第4話 〜疑問〜

今日は土曜日。

お母さんは仕事で出勤して、家には私1人。

つまんないなぁ。

そうだ。shineに行こう。

ポケットからあの鍵を取り出す。

深呼吸しおて目を閉じた。

あれ。何も起きない。おかしいな…

再び目を開けると、手からスルリと鍵が落ちる。

鍵が床についた瞬間、辺りが眩しい光に包まれていく。


……。

「友莉ちゃん、おかえり。」

「アンさん…。私、やっとこの世界への扉の開け方わかったかも。」

「…。そう。良かったわね。」

あれ。アンさん…?目が笑ってない…。

「友莉ちゃん、shineの鍵は誰にも渡してはいけないし、扉の開け方も教えたらダメだからね。そこは気をつけてね。」

「…?うん。」


「そうだ。絵を描きに行きましょう!」

「え?…行きたい‼︎」

「よぉ〜しっ!行きますか!」


向かった先は公園。

大きな公園で、緑が多い。

門のところには『shine第1森林公園』の文字が。

shine《英語》のあとに第1森林公園日本語だなんて、なんか違和感あるネーミング。

川の近くまできたとき、アンがパレットを広げた。

どうやらここで描くらしい。

綺麗な景色だ。

あれ?この景色…。

私が最後に描いた絵にどこか似ている。

川の向こう岸には、静かな竹林。

私は、違う場所で描くことにした。


いままで何度も繰り返しやってきたこの動作。

パレットに絵の具を出して、混ぜる。

そしてキャンバスにその色を広げる。

飽きるほどやってきた。なのに、初めてやるようなドキドキ感。

キャンバスに色がのったときの胸のざわめき。

全てが新鮮に感じる。


どのくらいの時間がたったのだろう。

夢中で描いていた絵も、いつの間にか完成してしまった。

小高い丘から見えるshineという世界の小さな町。

少し空が近くて、町の真ん中には大きなお城があって、メルヘンな世界の景色。


「友莉ちゃん、上手ねぇ」

後ろからアンさんの声が聞こえた。

振り向くと、アンが描き上げた絵を持って立っていた。

「アンさん…。shine《ここ》が異世界だから、私の手が動くの?」

「そう。私もshine《こっち》では手が自由。そのワケは…。まだ知らなくても良いわ。」

知らなくて良い…?

「どうして、今は駄目なんですか。」

「…。貴女はまだここに来て間もないから。かな。

さぁ、帰りましょうか。」

「…うん…。」


今はまだ知らなくて良い…。

どういうことだろう。

帰り道、ずっとそのことを考えていた。

家に着いてからは、アンさんと描いた絵を見せあって、個展を開こう。みたいな話になった。

shineにいたら、好きなだけ絵を描ける。

自由に表現できる。

ここは、だ。


ん…?

…?


帰らなければならない。


私は本能か何かにそう言われた。

そうだ。ここにいてはいけないんだ。

「アンさん…。私、帰ります。」

「…?そう、早いのね。」

「宿題やってなくて、1人じゃできないから、友達に手伝ってもらってるんです。だから、そろそろ…」

「うん。じゃあ、宿題終わったらまた来てね。」

…。嫌です。

なんて、言えるワケがない。

目を閉じて、再び視界が明るくなると、そこはいつもの私の部屋だった。


これは…。shineについて調べないと…。

私は、真っ先に携帯を手に取り、『shine』という文字を入力した。

本当にshineについて出てくるかは、確信はなかった。


が。


出てきた。


shineという英単語の意味ではない。


shineという世界についてのサイトがあった。


それは、裏サイトだった。


私は夢中になってサイトに書かれた情報を読んだ。


そして、ついにshineの正体が、わかってしまったのだ。

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