第10話 友達の反応
できちゃった婚だと、結婚の話しも進めなければならないので、自然と家族へは妊娠報告は早めにすることになる。では、友達は?そう。これは、割りと大きな問題だった。心臓の痛みなんか、出てきたら尚更、先が見えず心配になった。おなかの子に何かあったら…
頻繁に連絡を取り合っていた。9月までは。そんな、私から急に連絡が無くなれば、心配してくれる友達たちがいることを私は嬉しく思う。パニック障害のせいで、大学を辞めた私から連絡が無ければ、精神的に落ち込んでいると勘違いしてもおかしくない。状況が状況とはいえ、悪いことをしていたと思う。
私は、「まだ周囲には言わないでね!」と言って、とりあえず頻繁に連絡を取り合っていた4人+1人にメールした。「まだ、体調にムラがあるからメールでごめんね。」と添えて。
1人目は、夫婦共通の友人だったので、「ただただよかったね。」と喜んでくれた。「旦那とケンカしたら、私が怒ってあげるからいいな。」と言う、普段通りの男勝りな発言に励まされた。彼女とは、幼稚園のクラスも一緒。中学でまた再会し、彼氏よりその子と付き合いたいくらいだとかつての私は言っていた。学校からも、二人乗りで、送ってくれた。私より、家が手前なのに。
2人目は、妊娠を告げた5人のうちの唯一の男。「いつわかったの?もっと、早く言ってくれたらよかったのに。」と率直に言う。そういうので、「これでも、まだ言ってない人たくさんいるよ。成人式にはわかっちゃうだろうけど、言わないでね。」と顔が広い彼には釘を刺した。そして、彼からも忘れられない言葉を貰った。「離婚は、許さない。苦労するのは、子どもなんだ。」彼が、親の離婚に振り回されたからこその言葉。胸に突き刺さる。
3人目は、妊娠発覚直前に回転寿司に一緒に行ったこれまた中学の同級生。なぜか、寿司に当たったのかというくらい酢飯の香りで気分が悪くなったのはつわりせいだったのだと伝えた。
「つきあってたのは、知ってるけどまさか結婚するなんてね。」私の恋愛遍歴を唯一網羅する彼女からの驚きの声。「でも、やっぱり恋愛と結婚は違うよね。」すべて、自分のことに置き換えてみるあたりが彼女らしい。「子育てとか、結婚生活のこととかいろいろ教えてね。私は、大学とか仕事の話とかするから。」環境が違うと、友達じゃなくなるというけれど、それは当人同士の問題。お互いに興味を持てれば、いつまでも友達でいられる。普段言葉少なな彼女にしては、ストレートな言葉をくれたことが嬉しかった。
4人目は、いつも一緒に帰っていた高校の同級生。「幸せそうで、よかったね。とりあえず、会いに行くね。」と、外出がままならない私のために、すかさず会いに来てくれた。「元気になってよかった。」お母さんのように、そう言ってくれた。私は、ちょうど夫と付き合い始める直前に、彼女から元カレの起こした驚くべき事件について聞いた。そして、私はサイゼリヤで卒倒してしまったのだ。彼女は、救急車を呼び、付き添ってくれた。ずっと、引っかかっていたことだろう。
そして、+1人が彼女。5人目は、秘密を共有していた友人。彼女とは、結局高校卒業後、個人的に会うことはなかった。だから、言わないという選択もあった。でも、伝えておきたかった。彼女は、やっぱり「よかったね。よかったね。」と言った。私の長い恋の秘密の片棒を担いでくれていた彼女は、自分のことのように喜んでくれた。彼女は、私のサポートばかりしてくれていた。恋の秘密を守り、無理に入った特進クラスでの授業について行けるようノートを貸してくれた。好きな音楽や本を紹介してくれた。こんなによくしてもらったのに、私は未だに彼女に何も出来ていない。
私には、夢のようなプロポーズも、華やかな結婚式もなかったけれど、友達からの素敵な言葉があった。決して、友達が多いわけじゃないけど、なんでも話せる深い友達がいることが何よりの誇りだ。風当たりが強い中、やはり友達たちは味方でいてくれた。それだけで、強くなれた。
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