(4)
メンバーが揃った所で、悟達は部室への道を歩いていた。
部室と行っても、非公式で勝手に行っている部活だ。学校がそんなものに対してもちろん部室など用意してくれているわけがない。その為、自分達の部室は自分達で工面しなければならなかった。自由というものには縛られない代わりに全てが自己責任という大いなる責任が伴う。
とは言え、一体何の責任を負っているのかと言えば、そんなものはないに等しい。高校生の自由は大人の自由とは違う。守られた囲いの中の自由だ。だから学校を出て少し歩いた山林の中に偶然見つけた小屋を部室替わりに使ったからと言って、おそらく何も咎められる事はないし、咎められたとしても大いなる犠牲を払うほどの責任もない。ただただこの場所は、悟達の活動にとって居心地のいい部室でしかない。
小屋の扉をぎいと開けると、簡素な木製の机と長椅子が悟達を出迎える。窓がないため扉を締め切ると完全に闇に支配されてしまうのが辛い所だが、それを見越してか先人が用意してくれたランプに火を灯すと、不安を掻き立てる闇は一転、淡い光が小屋を優しく照らし出してくれた。これがなんとも秘密基地っぽくて、活動に深みが出るような空気を与えてくれた。
「ほいほいほいっと」
「そいそいそいっと」
そんな空気をぶち壊すように操と楓は、ここに来る前に先にコンビニで買っておいたお菓子を机の上にぶちまけ、次々に袋を開けていった。
「お前らさ、もうちょっとこの空気を重んじろよ」
「今更なんや。そんな事言うならお前にこの菓子はやらんぞ。なあ楓ちゃん」
「そうだそうだー!」
「あ、それうまそうじゃん」
「って食うとるがな! 空気はどうしたんや空気は!?」
「そうだそうだー!あ、おいし、これ」
今でこそ当たり前のように菓子を貪り食う事が出来るまでに環境は整ったが、初めてこの小屋の扉を開けた日は、草は生い茂り埃まみれで座る事すら憚られるような場所だった。
三人で汗まみれになった結果、部室として使える程に整備する事が出来たのだ。
「さて、と。部長、どないするよ?」
「どないしましょうか」
「え、嘘? まさかネタなし?」
「そのまさかや」
「ええー!? マジ!? さとぅーもないの?」
「いや、テンプレ的なやつしか……」
「新ネタはなかなかなあ」
操は頭の後ろに両手を回し大きく椅子に背を仰け反った。
「まあ実はそんな事だろうと思いまして」
「お? 楓ちゃんネタありかいな」
「ああでも、思ってるようなもんじゃないよ」
「なんやそら。逆に気になるがな。話してみいさ。なあ悟?」
「ああ。どうせ俺達ろくなネタないし」
そう言うと、コホンと咳をつき、楓は話始めた。
「これは、あなた達の本性を暴くテストです」
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