第4話 神対応 兼 悪魔対応

蹲る奴を見下ろしたままオレは語った。


「『世の中で気に入らねぇ事があるなら国会で!皆で言おうぜ!国に税金払ってるんだから!魂まで売ることはねぇ!』この言葉はオレの先輩の受け売りだ。オレは大学生で皆で集まって活動する『クレーマークレーマーズ』のメンバーだ!文句があれば口で言う!そういう活動だ!だが、お前は暴力で俺達や他の人を傷つけ...!俺の大事な!幼馴染を奪った!!俺のクレームは!『お前の出店の省だ!今すぐミナツキを返せ!』と『お前がミナツキを奪ったことを後悔させてやる』だ!」


奴に言ってやった。


未だに膝はガクガク笑っているし。


立ち眩みが酷い。


異臭が鼻をつく。


拳が甲高く痛みを伝えてくる。


それに...。


アスファルトに転がっていたミナツキが。


嫌でも俺に現実を物語ってくる。


声がした。


笑い声だ。


暖かな風に乗ってそれはやって来る。


欲しかった玩具を手に入れて、こみ上げてくる子供のような笑い声でいつまでも笑っていた。


「デュアハハハ!機転の良さと私でも気付かなかった己の...ハハハ!弱点...見事、お見事!ハハハハっ!!ますます気に入りましたよ!だから...」


店長兼魔王は語る。


その言葉を聞いたオレは耳を疑った。


ありえない。


できないはずだ。


「よって...?ありがとうございます」


奴は何事もなかったかのように立ち上がると、片手を掲げ唱える。


「『リターン・デス』お戻りなさい」


オレはから目を離せなくなった。


ミナツキを中心に流れ出ていた真っ赤な血が、蠢き。


産声のような水音を響かせて、波打った。


血の一部が変化を見せて骨を生み出し始めた。


頭部を繋ぐ頚椎、鎖骨、胸骨と続き人体が形どられていく。


「──ただ、現在。私、レベル10の魔王対応しておりまして」


不穏な風がした。


「──レベルMAXならともかく、レベル10だと、はできかねます。もっとも私、『魔王』という肩書き上、と言ったほうが適当かもしれませんがねデュフフフ!簡単に言うと、レベルが足りなくて蘇生は失敗します。なぜなら首から下は骨だけで生きれる人間なんていないと思いませんか?」


目の前が真っ暗になる。


体の震えが、地震ではないかというぐらいに酷くなる。


言わねば。


クレームを。


例え無理難題だとしても。


このクレームだけは。


「そ、そんなの聞いてねぇ!?お前約束しただろ!サービスに不備なんか認めれれるかよ!?今からレベルMAXで頑張れよ!!」


「えぇ、そうでしょう、そうでしょう勇者様のクレームはごもっとも。ですが無理なものは無理でございます。願いは硬貨一枚につき一個。願いが『レベルMAXでミナツキを生き返らせろ』または『完全な状態でミナツキを生き返らせろ』と言った具合に...誰がどう聞こうとも言い逃れのできないクレームでなければ神対応兼悪魔対応はできかねます」


きっぱりとした口調だった。


感情のない事務的だった。


奴は90°のお辞儀をしていた。


そんな姿が自分と重なって見え吐き気が強くなるばかりだった。


俺の務める店では基本、返品も交換も受け入れる。


当たり前だが、商品に不備があれば問答無用で返金交換は受け付ける。


だが、商品に不備がなく、かつレシートがなかった場合。


オレは奴と近い対応をするだろう。


「で・す・が、今回は特別!特別サービス大出血!誠に遺憾ながらで勉強させて頂きます!貴方の人としての人生を対価としまして、願いを成就させてご覧にいれましょう!」


俺の務める店で、残念な結果となった場合、救済措置として「おみくじ」がある。


おみくじは店長または店員の裁量で利用でき、くじには商品名が記入されていて、その商品をタダでもらえるというシステムだった。


「いいぜ!俺の命くれてやる!だからミナツキを生き返らせろ!」


「デュフフフ、50点ですね。ゆえに半神対応させて頂きます」


「半神だと?」


「生と死の狭間を生きる存在はなんだと思いますか?」









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クレーマー×クレーマーズ 絶望&織田 @hayase

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