αの崩壊

望月 ひかる

第1話

-プロローグ-

「私のお母さんはね、博士なんだよ!」

これが昔の私の口癖だった。

こう言ってみんなによく自慢をしていたのを思い出す。

そしたらみんなが口を揃えて言うんだ。

凸毱とまりちゃんのお母さんはすごいね!」

って……

母は研究者だった。ある実験に置いて偉大な功績をあげたので実力が認められ私は…


捨てられた。



1/chapter


太陽の見えない空。

四方八方に見える大きな壁。

俯いて通勤をするサラリーマン。

ジメジメした空気。

今日も今日とて何も無い平凡な日々を迎えた朝。

いつもは遅起きな兄さんが、珍しく早起きをした。理由は分かっていた

今日は兄さんのお婆さんの命日だった。

「兄さん…」

「どうしたんだ凸毱?」

俯いて歩いていた兄さんが顔を上げこちらへと振り向く。

「あのね兄さん…わたし…」

「?」

今日こそは言わなくちゃ決心したんだ。兄さんに…伝えなきゃ…

「あのねっ!兄さ」

その時だった。

「!?」

「ばく…はつ?」

向かいにあるビルが爆破していたのは。

RRRR…

きた。

兄さんと私はIPGという暗殺や厄介事の始末、解決をするグループに所属する隊員だった。

今のはそこからの電話だ。

『あなた達今どこにいるの!?

雪風新町ゆきかぜしんまちにてオフィスビルが爆破したわた立ちに出動しなさい。』

この人はIPGの総司令官の神祇官奏恋かんなぎかれん

私のお姉さんみたいなものだ。

だから奏恋姉さんと読んでいる。

「奏恋姉さん私達今そのオフィスビルの前にいます。」

『えっ?そうなの?じゃあ助かるわあなた達なら完璧に任務完了できるわね?』

拳を強く握りしめた。

「はい。No.006.浅雨あさあめペア任務開始します。」

すすむ君。頼んだわよ』

「もちろんです。」

兄さんが一歩リードしてビル内に入る。

続いて私も入った。

「ここからは別行動だ。まずは職員等の避難、安全確保いいな」

「はい。わかりました」

兄さんと別れる。

私はビル内の人間を避難、救助、安全確保を素早くし終えた。

一方兄さんは、爆破物のあった場所の確認、犯人の手がかりを探していた。

「これは…っ」

ビルの9階付近で爆破した後があった。

そしてそこには犯人と思わしき男がいた。

「お前そこで何をしている?」

男はゆっくりとこちらに振り返った。

「あゆみ…ぁゅみ…アユミ…アユミ…?」

男は「あゆみ」という名を連呼しながらこちらを見ていた。

「くそっ完全に理性を失っているのか…やむを得ないな。」

「あゆみ…アユミ…」

奨は腰から短い果物ナイフの様なものを取り出し、男の心臓にめがけてナイフを突き刺した。

即死だった。

「こちらNo.1052浅雨奨任務無事遂行そちらは?」

通信端末を使い連絡をする。

「こちらNo.109浅雨凸毱こちらも任務完了しました。」

そして緑色に光る、非常扉を開けビルに剥き出しになっている螺旋階段を使って2人はその場から消え去っていった。


2/chapter


いつもと同じように…今日は任務があったため遅れたのだが、奏恋さんが連絡してくれたようだ。

「じゃあな凸毱。」

返事を待たずに振り返り教室に入った。

「あっ…後でね…兄さん。」

凸毱は奨の真反対に背を向け教室に向かった。

凸毱は優れた才能から個人で授業を受けている。

2人が通う高校。十六夜学園は才能があるものを優先で育たせていく。

中でも凸毱はトップクラスの才能を持っており、記憶力が飛び抜けてよく、勉学、運動共に優秀であった。

それに比べ兄の奨は勉学は平均だったが、運動は優れていたので評判が悪いということは無かった。

しかし凸毱のように何か他に優れた才能があるわけでは無かったので、昔よく父親に比べられた事もあった。

2時限目が始まる時だった。

「おい!浅雨!妹の凸毱さんが倒れたからそうだ。」

「えっ…凸毱大丈夫なんですか?」

「あぁ、今は。だがいつ悪化するか分からんついて行ってやれ。上には俺が言っておく」

「頼んだぜ先生」

急いで教室を後にする。

凸毱は昔から少し体が弱く、何か思い詰めたり不安になると倒れてしまう。

たのむ、間に合ってくれ。

ただ願うだけだった。

保健室に飛び込んだ。

「お兄……ちゃん」

どうやら大丈夫だったようだ。

「心配したぞ凸毱。大丈夫なのか?」

「……?」

少しの間沈黙があり途端に凸毱の顔が真っ赤に赤面した。

「にっににっ、兄さん!?」

「なんだ、元気そうだな」

安堵のため息をつき安心したのか口元が緩くなりつい微笑んでしまった。

「なっなんで…兄さんが?授業があるのではないのですか?」

「先生の許可を得てきたんだよばーか。もう今日は帰れとさ」

兄さんは立ち上がり走ってきたのだろうか、髪を整え始めた。

「そ、そうですか…すいません私が倒れたばっかりに…」

凸毱は俯いて指をいじくる。

「心配すんのは俺じゃなくて自分の体だろ…荷物取ってくる。」

兄さんは早足に保健室を出てった。

「私の体が…もっと強かったら兄さんにも迷惑かけないですむのにな…」

私はもう1度布団を深くかぶり、眠気に襲われ寝てしまった。



3/chapter


今日も今日とて平凡(?)な生活を送る浅雨兄妹であった。

「兄さんそろそろ起きて、休みだからって油断してると生活リズムが狂っちゃうよ?」

兄さんの部屋の扉をノックした

「……」

返事はない。

「もう。寝るの大好きなんだから…」

凸毱は諦めて朝ごはんの支度に1度戻る。

「昨日は迷惑かけたもんね。今日ぐらい寝かせてあげようか」

ふふっと笑みをこぼしながら朝ごはんの支度を再度始めた。

その時

RRRR…

「こんな朝から出勤なんて…IPGも人使い荒いんだから…」

はぁとため息をだして電話にでる

「はい。」

『あっ凸毱?』

奏恋姉さんだった。

「何でしょう?」

『あんた達に重大な任務が任された内容は今は話せない。ということで、本部出勤だ頼んだぞ』

「えっ…あの奏恋」

ブツっ…ツーっツーっ

「兄さん…起こさないと。」

また兄の部屋の扉をノック…ではなく次は強引に入り、揺すって起こす

「兄さん本部出勤よ起きて兄さん」

すこし間があったもののすぐに起きた。

「あ、兄さんあのねさっき奏恋姉さんから電話があって」

「凸毱……」

「えっ…兄さ…んっ」

兄さんの唇が私の唇に触れた。

頭が真っ白になった。

「にっ…んっ…さんっ…あっ」

私も嫌がらず素直にされるがままになってしまっていた。

何分たったのであろうか。

兄さんは昔から寝相が悪く、寝起きは特に悪い。

兄さんは私と接物をし終えると、また寝てしまった。

「……ってそうじゃなくて!兄さん!起きて兄さん!」

再び揺らす次はもっと激しく。

「ん…んだよ凸毱朝から…今日は休みだろ……。」

さっきの事を覚えてないのかケロッとした表情で返事をする。

「違うの兄さん!今日は本部出勤!大事な任務を任されたの!」

ピクッと兄さんが飯能した。

「本部に?」

「そう。急いで準備して兄さん」

そして準備をして2人は本部へと向かった。作りかけの朝食を残して。


続く

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