第55話 蒸気都市ドゥーエ⑩
ルナが不満そうなジト眼でルージュの側に寄ってくる。
「まあ、そうだけど」
「師匠みたいな人だっけ?」
「そうよ」
「ふ~ん」
ルナがルージュの肩に手を置いて強引に押し倒してくる。
「いいよな、相棒は。そう言うのがあって」
「そう言うのって?」
「……私には昔の人なんかいないよ」
ルージュの胸にルナがうずくまってくる。
「妬いてるの? らしくもない」
「だって……私との思いでなんて相棒の中ではほんのちょっとじゃん」
「だったら、これから一緒に作っていけばいいじゃない。私達の思いでを」
「本当に?」
「もちろん」
「むふふ♡」
ルナは怪しい笑いをすると、ベッドから立ち上がった。
そして自分のパジャマを脱いだかと思えば、ルージュのパジャマもさっと脱がせてくる。
お互いに下着だけの姿になった。
ルージュは赤いレースの下着で、ルナは白いレースの下着だった。ちなみにルナの希望によりヒモパンである。
色以外のデザインは同じものだった。
ルナはその格好でいそいそとトランクに向かって中を漁る。
「列車じゃ試せなかったから――」
ルナは一つのものを見せてきた。
「これ付けて今夜はしよ?」
「えっ……」
ルナの手に握られていたもの。
それは猫耳カチューシャとパールの付いた猫の尻尾だった。それにローションまである。
ルージュは嫌な予感がした。
「で、でも……」
「いいじゃん、私との思いで作ってくれるんでしょ?」
不安そうな顔でルナを見ると、ルージュも安易に否定はし難かった。
「そうね……た、たまにはいいかもね」
ルージュは震える手で猫耳を受け取る。
「付けて付けて!」
楽しそうにルナが催促をしてくる。
――ね、猫耳……。こんなものを私が……でもルナが。
付けるのは恥ずかしかった。
しかしルナをこれ以上、悲しませるのは忍びない。
「くっ!」
震える手で、猫耳カチューシャを頭に装着する。
「可愛いよ、相棒。表情が屈辱的って感じ以外は最高だよ。ニャーって言ってよ。手をこうやって」
ルナが両手をグーにして、猫のような手招きポーズを見せてくる。
つまりあれをやれと言うことなのだ。
「ぐふっ……」
さすがに恥ずかしいにもほどがある。
「わ、私はノワールの戦士よ!」
「駄目?」
上目遣いで寂しげにルナはそう返してくる。
ルージュもカノンのことを下手に口走ってしまった手前、無碍にはできない。
「いや、いいわよ。や、やるわよ。それくらいできるに決まってる……でしょ」
ここまで来たらやるしかない。
顔をひきつらせながら手を猫の形にする。
「ニ……ニ……」
顔面の筋肉を操作して無理矢理笑顔を作る。
「ニ”ャァァ……」
「あんまり可愛くない」
「ちょ、ちょっとせっかくやったのよ!?」
「顔が強ばっててね」
「恥ずかしいんだもん!」
「まあいいや。恥ずかしがってる相棒も好きだし」
ルナは猫の尻尾とローションのボトルをベッドの隅に投げて置く。さらにトランクを漁って、猫耳カチューシャをもう一つ取り出した。
それを自分の頭に付ける。
「どう? ニャンニャン♪」
「か、可愛いじゃないのよ」
ルナの猫耳はルージュの想像以上に似合っていた。明るい性格が相まって、愛らしさが増しているのだ。
ルナがベッドに上がってくる。
膝で立っていたルージュに目線を合わせてきた。
「これで初めて一つだね」
ルナがルージュにキスをしてくる。
ルージュも拒まず、ソフトなキスを受け入れた。
そしてルナがルージュのブラのホックを外す。ルージュもまたそれに習ってルナのそれを外した。
ルナがルージュを押すように抱いてくる。ルージュはその流れに乗って、ベッドに横たわった。
ルナはルージュのパンツの紐を解いて脱がせ、そして自分のも脱ぎ捨てる。
ルージュには一つ気掛かりなことがあった。
「ねえ、やっぱり一回シャワーを浴びてからに」
「や~だ」
ルナはそう言ってルージュの腋を舐めてくる。
「だって汗が」
「それがいいんじゃん」
ルナは腋を執拗に舐めてくる。
ルージュの脳内に淫らなスイッチが入ってくる。ルナの行為一つ一つが、ルージュの胸を昂らせた。
「ん……」
そして首にキスをしてくる。
ルナの唇がルージュの胸に向かった。
そして丁寧に乳房をマッサージしてくる。それをしながら、ルナの舌が胸の突起物を舐めてくる。
ザラザラと舌の温かい感触が敏感な胸からやってきた。
同時に性感帯を刺激され、感じてしまう。
乳房の先端を指や舌でイジられるほど、頭に快楽物質が上ってくるようだった。
ぴくぴくと腰も震えてしまう。
それに耐えるようにルージュは唇をぎゅっと引き締めた。
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