(2)
「じゃあ、これから全校集会だから全員体育館の方に移動するように」
頭の上で声が通り過ぎて、顔を上げ瞼を開くと教壇には担任がいた。
いつの間にか悟は自分の席に着いていて、他の生徒も皆席に着いている。
――やっぱり、夢だったか。
それはそうだ。人一人死んでるのに、なにもない事になるわけがない。しかし、学校で悪夢を見るなんて。
自分の頭に手を置く。あの強烈な痛みは微塵もない。夢だから当然だ。でもあまりにリアルな痛みに、奥底にそれがまだ眠っているような気がしてならなかった。
「何してんだよさっとん。行こうぜ」
肩をポンと男子に叩かれた。
気付けば生徒達がぞろぞろと教室から動き出していた。
「ほら、全校集会。体育館行こうぜ」
「ああ」
体育館には既に大勢の生徒が集まり整列していた。集会はまだ開始されてないが、いつものようなざわめきは少ない。愉快な話題じゃない事が分かっているからだろう。
ざわめきが鎮まり始めた。前を向くと、校長がすでに檀上にいた。だがまだ何も話さず、視線を手元の上に落として黙りこくっている。これから話す事について、手元の資料でも確認しているのだろうか。しばらくその状態が続いた後、校長はようやく顔を上げマイクに向かってあーあーと声を出した。
「えー、みなさんおはようございます」
おはようございます。校長に続いて全校生徒の声が館内に響き渡った。
「そろそろ夏休みも近くなってまいりました。体調管理にはしっかりと気を付け……」
――は?
校長はいつもの朝礼でするようなつまらない挨拶と話をぐだぐだと並べたて始めた。
ただの前置きかと思った。だがその後もだらだらと右から左へと抜けていくような話が続く。
――おいおい、なんだよこれ。
事件の話は一切出てこない。
だが周りを見てもその事に戸惑っている様子の者は誰一人いない。
そして結局そのまま、何事もなく校長の話は終わってしまった。
――終わりなのか?
構わず進行役の教師が「礼」と号令をかける。号令に従い全員が頭を下げる。
ごっ、ぐじゃっ。
檀上の方から何かが聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます