第7話 奴隷の少女


月が美しく輝く夜、ミラ、リーズ、オレは奴隷販売組織のアジト近くの路地裏にいた


「もうよい、これからは気を付けよ」


ミラは泣きながら土下座するリーズに言った

リーズはそれを真摯に受けとめた

話を聞かずに脅すのはダメだ

いくら主だからといってやっていいことと悪いことがある

ミラのやり方はダメな方だ


「ミラ」


オレはミラの名前を呼び振り返るミラの頬を叩いた

だがミラは叩かれた痛みよりなぜ叩かれたか分からないという顔をしていた

ミラはこちらを数秒みるだけしかしなかった

なぜこんなことをしたか分かって無いようだ


「ミラ、お前が一番辛いことは分かっていると思ったんだがな。」


「辛い?なんのことじゃ?なぜ妾は叩かれた?」


俺たちの話をリーズは口をあけたまま聞いていた


「分からないのか?お前はリーズさんの話を聞かずに配下から外すと脅した

ミラがやったことは人間が魔族を嫌悪していることと変わらん、配下だからって話を聞かないなんて最低だぞ。

お前は最低な主なのか?」


オレは自分の意見を押し付けているだけかもしれない

だがミラが悪いことをしているのは許せなかった

パートナーとして

元人間として

友達として

ミラは自分の悪いことに気付いたのだろう表情はどんどん申し訳ないものとなっていった


「すまなかった、リーズ。妾が悪かった。話を聞いてもらえない辛さは分かっているつもりなんだがな、だがリクトを殺すのはどんなことを言おうと却下じゃ

これからはどんどん意見を言ってくれ

それにリクト。気付かせてくれて、ありがとう」


ミラは正座のままのリーズに頭を下げながら言った

リーズは何が起きたのか理解できずに慌てていた


「そ、そんな。頭を上げてください

それにミラ様の態度は悪いものではありませんでした。あれが普通なのです」


普通なのか!あれが普通なんて最低だな

だがこっちで普通だとしてもあのやり方は好きにはなれない


「よし、これで解決だな。ミラは今後あんな態度はするなよ!リーズさんもそれで構いませんか?」


「え?あ、はい。でもどうして敬語なんですか?」


リーズさんはいつのまにか敬語になっていた

あんなことがあって動揺しているのだろう


「そりゃー歳上だし」


「それならミラ様も歳上ですよね?」


痛い所をつかれた、実際、そうだ

ミラは259歳とか言っていた

最初は痛い子と思っていたがリーズさんを配下にしている時点で年齢は本当なんだろう


「う~ん、まぁーそうなんだがミラは子供にしか思えないし」


そう言うと先程まで黙って聞いていたミラが怒ってオレに何か言ってきた


「そうですか、これからもミラ様に忠義を尽くしたく思います、またミラ様のパートナーであられるリクト様も私の主ということになるので私の忠義を受け取っていただきたく思います」


リーズは立ち上がり頭を深々と下げながら言った


「え?そうなるのか?ミラ」


「うむ、普通はそうじゃな」


ミラはこっちをチラチラと申し訳なさそうに言った

そんなにビクビクしなくてもいいと思うがあの出来事の後ならしょうがないだろう


「えっと普通ではそうかも知れませんがリーズさん自身が嫌なら言ってください」


オレは頭を下げ続けているリーズさんに言った


「そんな、とんでもないです私自身が支えたいと言っているのです。

ミラ様にあんな態度で話せるのはリクト様くらいです。

殺されてもおかしくないようなことまでして私を助けていただいて感動いたしました

ぜひ私の忠義を受け取ってください

名前だってリーズとお呼びください」


リーズは頭を上げずにすらすらと言った

ただミラを叱っただけだがすごい評価だ

リーズの知っているミラはどんな奴だったのだろう


「リーズさん....いやリーズがそれでいいならそれでいいや」


リーズとずっと話していたからかミラが怒っていた

内容は分からないが不機嫌だった


「妾抜きで話を進めるな」


ミラは頬を膨らましそっぽをむいた

どこのアニメのキャラだよ

まぁ可愛いが


「こればっかりはしょーがない

それよりどっかで寝ないか?あいつら意外と強くて疲れた」


魔力を使い過ぎたせいか頭がクラクラする

魔眼を連発し魔法を3発すると魔力切れのようだ

自分の魔力量が分かれば話が早いんだがな


「そうじゃな。今日はあいつらのアジトで寝るとしよう」


「それがよろしいと思います」


アジトはすぐ近くにあった

しょうがないから今日はアジトで寝ることにしよう

アジトに入ると大きな檻があった

檻の中にはまだ人がいた

ほとんどの奴隷は魔族、亜人だった

小柄な女の子がいたり大柄な男がいた

その全員がまともな服を着ていなかった

汚い布を体に巻き付けているだけだった


「ミラ?なぜ、まだ奴隷の奴らがいる?」


ミラはオレの後ろからついてきていた


「こやつらは生まれた時から奴隷じゃから奴隷以外の生き方が分からんのじゃ

ここにいることによって他の奴隷商人が来ると思っているのだろう」


ミラが奴隷の人たちを見ながら言った

その目は哀れみや悲しみという感情がにじみ出ていた


「そ、そうなのか。こいつらどうにかできないか、ミラ?」


ミラは深刻そうな顔になりどうするべきか考えこんだ

リーズは冷静にどうするべきか考え

冷酷に判断し言葉にした


「見捨てるか、ここで殺すのが一番合理的です。

助ける価値も理由もございません」


奴隷たちは何も言わずこちらを見るだけだった

その目はどこか虚ろで感情が欠落していた


「見捨てるのは辛いが放置しよう。その内に新たに主人が見つかるやもしれん」


ミラは顎に手を添え迷いながらも辛い決断をした

表情は少し険しくなっていた

だがそんな決断は認められない

可哀想だ


「ミラはいろいろなことを知って判断してるだろうが、そんな悲しい判断はオレが認めない。

こいつらはオレが救う

オレがお前らの主になってやる。きたいやつだけこい」


奴隷の1人が手を上げてくれた

小さな狐耳の女の子だった。

男と違い自分で自分を守れないからついてきてくれるのだろう

獣人の少女は見た目の年齢には似合わない大きな胸をしていた

キツネの耳が頭部にあった作り物では表すことのできないようなキレイな耳だった

身長はミラよりも少し大きかった


「それは無理ですリクト様、経済面の方は?食料の方は?守るって言ったってあなたはまだ弱いではないですか!どうするのですか?」


リーズはオレの欠点をすらすらと言った

オレは奴隷の獣耳少女の前に立ち

背中を向け両手を広げながら立った


「確かにそうだがこいつらは幸せになる権利がある」


奴隷の獣耳少女は黙ってどうなるか見ていた


「奴隷にそんな権利はありません

諦めてくださいリクト様」


リーズは冷静に冷酷な判断を言うだけだった

ミラはただどうなるか見ているだけだった


「ないならオレがやる!!!

お前はオレが幸せにしてやる。

これは決定事項だ!」


「何を言おうが無駄なのですね。

私のやり方で救おうと思ったのですが

ミラ様はどう思いますか?」


リーズはミラを見て質問した

もしミラが反対すればどうなるのだろう



「ん?妾は構わんぞ。リクトは妾が守る

リクトはそこの小娘を守ればいいだけじゃ。だが1つだけ条件がある」


ミラは平然と言った

心配していたが一応賛成のようだ

だが条件とはなんだろう?


「なんだ?条件って?」


冷や汗が出てきた

生唾を飲み覚悟を決めた


「簡単なことじゃ、性行為は絶対にダメじゃ」


ミラは腕を組み平然と言った

狼狽えたのはオレの方だった


「なっ!!!するわけないだろう!」


奴隷の獣耳少女が突然口を開いた


「せいこうい、とは何ですか?」


こちらを見る目は分からないことを確認しようとする目だった

だが奴隷の少女はキレイな顔立ちをしていた

食べ物も全然食べてなくて痩せ干そっていたが儚げで可愛かった

成長したら注目の的になりそうだ



「き、気にするな、名前はなんて言う?」


適当な話題を振り誤魔化した

奴隷の獣耳少女は困った表情になりうつ向いてしまった


「どうした?」


「なまえ?ないと思います。いつも

オイとかオマエとかでした」


獣人の少女は少しだけ首をかしげながら言った

その表情は不安に満ちていた


「名前がないのか。名前は後で付けるとして。そっちの男は来ないのか?」


人間の大男はゆっくりとこちらを向き睨んできた


「誰が魔物の奴隷になるか。死んでも御免だぜ」 


低い声で威嚇してきた

衰弱していても魔族を嫌悪していた


「そうか、ならばここで死ね」


リーズは剣に握って男の首を落とすべく素早く後ろに回り込んでいた


「ま、まてリーズ殺すな」


オレは焦って声を出した

もしオレが声を出さなかったら即座に奴隷の大男は死んでいただろう


「何故です?リクト様。この下等生物はミラ様やリクト様を侮辱したのです。死んで当然です」


リーズの目は瞳孔が開いていた

その目にゾッとしたが殺すのはダメだ


「殺したってなんの解決にもならん、やめよ」


「畏まりましたミラ様」


リーズは即座に剣を納めミラに膝まずいた。

俺だと反論したのにミラは即効かよ


「今日はもう寝るぞ、リクト、リーズ

妾はもう眠い」


さっきから喋る回数が少なかったのは眠たかったからか

ミラは目を眠たそうに擦りながらあくびをしていた


「そうだな。寝るとするか」


「明日に備えて早めに休息を取りましょう」


ミラはその場に横になり眠りについた

子供は寝付くのか早いな

奴隷の大男はゆっくりと立ち上がりアジトから出て闇の中に消えた


「お前はどうする?」


奴隷の少女はキョロキョロと回りを見渡しその場に寝た


「私はここでいいです」


「わかった。オレも寝る何かあったら教えてくれ」


オレは奴隷の少女の頭を撫でた

柔らかい毛質だった、ずっと触っていたいと思えるほどいいさわり心地だった


「ん、、えへへ」


少女は頭を気持ち良さそうに撫でられていた

名残惜しが少女の頭から手を離し壁際に移動した

その場で横になり目を閉じた

数分もしない内に眠りについた

ミラのことを子供と言ったがすぐに寝てしまった


 ................................................................


「リクト。起きろ、起きぬか」


ミラがオレの肩を揺さぶりながら言っていた


「な、なんだ?敵か?」


ジュラザの森で過ごして敵感知は鋭くなってるはずだ

何かあればすぐに起きられるようになっている


「違う!これはなんじゃ説明するのじゃ」


ミラはオレを指差しながら言った

指が差す方向には奴隷の少女がオレに抱きつきながら眠いっていた

大きな胸がオレに当たっていた

その事に戸惑いつつも状況を理解しようとした


「オレはしらない、この子が勝手に」


「ん?あ、おはようごさいます

昨日は初めてだったけど気持ち良かったです。」


奴隷の少女はにっこり笑って言った

ミラの表情は段々と険しくなり

怒りで小さな肩は震えていた


「い、いや、何もしてないから。いやマジで

誤解だってばホントに」


「信じられるわけがなかろうがぁー」

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最弱?最強?ヴァンパイア成り上がりハーレム リア獣 @takumi0423

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