第9話 念願の婚姻届提出
すべてが、私次第だったと思う。いつ婚姻届を出すかも、彼の大学のスケジュールを見て、私が決めた。春に子どもが生まれる頃、彼は大学3年生になる。単位を落とし続けていた、大学2年生の前期を挽回すべく、後期は奔走しているようだ。休ませる訳には行かないので、平日、役所が空いてる日は避けることにした。
彼は、5月生まれなので20歳を越えていたが、私は、12月の誕生日まであとひと月。20歳になるのを待って、結婚という話も親たちからは出ていたが、母子手帳が旧姓のまま鉛筆で書かれた状態だと何かと不都合があった。
子育てについて予習するためのかつての母親学級は、両親学級と名称を変え、父親たちの育児協力を推進しているようだ。イクメン効果は、大きな光と共に、母子家庭家族に大きな影を落としていることに私は気づいた。若い私に、夫が居ないと気づくと、「やっていけるの?」なんて、不用意な発言をするおせっかいなおばさんも居た。私は、夫という味方が早く欲しかった。
11月3日、文化の日に私たちは地元の市役所の薄暗い地下の警備員室で、無事婚姻届を出した。私に、この日いい思い出はない。なんとなく、あの薄暗さがマイナスからのスタートをイメージさせた。
私が、相変わらずつわりだったこと、義母になった彼のお母さんの攻撃的な発言から立ち直っていなかったこともあり、会食などは一切しなかった。私の父などは、酷いもので、「俺の結婚じゃないし、どうせ飲み食いしないなら、文化の日は無料で公立の美術館には入れるから出掛けるわ。」と出掛けて行った。
祝福されない結婚。このまま、子どもが生まれても、きっとかわいがってもらえない。私は、未来を想像して、沈み込んだ。
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