夢は叶った!?(3)
首都星ファシスから《【
惑星ディスカバリーは、惑星自体が一つの遊園地的な星らしく。渡された沢山のパンフレットをわたしはその日、両手一杯に抱え込み見回しながら、満面の笑みでもう行く前から子供心にも楽しみだった。
「すごいっ! 大きいね、お父さん!」
「ああ、ハハ。凄いもんだろう?」
「うんっ! ホントーに凄いよっ!」
わたしは、地上のエアポートで大きな亜・宙航空機に父と母と共に乗り込み、間もなくカタパルト式の電磁射出機により、急速上昇軌道で飛び立つ。
そうして、赤道上空の成層圏であるオゾン層を超え、中間圏にまで到達すると、一定高度を保ちながら静止したようにして宙に浮かぶ《アースステーション》の姿が見え始めてきた。
そのアースステーションに近づくと電磁誘導され、亜・宙航空機はステーションホルダーに自動ドッキングし、素早く固定ロックされてゆく。
そして、衛星軌道上の巨大な《軌道ステーション》へと、エレベーターが昇る間に見た外の景色は……今でも忘れはしない。
それはとても幻想的で、凄く、とても美しい!って、子供心にも感じたからだ。
アースステーション・ホルダーにドッキングされ固定された亜・宙航空機は、その間に《オーバドライブ・ユニット》と左右三基づつ合計六基もある《高圧式レーザーホールスラスター・エンジン》をエレベータ内部にて、装着固定、自動点検確認され。このまま惑星外気圏の低高度にある衛星軌道上のステーションまで、三時間以上も掛けて昇り続ける。
やがて軌道ステーション上に到着すると、発進許可を待っているらしく。直ぐには出ていかなかった。
それはほんの十五分間だったけれど、わたしはそのたった十五分間に見た記憶を今でも忘れはしない。
窓に両手を置いて、外を張り付くように覗き込むと。前方には、もう宇宙が当たり前のように広がっていた。
そして、青くとても美しい《首都星ファシス》の輪郭も、凄い大迫力で間近に見ることが出来たのだ。
このステーションホルダーの真下にある鉄の床と電磁射出用カタパルトが、とても邪魔にさえ感じるくらいだった。
そうこう思っていると自動アナウンスが鳴った。
『間もなく当機は、惑星ファシス・第七軌道ステーションより、発進致します。
《電磁射出》されますので、安全の為、シートベルトの着用をお願い致します』
「ほら、ハルカ。シートベルトをなさい」
「う、うん……」
それまで窓の外ばかりを覗き込み見ていたわたしを、父はそう言って席に座らせ、シートベルトを締めてくれた。
でも、もう少しだけまだ見たくて、窓の方をわたしは体を迫り出して再び覗く……。
『《電磁射出》まで、10秒前です。3……2……1……──射出!』
「──ぅわっ!!」
瞬間的に、体が少しだけ後ろに押しやられ。前のめりに窓を覗いていたわたしは、席の座席頭部に頭をうった。
「あ、イタタ……」
「ほら……ちゃんと、お利口にしていないからですよ。ハルカ」
母から叱られてしまった。
父は、わたしの頭とかを触り、大事無いことを確認すると安心し。それから少しだけ呆れ顔を見せ、優しげに笑っていた。
『現在、秒速7万キロ。あと20分後に、当機は《オーバードライブ航法》に移ります。
オーバードライブ酔いをされる方は、今からお薬の服用をされることをお勧め致します。
尚、当機の外部の青白いものは《シールド》によるものであり。異常ではありません』
「青白いもの……?」
言われてみて、窓の外を再び確認してみると。確かに、青白いものがいつの間にかこの航空機の周囲に張り巡らされていた。
「お父さん! コレって、すごいねぇー」
「ああ、綺麗なモノだろう? これのお陰で、この航空機の安全も守られているんだよ」
「安全を……? へぇー♪」
それからいつの間にか、わたしはそんな言葉からの安心感からなのか、眠っていた……。この宇宙を、航空機と共に、駆け巡るような錯覚を感じながら……。もう何時間眠っていたのか、よく覚えてはいない。
『当機は間もなく、《【
再び、あの自動のアナウンスがなった。
到着する、って言うから。慌てて目を擦り、わたしは窓の外、その前方を頑張って覗いてみたけれど。何も前方には見えてなかった。
「お父さん。いま、あのアナウンスの人、ウソついたよ! だって、まだ何も見えてないモン」
「ハハ。直に見えてくるさ」
「でも、まだ何も……」
そう言って、再びわたしが窓の外を見ると。さっきまではなかった何か大きなリング状のモノや、その他にも色々な建造物がまだ小さくだけど見えて来た。
リング状のドーナツみたいなものは、三つもあって、適度な感覚の距離で結構離れていた。その間あいだに、その他の大きな建造物もたくさん並んで見え始めた。
「ハルカ。あの丸いのが、《【HOP】ゲート》だよ。そしてその周りにあるのが、その関連施設で。このチャリアビティーポリスには、《【HOP】管制システム》のホストとなる重要な施設もあるんだ。
ホラ、あの中央辺りにある建造物がそうだよ。とても大きいだろう?」
「うん……なんか、船も沢山あるね?」
「ああ、アレは。この施設を守っている、《銀河惑星連合》の護衛艦隊だよ。ここは【HOP】の中でも、とても大事な施設だからね。
あの一番大きいのが、マスター級っていう、戦略指揮艦船じゃないかな? あれ一隻だけで、最大50隻もの無人艦船を思うように動かすことが出来るらしい」
「へぇー……」
間もなく、HOPゲートの一つが緑色で点滅を繰り返し始め。それを受けて、この航空機から、何か光るものがそのリング状のゲート中央に向かって打ち込まれた。
HOPゲートはその着弾タイミングで、その中央になにか……不思議な光を生み出し、それは瞬間的に直ぐに消えていた。その光るなにかと一緒に。
『擬似テスト・ダミーアンカー、無事に《【
これより当機は、《【HOP】ファーレンハイン》へ向かいます。3……2……1……』
それまでまだ遠くに見えていたHOPが、一気に近づいて来て……。
──次の瞬間……光の中へと、わたしはこの航空機と共に入った!
かと思うと……そこはもう既に、なんでもない先ほどまでと何ら変わりのない、同じ宇宙が広がっていた。ただ、窓から後ろを急ぎ見ると、さっきまでの【HOP】とまた違うタイプの建造物や、リング状のHOPゲートが見えているのだ。
『無事に、《【HOP】ゲート》を通過しました。当機はこれより、惑星ディスカバリーへと向かいます』
それはまさに……ドラえもんの『どこでもドア』の様に、一瞬での移動だった。何一つ、衝撃波のようなものすらない。感じない。《100光年もの距離》を、ほんの一瞬で……とても信じられないくらい、簡単な移動だった。
あれからわたしは、父を困らせるくらいにHOPの
そんな昔の思い出に思いを馳せ、目を輝かせているわたしのことを。教育担当である神垣ミヤ先輩は、虚ろな表情で眺めこう言った。
「言っとくが。余りここの仕事に、そんな壮大な夢物語みたいな期待なんて抱かない方がいいぞ」
「……え?」
予想もしなかったその言葉に、わたしは思わず戸惑いを隠せずに居た。
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