第44話 ジョブカフェで就活相談

結婚して初めて、一日口を聞かなかった。おしゃべりなはずの私が、口を閉ざした効果は絶大。夫が、私の意見に耳を傾けようとしていた。


夫は、大学でサークルにも所属していない。ゼミには、先輩も居るけどあまり話したことがないらしい。少しでも就活の雰囲気をイメージして欲しいと思い、若者向けハローワーク『ジョブカフェ』に足を運んでみるよう促した。15歳から35歳程度までと、対象年齢もハローワークより絞られているのも大きな魅力だ。


PCが普及している現代、当たり前のように「リクナビやマイナビに登録しておくように!」と大学が声を大にして言っていることにも疑問があった。


誰でも見られる求人には、その分人が集まりすぎる。採用人数には、もちろん限りがある。ゆえに、不採用の通知が積み重なっていく。そうなると、自然に就活生は自分を低く見積もってしまう。その負のスパイラルに、夫が組み込まれて欲しくない。母親のような思いで、夫を見ていた。


『ジョブカフェ』がどんなところかはわからないが、人と違う情報を得ることが何よりも大切。そのことは、確かだ。


ジョブカフェ初日は、施設の利用方法の確認や簡単な診断・アンケートのようなものを登録することから始まる。本格的な利用は、大学4年生から(就活時期が変動により現在は不明)と言われたようで、この日は一対一での面談だけして貰えることになった。


一番聞きたかったのは、学生結婚で子持ちだということが新卒採用で不利になるかということだ。担当者は、「結婚していることは、問題ない。面接で何か聞かれた時に、メリットになるよう体験談を話せることが大切だと思う。子どもがいれば、やる気が出ることを理解してくれる採用担当もいるだろう。」

学生結婚で、就職が決まった人も過去にいたという話を聞くだけでもなぜか安心感が得られた。


他にも、SNSを利用した就活、通称ソー活などの手法も教えてもらったそうだ。そして、何よりこの日言われたことで心に残ったのは「受ける企業を絞らないで。」

という言葉だそうだ。


一日で何かが大きく変わるということはないけれど、他人の助言ほど素直に耳を傾けられる。平均30社受けて内定が1社という現実にも目を向けられたようだ。それだけで、価値があったと思う。


私は、また就活についての口出しを慎むことにした。その代わりに、就活関連の新聞の記事をスクラップしたノートを手渡すという選択をした。外野の無駄な助言が、本人を追い詰めることを育児の中で日々痛いほど痛感していた。それだけは、避けたかった。



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