第三章 魔王 帝国を興す 第1話 魔王、軍団を執る1

ここで一度、魔王として転生した俺がこの地に降臨してからの軌跡を辿ってみよう。

後の世に神話となるであろう最初の一節となる、言うなれば黙示録の章である。


壱日目、

再誕した魔王の威容は世界を恐怖と絶望に陥れ、すべての生物は恐慌のあまりにあるいは地平の彼方へと逃げ去り、あるいは地の底へと逃げ込み、その身を震わせるだけだった。

清浄なる泉も、緑豊かな大地も魔王の障気に触れれば全て腐り枯れ果てるのみである。

世界は泥濘の海へと変わり始めたのだ。


弐日目、

神聖な大樹すら事も無げにへし折った魔王は、次の支配者として地上の全てをその視界に収めんと世界の隅々までに光臨した。

しかし、魔王の威光に触れてもまだ目を潰す事無くその姿を捉える事が出来るのは、極僅かな力ある存在だけであった。

人類の残した遺産も今や魔王の宝物の一部でしか無くなった。これより得られるであろう幾多の至宝も皆魔王に捧げられる供物となろう。


参日目、

魔王は遂に生贄を欲した。

かつては神とすら崇められた天龍すら、魔王の前には蜥蜴の一匹程の価値もない。全てを凍てつかせる冷気により粉々に砕け散る。

多くの生物を内包した湖も天雷の怒りにより煮え滾る沼と化した。

飽くることを知らない魔王は地上に残る草木の一本迄も生贄にしようと、大地に足を付け悠然と徘徊し、全てを食らい尽した。


肆日目、

天象すら自在に操り、天の恵みの与奪も自在にする魔王は、地に播かれた種子にさえ容赦はしなかった。

異形の召使たちは忠実に種子を集め魔王に生贄として、祭壇へと捧げる。生贄は、地の全てを焼き尽くさんとする大災害の嚆矢であった。

天雷は森を焼き、疾風は炎を捲き上げ、洪水は地を押し流した。

変わり果てた大地に独り魔王は佇む。


伍日目、

この日を境に人の位階は永遠に一段下がった。

至高の液体、『流れる宝石』とも呼ばれる天の蜜を集められるかどうか、それが全ての価値の基準となったからである。

『流れる宝石』を手に入れた魔王は、その膨大な魔力にも未だ満足せず、新たなる力を求め数多の鉱石を砕き割る。

魔王は求める鉱石は紅蓮を産み出す魔石である。


陸日目、

魔王の強大な魔力を祝うかのように湧き出した足多き者供の祝福の狂宴が始まった。

されど時同じくして祝福を呪うかのように足亡き者供が湧き出し、不遜にも『流れる宝石』さえ喰らい尽した。

魔王の支配下の宝物に如何なる者も触れる事は許されない。

魔王の逆鱗に触れた足亡き者供は種族全てが魔罰を蒙る事となった。

『流れる宝石』を失った悲しみは天すら涙を流す程であった。





大体こんなだったはずだ。


仮に今までを覗き見る事が出来る、神の視座でも持った存在がいるとすれば「そんなだったか?」と思う向きもあるやも知れない。

それは全く正しい事だ。俺は寛大な魔王なので物の捉え方一つで罰するということはしない。

当然ながらその視点によって世界の見え方はまるで違ってくる。


問題なのはこの美少女フィギュアというか、小美少女たち一族にはどのように見えたのかということである。

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