第11話 魔王、眷属を得る6

酷い大雨になったものだが、流石にまた雨雲を吹き飛ばすわけにはいかない。

これ以上どんな荒天になるか予測がつかないので危険過ぎる。一連の騒ぎはほとんど自作自演みたいなものだし。

となると雨宿りする場所を探さなければならないのだが、中々これといった場所も見つからずに彷徨っていると、丁度良い具合に下に空間を残して倒れかかった木を見つけた。


「前に寝ぼけて倒した木か・・・そうだ!」


倒れた木の下半分の太い枝を握り潰して大雑把に形を整えていく。

普通なら金属の斧を使わなければ切れないような枝でも、草花を手折る程度の力で切り落とすことが出来た。

使い所によっては本当に便利なんだが・・・

幹まで一緒に腐らせてしまうような細枝は石包丁で切り落とし、更に加工していくと程なく完成した。


倒木を利用した簡易テント?だ。

枝を払った後に出来た僅かな空間に体を横たえる。

上半分に残した枝が雨を避けてくれるので、ようやく落ち着いて一息つく。


「屋根があるって・・・いいな」


しみじみと思う。

今までずっと野宿だったからな。

暫定とはいえ、これが我が魔王城か。漫喫より狭いけど。

・・・本当は暫定にもしたくないんだが。

ザンテイ・・・、ザンテ城でどうだろうか?

何か魔王城っぽい響きだ。

いずれはスライムの唯一の生き残りを飼育する地下牢でも作ってやる。

ただ弄ぶために生かされる種族最後の一匹・・・悪くない。魔王城らしい。

今は1階分の高さも無いけど。


ザンテ城で身を休める俺は今やすっかり手に馴染んだ石包丁を弄んでいた。


「?」


何かデジャブを感じたような。前世の記憶か?

曖昧なイメージははっきりとした像に結びつかず、面倒になって懐に石包丁をしまう。

まあいい、どうせ碌な記憶じゃないだろ。


しかし転生して6日目にして初めて雑魚モンスターに会うとはどうも順番が狂ってるように思えてならない。

ある程度知性があるモンスターは近付いてこないし、知性が無い奴はコミュニケーション取れないし。

ああいう足が多すぎたり無かったりするのじゃなくて、適正な数の奴に出会いたい。

もっとエルフとか悪魔娘とかそういうの欲しいよな。このワイルド過ぎる日々のテコ入れに。


「これだけ俺が愛用しているのだから、『魔王の聖杯』あたりが擬人化美少女化しても良くないか?」


石魔法動人形ストーンゴーレム制作の魔法なら持っているが、擬人化魔法など存在しない。

よしんばゴーレムで美少女を作ろうとしても勘違いクールジャパンのオブジェみたいな代物しか出来ないだろう。


・・・・・・

人恋しさでいい加減精神が危険な兆候を見せているのを感じながら、降りしきる雨の音をBGMに眠りにつく。

しかして翌朝目を覚ますと、


目の前に美少女がいた。

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