第4話 初、生顔合わせ

第4話 初、生顔合わせ (1)

 あれから後も、HOPゲートでの確認作業は続き、時間的に居住区施設テラ・フロート内では内部照明が朝日を演出し始めているだろう、7時前……。わたしは流石に、眠気も最高潮になっていたけれど。当分、ここでの作業の方は終わりそうになかった。

 上司の神垣先輩と共に、本来ならフェミクさん達が確認する筈だった箇所を、点検して回り。ようやく、この《【HOP】ゲート》1番基から居住区施設内テラ・フロートへ帰ることが叶ったのは、昼近くになってのことだった。


 早速、シャワーを浴び。眠気はまだかなりあるものの、身体はすっきりとした気分で、《【HOPホップ】中央管理管制室》へと向かった。


 本当は、このまま帰り、家で爆睡したかったけれど……そうもいかない。

 だって、ゲートを離れる前に見たフェミクさん達の様子は、相変わらず大変そうで。とても、帰れそうにない雰囲気だったから。


 フェミクさん達、倒れなければいいんだけどな……。


 流石に、心配になって来る。

 なにも、フェミクさん達ばかりではない。他の部署のフェミクさんクラスの人達も、一生懸命に作業をやっていて。その日の11時頃。銀河惑星連合の政府関係者立会いの下、ようやく隕石の引き抜き作業に入った。


 そこには、大勢のマスコミ関係者もゾロゾロと入ってくる。

 そして無事に、隕石の引き抜き作業は5時間を掛けて終わった。


 わたしは、その様子を途中からVRモニターの監視画面を使って見つめ。祈る思いで、その無事なる完了を願い。それは、どうにか叶ってくれた。


 安心感から、ほぅ…と吐息をつく。

 その間わたしは、VRモニター範囲内に本来業務である監視画面を多数並べ、空いたスペースに現在テレビ中継で流れているニュースを配置し、チラチラとそれを眺めながら、本来業務にも目を向けていた。

 と、その時、気になるニュースが流れる。



『──緊急速報です。昨夜遅く、【HOP】チャリアビティーポリスのゲート1号機に衝突した隕石の引き抜き作業が先ほど終了した、とのことで。間もなく、今回の事故に関する正式な会見が行われるとの情報が入りました。

では、現場から中継をお願いします』

『──あ、はい! わたくしは今、昨日事故が起きました【HOP】チャリアビティーポリスにて、これから会見が行われる予定の会場に来ております。

あ、どうやら今。丁度、政府関係者がやって参りました! 数名の施設関係者の方も居る模様です。

早速、わたくしも、突っ込んだ質問をして参りたいと思います!!』



 つっこ……。


 みんな、ただでさえ疲れているんだから、これ以上、神経すり減らさないで貰いたいよぉ~~……はぁ…。

 わたしはそう零し、ため息を吐く。

 テレビ画面には、数名の連合政府関係者と、見覚えのある《HOP広報部》の人が映し出されていた。



『今回の、《【HOP】ゲート》への隕石衝突についてですが。連合政府としては、この件について、どの様な対策をお考えなのでしょうか!?』

『あー……それにつきましては、只今、専門チームと共に、状況の確認を急いでいるところでありまして……具体的な対策につきましては、後日、専門家を交え連合政府内で検討した後に、改めて報告とさせて頂きたいと思います』


 そんなの当たり前だよぉ~。ついさっきまで、隕石の撤去作業にみんな追われていて、内部調査はこれからなんだからさ……。


『本来であれば、《自動防御システム》などが働き。今回の様な事故は、本来起こり得ないことだ、との学者の意見もありますが。これについては?』

『それにつきましても、これから確認を行ってから、ということで……まだハッキリとしたことは、私の方から申し述べることは現状出来ませんので……』


 それ自体は、問題なかったらしいんだよねぇ~?

 それよりもなによりの問題は、他にあって……。


『一部、「テロ」との噂もある様ですが?!』

『──まさか!? そのようなことは……こちらには、まだそういった報告は届いておりませんので。その件に関しましての答弁は、控えさせて頂きます』



 ――ン?

 ということは……《警備保安部》はまだ、あの件を上に報告していない、ってことなのかな?? それとも上が、この件をもみ消した、とか??


 ふわぁああ・・・ふわぁああ~~っ……それにしても、流石に眠い…。


 今の時間は、夕方の18時。

 あれからわたしは勿論、一睡もしていない。そのままここで、ずっと仕事をやり続けていたものだから。正直いって、『眠たい』のレベルを既に超えてしまった。感覚的に、麻痺して来た気がしないでもない。

 結構、相当にヤバイなぁ~と自分でも思いはしつつも、ここに居る。

 何せ、そうは思ったところで、【HOP】自体の運行は、通常通りに行われているので、帰る訳にもいかない。

 代わりは、他に居ないのだから。

 それに、《【HOP】ゲート》で今も頑張っているフェミクさんとハインさんの二人や、他の技師エンジニアの人たちのことを考えると……まだ自分なんて、マシな方だろうなぁ、とつくづく思う。


 あとは……只でさえ大変な、こんな時に。他に重トラブルが発生しないことを、今は切に願うしかない。それの対応を、あのフェミクさんとハインさんに伝えるのは、正直いって辛く感じるから。

 だけど、立場上それでも状況を伝え対応して貰う他にない。それはとても、心苦しく、辛いことだけれど。それが、わたしの仕事なのだから。

 

 わたしは、ほぅ……とため息をつき、それとなく隣を見た。

「………は?」

 そこでは、神垣先輩がまるで当たり前のように、ガーガーと寝むっていたのだ。


 ちょっと、信じられない!?

 この人、一体、どういう神経をしているの!? 


 とは、思うのだけれど……流石にわたしも眠たくなり……それでついウトウトと瞬間して、ハッと気がつくと。自分の背後に、この【F-IS課】の課長であるシェードリック・ホークマン氏が立って居た。

 しかも、暫しこちらを黙したまま見つめている。

 わたしは、びっくり仰天なほどに驚く!?

 普段は、《解析室》に居て、こちらには滅多に来ない方なのに、珍しい……と。


 わたしは、何か注意されるのではないか、と内心ドキドキ緊張して、そのまま硬直し、目もその時ばかりはパッチリに固まっていた。

 だけど、結局は何も言わず。課長は自分の椅子へと向かい、徐に座っていた。但し、そこはわたしの席のほぼ真後ろ。しかも、僅か5メートルほどの距離……。


 うわぁあ~……たまらないなぁあ~~、これはっ!


 何気に、神垣先輩の方をそぅ~っと横目で眺め見ると。その時に限って、真面目に仕事をやって見せているのだから、お見事過ぎて呆れる……。


 ――っていうか、気づいていたのなら、教えてくださいよッ!!?


 最悪だ、この人、もぅ~~!!

 しかも、改めて見るVRモニター画面では、さっきのニュースが今も流れているし……。『?』と理解した途端、急に泣けて来たよ。ホントに……はぁ。


 わたしは、そのまま頭を抱え込んだ。

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