大きな木の下で

パンダコッタ

第1話

 ある学校の校舎裏にある大きな木。

 長い年月をそこで過ごしてきた大きな木は、学校の生徒達を静かに見守ってきた。

 この学校にはこの木にまつわる一つの伝説がある。

 この木の下で想い人に告白すると必ず成功するという。


〜由香里さんの場合〜


 ある日の放課後、校舎裏の大きな木の下で由香里さんは同じクラスの山本君を待っていた。

 友達に頼んで、校舎裏の木の下にきてくれるよう頼んだ手紙を山本君に渡してもらっていたのだ。

 はたしてそれを読んでくれるか、読んでくれたとしてもここへ来てくれるか。

 由香里は急に不安になった。胸に手を当てて深呼吸。しかしまだ落ち着かない。

 いてもたってもいられない由香里は、ふと友達の言葉を思い出した。


「不安になったり、落ち着かなくなったらこのかばんを開けてみて」


 手紙を頼んだ時に持たされたかばん。由香里は開けて中のものを取り出してみた。

 ずっしりとした重量が心地よいチェーンソー……友達の心遣いに由香里は感謝した。

 さっそくスターターを引き、エンジンを始動させる。魂を震わせるような重低音があたりに響き、チェーンが回転を始める。

 由香里は雄叫びをあげた。

「ふふふふははははははああ、みみみんんなななぶぶぶたたたぎぎぎぎてててて」

 身体の芯まで響く重い振動に由香里は酔っていた。もう止まらない由香里。

「うううおおりゃあああああ、くくくららええええええ」

 チェーンソーを振り回す由香里。校舎裏の大木にチェーンソーがめりこんだり地面がえぐれたりと大フィーバー。

 大地を耕したり大木の幹を削っていくうち、メキメキと音を立てながら校舎裏の大木が傾きはじめる。そこへ山本君が笑顔で手を振りながら現れた。

「ごめん、待ったぎゃあああああああああ」

 大木の下敷きになった山本君。由香里は山本君を助けるため、チェーンソーをもつ手に力を入れる。

「いいいいまままたたたすすすけけけるるるかかららそそここうごごごくなああああ」

「ぎゃあああああああ」


 こうして由香里の恋は終わった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大きな木の下で パンダコッタ @Pandacotta

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ