

奨は凸毱の頭を撫でた。優しく昔みたいに。


5/chapter


"白夜研究所"

かつて人口プログラムAI"α"の開発に成功し、偉大な功績をあげ一躍有名になった研究施設。

そこの室長は"白夜香月はくやかづき"幼くして才能を開花した。

まさに天才少女と言うべきであろうか。

αは日本の希望となり記者にも大々的に取り上げられ、αを大量生産した。

しかし、ある少女がコンピューターのハッキングに成功しαは狂い、人々を襲い。喰らい。日本を衰退にまで追い込もうとした。

その為、αは廃棄処分された。

この事件の後開発者の白夜香月はつかまった。

今白夜香月がどこにいるのか、何をしているのかは、少人数の者しか知らない。

これで事件は解決したと思っていた。

だが、何者かがまたαを復活させようとしているとの情報が流れた。

一体誰が?何のために?

「兄さん準備終わりました」

「じゃあ、任務開始…だな」

2人は本部を後に、白夜研究所に向かった。



6/chapter


今日の天気は快晴。

肌を焦がすように太陽が照りつける。

ここからは、交通手段として1度電車を使って白夜研究所のある街、五月雨市さみだれしに向かう。

その後IPGの手配した車両に乗り白夜研究所まで向かうのだが、雪風新町ゆきかぜしんまちから五月雨市まではかなり距離が、本部からの指示で到着予定時刻は夜の12時だ。

「兄さん…」

凸毱は少し顔色が悪く、ふらついていた。

「どうした?もしかして凸毱体調悪いのか?」

「ううん…違うの…」

「じゃあなんだって…」

その時凸毱のお腹から、可愛らしい音が鳴った。

「……っと…お腹…空きましたよねっ!」

顔を真っ赤に赤面させてあたふたと、慌てて奨の腕をがしっと掴む。

「凸毱…我慢しないで言えよ。」

「…は、はい…」

凸毱は少し照れながらもしゅんと落ち込んだ。

「じゃあ今日は凸毱の好きなものを食べようか」

すると途端に凸毱の顔が明るくなりこちらに目をキラキラさせながら見つめてきた。

「じゃっじゃあ、お蕎麦が食べたいですっ!」

「決まり、だな」

そして2人は近くにあった食堂でそれぞれ昼食をとった。

「ふぅ…お腹いっぱい食べれました」

「そうかよかったよ」

時刻は午後3時だった

「まだ時間があるな。」

奨は腕時計を見ながら呟いた。

「でっでしたら!クレープなるものが食べたいです!」

またも目をキラキラさせながらこちらを見つめてきた。

今日の凸毱はいつになく、少しわがままな様な気がしたがこの方が妹らしいと思ったので、奨は凸毱に付き合って時間が来るまで遊んだ。

そして時刻は午後9時

空は真っ黒な箱の中に入ったような感じだった。

それでも雪風新町は賑やかだった。

「ふぅ…今日は楽しかったな兄さんと久しぶりに遊び倒して」

凸毱は公園のベンチに座りながら空に手を伸ばした。

「そうだな」

「ねぇ知ってる兄さん。星ってね大きくなりすぎると消えちゃうんだ」

凸毱は無表情に呟いた

「だから、兄さんもあんまり大きくなったら星みたいに消えちゃう。だから…気をつけてね」

凸毱は奨の唇をすっとなぞるようにしてきた。

「そうか。気を付けるよ」

「はい。よろしい」

凸毱はにこっと不気味な笑みを浮かべた。

「さーてっ兄さんそろそろ時間だね。行こうか」

「あぁ、そうだな」

そして2人は暗闇にへと姿を消した。



続く

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