第10話 魔王、眷属を得る5
近くのスライムの一匹に止めを刺すと、俺は浮遊の魔法とジャンプを組み合わせた大ジャンプを繰り出した。
中空を舞う魔王を追い、天を仰ぐように蠢くスライム達を尻目に目的地へと着地する。
着地した先は飛び石のように残った倒木の一つだ。
目的地の倒木が着地の衝撃で砕け散り、粉々になった黒い破片が周辺に舞い飛ぶ。その破片を身を捩るように躱そうとするスライム達。
「やはりか・・・」
スライム達が倒木だけ避けているように見えたのが疑問だったが、これで確信が持てた。
この辺りに倒れている木は、先日の森林火災騒ぎで延焼した木の一部、つまり木灰の塊だ。
消し炭と化した木灰の成分によるものかまでは判断しかねるが、どうやらスライム達は灰を嫌うらしい。
もしくは蛞蝓のように水分を吸い取る砂状の物質が苦手なのかもしれない。
「どちらにせよ対処法は決まったな」
木灰を拡散させながらある一点を目指し同じジャンプを繰り返してゆく。
辿り付いた場所は森林火災の中心となった祭壇。
俺が魔王としての自覚に改めて目覚めたあの場所だ。
やはり木灰だらけのこの場所はスライム達に忌避されているようだ。一匹も近くに寄って来ることはない。
遠巻きに俺を囲むスライム達を
「
両腕から放たれる暴風は轟音を立てながら辺り一面の灰を捲き上げ、黒い壁が建ち上がる。
黒い壁は崖に沿って一気に広がり、谷に閉じ込められた黒い風は竜巻のような暴風に収束されてゆく。
風に煽られるだけならまだしも弱点の灰に触れたスライムは乾き死ぬか、風のない竜巻の中心に逃げ込むかの選択を迫られ、森の中央に巨大なスライム
「貴様らの罪業を全焼の供犠として浄化してやろう」
「
巨大なスライム
自らの罪を自覚することも出来ない哀れなるスライム達はその身を満たす構成物質の全てを蒸発させ、字義通り跡形もなく消え去った。
それでも魔王の怒りに触れたにも関わらず一瞬の苦しみだけでその命を終えたのはまだ幸福だったかもしれない。
その時ついに天の底が抜けたかのような雨が降り始め、焼け焦げた炭から蒸気が立ち昇る。
その雨は、魔王の眷属の死を悼む嗚咽の涙として流れたようにも思えた。
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後、少し頭を冷やす効果があった気もする。
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