第24話 バオム教⑫
自宅に戻ると、ドアの前に段ボール箱が一つ置いてあった。
「ああこれ私の荷物だ」
ルナがその箱を持ち上げた。
ルージュは謎の箱を訝しげに見る。
「何なのそれ?」
「後でのお楽しみだ」
「ふぅん」
ルージュは特に深く追求もしなかった。その時ばかりは精神的に疲弊しており面倒だったのだ。
ドアを開けて部屋に入る。
レザージャケットとホルスターを乱雑に脱ぐ。ホルスターはその辺に置いて、ジャケットは洗面所の洗浄機にぶち込んだ。
髪を結んでいたゴムを外し、ブーツを脱ぐとベッドに飛び込む。
そのまま寝る体制に入っていた。
「相棒、シャワー浴びないの?」
「明日でいい」
そんな気分だった。
ルナがベッドの側に座る。
「あの子、どうなんのかな?」
「……教団が保護するでしょ。あそこ、変に金回りだけはいいのよね」
謎の出資者でもいるのだろうか。そう思えるくらいには資金に余裕のある団体だった。
「大丈夫かね、あの教会」
「アンタがどうにかできる問題でもないでしょ」
「またカタストルが出たらどうなんの?」
「次のノワールが対処するだけ」
「そうだろうけどな。でもあんな扱い受けてやる気なくさないの?」
「キッチリこなすから安心しなさい。ノワールは別に褒められたくてやってるわけじゃないわよ。そんな気持ちで命をかけてられないわ」
戦う理由は人それぞれだが、褒められるようなことはほぼない。
闇に生きて闇に死ぬのがノワールの宿命なのだ。
「じゃあ、相棒は何で戦ってるの?」
「……アンタに教える義理はないわ」
ルージュはルナに背を向けて、素っ気なく答える。
「そっか……」
ルナは切なげにそう返してくるだけだった。
*
しばらくするとガサゴソと何かを漁る音が聞こえてきた。
「ねえねえ見てみて」
ルナが嬉しそうに話しかけてくる。
「何よ?」
ルージュが声の方を振り向く。
ルナが笑顔で青いネグリジェを持っていた。
「これ相棒の奴、サイファーさんに頼んだら買ってくれた」
「サイファーが? これもアイツの趣味なの?」
「うん。いつもその格好寝苦しいって思ってたんだよね」
どうやらルージュのライダースーツのことを言っているのだろう。慣れれば問題はないのに。
ルナがさらに箱を漁る。まだ何か入っているようだった。
それを取り出して見せてきた。
「それともう一つ、こっちは私が選んで買って貰った方」
「ぶほぉっ!」
ルージュはショックで鼻水が出そうになった。
「な、な、な、何よそれ!?」
「ベビードール。その中でもとびっきりエロいの買ってきた」
「ス、ス、スケスケじゃない!」
ほぼ下着だけと言っても過言ではなかった。シースルーの透けた布地がわずかに被さっているだけだった。
さらに下着の方にも問題があった。そちらは上も下も本来隠すべき大切な布がことごとく欠けていた。
これでは大事なものが丸見えである。
「こっちは相棒のは青、私の分のピンクも買ってあるから。お揃いだね♡」
「お揃いだね、じゃないわよ! そっちは明らかに実用性に欠けるでしょ。さっきのはともかく、そんなの着て寝られるか! だいたいそのパンツ……か、隠せてないじゃない」
「何が隠せてないんだい?」
「わ、わかるでしょ」
ルナが悪戯っぽい笑みを浮かべて顔を近づけてくる。
目と鼻の先にルナの顔があった。
「今夜は随分と力を使ったみたいじゃない。これ着てくれたら、嬉しいな?」
「べ、別にそこまでは」
「明日またサイファーさんから依頼あったらヤバいんじゃない?」
ルナの手がルージュの頬に触れてくる。
「それに今日は考え込んじゃうでしょ。それを少しでも紛らわせてあげたいなって思って。結構キツかったでしょ、いろいろとさ」
「余計な、お世話よ……」
「ダメ?」
ルナが上目遣いでおねだりしてくる。
ルージュは「むむむ」と唸ると、目をそらしてしまう。
「……じゃあ、シャワー浴びてくる」
「え、何で?」
「着替えて……あげなくもないわ」
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