書いて通りに作業するだけの簡単なお仕事

トモ:で、どんな仕事だったの?

エミ:モニターみたいな?製品を試すヤツ。てすた?とか言ってた。

トモ:何で死ぬとか殺すになるの?

エミ:わかんないわよ。フロアの向こうでそんな話をしてるんだもん。

エミ:ただ、紙に書いてある通りにすればいいって。お仕事自体は簡単で、楽勝だった。



 廊下を少し歩くいて案内された部屋は、長机と椅子が置いてある部屋だった。そこでは、実際に作業をする前にエリのスキルと仕事の内容を説明された。パソコンの操作は得意かと確認されたので、あまり使ったことがないと正直に話すと、それで構わないとのことだった。

 エリの苦手なパソコンは使わなくても済むらしい。ただ、使えないと分かった時の落胆の色がにじみ出ていたのは、気のせいではないはずだ。今まで使えなくて構わないと考えていたエリだったが、就職するまでにパソコン教室に通うか、詳しい人に教わっても良いのかなと考え直した。

 仕事の説明が終わると、別の部屋に通された。男性が首から下げているカードをかざして入ると、今度は人が沢山いる、広い部屋だった。ただ、エリが通されたのはパーティションに区切られた、こじんまりとしたスペースだ。視界には誰も映らず、壁の向こう側から人の会話が聞こえてくるだけだ。明らかに隔離されていた。


「はい、これ渡しておくね。」

 そこにはA4の紙の束と、その上にカードの入ったネックストラップとスマホが1台置いてあった。スマホはどうやら最新の機種みたいだ。ネックストラップに入っているカードにはGUESTの文字が印字されている。紙の束には絵と細かい文字がびっしりと表の中に書き込まれていた。

「さっき簡単に説明したけど、このスマホ上でアプリが動くかのテストをしてもらうよ。やりかたはこのチェックリストの通り。紙見るだけで全部できるようになってるから。もし何かわからないことがあったら遠慮なく聞いて。」

 さらっと説明を終えると、男性はフロアの奥のほうへさっさと引っ込んでしまった。


 そのまま突っ立っててもしょうがないので、椅子に座る。目の前にあるスマホをいじると、アイコンが一つだけ表示された。どうやらこのアプリを動かして、紙に書いてある通りに試せば良いらしい。紙には絵付きでどのように動かせばよいか、その結果がどうなるのかが書いてあり、作業に困ることはなさそうだった。

「さて、やるか。」

 ぼうっとしてても始まらない。エミは派遣で、仕事にきているのだ。紙に書いてある通りに、アプリを動かし、その結果を紙に書いていく。何か分からなければ人に聞けばいい。ただそれだけだ。これなら問題なく仕事をこなしていけそうだ。楽勝、楽勝!


 エミは机の上にある作業の内容を読みながら、渡されたスマホを片手に作業を始めた。

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