第2話 《HOP》の生!(3)

 《【HOPホップ】中央管理管制室》は様々な国際規格を利用し、亜空間航行の安全を保障・管理している。

 例えば、【HOP】ゲートなどにもし万が一故障箇所があった場合にも、他の【HOP】ゲートでCH(チャンネル)が空いていればそこへ『自動誘導避難させる』、などとした《亜空間移動不能回避支援フォールトトレラント設計》となっているのだ。


 それにより、最悪となる人命に関わる事故を未然防止している。


 以前起こったAZ208便の消息不明事故では、『この《フォールトトレラント設計》が不十分であった為に引き起こった事故である』とされてしまった。

 その為、より徹底したフォールトトレラント設計が現在の【HOP】では義務付けられている。


 しかし、この《亜空間移動不能回避支援フォールトトレラント設計》には、二十世紀から現在まで変わることなき幾つかの問題点も同時に混在し続けていた。

 一部機能が失われてもそれを自動サポートする、一見すると完璧過ぎるシステム。ところが……それこそがまさに、このフォールトトレラント設計のだったのである。


 ここで代表的な例を、ひとつ挙げてみよう。


 例えば、エンジンを二機搭載したジェット飛行機であれば、エンジン1基が仮に故障したとしても、フォールトトレラント設計であれば飛行自体は問題なく可能である。現にこうしたシステムは現在でも既に使われている。だが、それをそのまま放置し仮に2基目のエンジンが故障した場合には、果たしてどうなのであろうか?


 操作者(オペレーター)が障害に気づいても、「このくらいなら大丈夫だろう?」と安易に考え、フォールトトレラントシステムの危険性をよく熟知・理解していなかった場合には、それを直すことがおろそかになる危険リスクがある。


 ここで忘れてはならないのは……『人間はミスを犯す動物である』ということだ。


 つまり、そうした人為的ミス《ヒューマンエラー》なども当然起こり得ることを想定し踏まえ《自動・障害検知管制システム》にて異常を早期発見し、速やかに対処し修理する《ルール化》が何よりも必要である。


 そしてまた、その《自動・障害検知管制システム》も想定できるので、それに対してもルール化し、ちゃんと正常に動作・監視出来ているのか?

 そうした重複点検も必要となる。

 早い話が……《【監視・検査・検知・システム】》に対する多重な日々点検が当然ながらこの『システムの信頼性維持』には必要となってくるのだ。


 つまり、安全に管理・維持する為にはそうしたコストがに掛かってくる。

 

 というコトで……《フォールトトレラント課》では、それをハードウェア面で『日々点検する者』

 それをソフトウェア面で『常時監視する者』

 そしてそれらを実際に『修理・解析する者』……と必要になってくる訳だ。


 神垣ミヤと未来ハルカは、この《【HOP】中央管理管制室》内の中央管理監視部区域バックスペースエリアにて、設備に異常が無いかを検査&監視し保安する、

《フォールトトレラント―IS》[Fault tolerant-Inspection&Surveillance Security]


 通称、『F-IS課』に所属していた。


 ……というと、なんだか物凄く大変な部署に配属されたのではないかぁあ~? と思われそうだけれど。実際のところ、専門の【実行部隊】は他に居て……つまるところ特にトラブルが無ければ、仕事やることは基本的に無い、ってコトになる。

 もちろん、日々監視すべき点検箇所はあるのだけれど、基本ここに居て上がって来るデーターチャートや数値を見て異常がないか?等を確認するだけなので、だいたい数時間程度ですべて完了し終わる。

 あとは先ほどの様なトラブル対応くらいなのだ。


 上司の神垣ミヤが普段寝てばかり居るのは、実を言うとである……。


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