第7話〜さいごではじまり〜
あれから一週間。
病院を出て、家で普通に過ごしたい。という願いを聞いてくれた親に手を握られて私は眠った。
目が覚めると、目の前に女王様がいた。
「友莉さん…短い間でしたが、願いは叶いましたか?」
私は笑顔でうなずいた。
「悔いは無くしたつもりです。」
「そうですか。では、この
そう言って女王様は1つの美しいリングを差し出した。
金でできたリングに砂のように小さな宝石が星のように散りばめられている。
「この指輪は、shineの国民である証です。この指輪を一度はめると、もう2度と下界には戻れせん。」
私はこくり、とうなずいてリングを受け取った。
「小指につけてください。」
私は言われた通り、左手の小指にリングをはめた。
すると、リングは吸い付くようにぴったりとはまった。
「左手の小指にリングをはめるのは、"愛情を深める。" "チャンスを引き寄せる。"という意味があります。」
そうか。リングをはめる場所によって意味というものがあるのか。
「女王様、ありがとうございます」
「いいえ。さあ。アンが待ってますよ」
女王様の視線の先には、アンが立っていた。
「友莉ちゃん、改めまして、ようこそ」
「アンさん…」
私とアンは力強く握手した。
アンの小指には、私と同じ、光り輝くリングがあった。
アンの家に戻ると、アンは2階に案内してくれた。
2つ目のドアを開けると、可愛らしい部屋が。
「ここが友莉ちゃんの部屋よ。」
「えっ‼︎こんな立派な部屋…」
「貴女はもうお客様じゃないのよ。立派な国民よ。部屋があって当たり前じゃない。」
「…あっ…ありがとうございます…」
驚きのあまり、言葉を詰まらせながら私は言った。
「これから、新しい人が来る可能性もあるけど、普通に接してあげて。きっとその人も、私達と同じだから。」
「…はい」
そうか。ここは死後の世界だ。
新しい人が来て当たり前か。
「友莉ちゃん」
アンに呼ばれて、私は1階に降りた。
1階に降りると、お客様が来ていた。
真っ白な長い髭を生やしたおじいさん。
何だかサンタクロースみたいだ。
おじいさんはゆっくりと立ち上がり
「貴女が友莉さんですね。この前、貴女の絵を拝見させていただきました。」
え!いつの間に⁉︎
「見事なものでした。是非一度お会いしたく、こちらに参りました。」
「はぁ…。あ、ありがとうございます」
私はおじいさんと握手を交わした。
何だか偉くなった気分だ。
社長とか。
「友莉ちゃん、この方はね、この国で最大規模の絵師の会の会長さんなの。」
え!この人偉い人だったの⁉︎
「友莉さん、是非、我々の会に入会していただきたいのですが、見学にいらっしゃいませんか。」
こっ…これはまさか…
スカウト…‼︎‼︎⁉︎
ヤバい。天狗になりそう。
私があれこれ考えていると、おじいさんは名刺を差し出した。
そこに書かれていた名は
『レオナルド・ダ・ヴィンチ』
顎が外れそうになるのと同時に、目が飛び出しそうになった。
急に手が震え始めた。
身体中の穴という穴から汗が出てくる感じがする。
「どうしたの?友莉ちゃん」
アンが心配そうに声をかけてくれたが、答えていられる余裕なんて無い。
立っているのがやっとなんだから。
「友莉さん、大丈夫ですか。驚いてしまいましたか。よく、初めてお会いする方に驚かれるものです…。過去に腰を抜かしてひっくり返ってしまった方もいらっしゃいましたよ。」
そう言って、ダ・ヴィンチさんはフフッと小さく笑った。
「友莉さん、今から見学に来ませんか。友莉さんさえよろしければ…」
「いいい行きますっ‼︎」
断るだなんて、恐れ多いっ‼︎
「そうですか。よかったよかった。」
ダ・ヴィンチさんは笑顔でうなずいた。
私は、アンの方をチラリと見た。
アンは口パクで
「大丈夫。行っておいで」
と言って笑った。
私は、そのまま絵師の会の見学に向かった。
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