第2話はじめての産婦人科
熱帯魚がゆらゆらと優雅に泳ぐ、清潔感のある産婦人科だった。急に、かかったにもかかわらず、ほとんど待つこともなく、診察室に通された。
「検査薬使った?じゃあ、ほぼ確定だな。これ取ってきて。」
ぶっきらぼうな先生だった。尿を取るとすぐに、診察台に載せられた。
「じゃあ、診ていくから。」
産婦人科は、はじめてで物々しい電動の診察台に力が入る。カーテン越しで、先生の動きは予測不能。そして、ふいに太い棒のような何かが無理無理入ってきた。
あぁ、私は人間として扱われていない…と悲しくなった。
「この大きさだと、妊娠2か月だね。生むの生まないの?」
「彼が、来ているのでエコー見せたいんですけど。」
「結婚してないんでしょ。プライバシーがね。」
目の前が、どんどん歪んでいく。若いってだけで、中絶すると思うのだ。結婚だってどうなるのかわからないと思うのだ。その事実に、傷ついた。
「予定日は、4月10日かな。あぁ、心臓病とパニック障害があるんだ。じゃあ、うちは無理だから、他当たって。」
「他って?」
「市立病院とかいろいろあるでしょ。尿検査とエコー検査で、妊娠確認したこと伝えればいいから。」
この一言を境に、その先生が私の方を気にかけることはなかった。私は、心臓病で発作を起こしたことはない。ただ、小学校の入学検診で引っかかっただけで、生活に支障はない。ただ、面倒にはつきあいたくないとわかりやすく突き放されたことに戸惑った。この先に、更なる困難や好奇の視線に悩まされることも知らずに。
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