(2)
「うげー気持ち悪い話ね。そういうスプラッターなのはちょっと勘弁」
楓はおえーと分かりやすいリアクションで顔をしかめた。
悟はと言えば、複雑な面持ちで操の話に聞き入っていた。
何だこの話は。
正直言えば、オカルトや都市伝説としては程度の低い話に思えた。確かに猟奇的な事件の内容は恐ろしいし、脳を食べるというノームと呼ばれる殺人鬼のキャラクター性もあるにはあるが、話として決してよく出来ているわけでもなく、魅力的なオチが特にあるわけでもない。
語り継がれるオカルト話には恐怖の中にも確固としたエンターテイメント性がある。だがこの話にはそれがない。証拠が何も残っていないという不可解さはあるが、何と言うか、実際に起こった事件がそのまま騒がれている、そういった印象を強く感じる話だった。
「それってさ、本当にあった事件なのか?」
悟は思ったままの言葉を口にしていた。
「どやろ。そこは俺にも分からんわ」
「そうか」
「でもさ」
楓がそこで口を挟んだ。
「今の話って、偶然とは思えない程に聞き覚えあるよね」
「せや、それが一番言いたかったんや」
「……そうなんだよな」
楓の言う通りだった。何しろそれが、操が”妙な話”と言った理由だろう。
今聞いたノームの話は、悟が見た悪夢そのものなのだ。
“モット、ホシイ”
あの声がまた、頭の中に響いた。
この一致は果たして、偶然なのか。
だが、その時既にそんな疑問を抱く余裕もない程に、既に現実も浸蝕され始めていたのだ。
ノームは、ただの都市伝説でもオカルトでもなかったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます