第5話 魔王、階を重ねる5

異様な様相を見せる天空を仰ぎ見ながら着地した俺の足元に


パキペキグミュ


という謎の音が鳴る。

いつもと違うその音に足元を見ると、地面に溢れだす大量の虫達を踏み潰した音だった。


「!・・・・・!?!?!」


悲鳴を上げる間も無く反射的に飛び上がった俺は、黒ひげ危機一髪よろしく枝振りをくり貫くように森から飛び出した。


「えっ?!だから何これ?!」


上も下も何が起きているのか理解出来ないまま、頷くように視線をいったり来たりさせる。

空も不気味だが、地面はもっと酷い。大量の百足、蚯蚓、蛙に蜥蜴、足のないもの、足の多すぎるもの、その他名状し難きもの達が地を埋め尽くしている。


魔王レベルアップにはあれもいつか食べなければならないのだろうか。

想像するだけでへこむんだが・・・

やっぱり低レベルクリアしたい。女子中学生とも出会いたい・・・

少なくともあれを食べて出会えるとは思えない。


しかしこの事態はどういう訳なのだろうか。まさかあれか、そこら中の石をひっくり返して使えるものを探してたから虫達が日照権、いや日陰権か?を求めての抗議活動とか。


「お、お前ら。我を恨むのは筋違いというものだぞ。この世の全ての石は魔王の物であってだな、住宅問題に関しては出来るだけ前向きに善処しますけども・・・」


さらにグロテスクな状態になっていく光景に完全に腰砕けになりながら、支配者の苦悩を思い巡らせていいたが、息が詰まるような重苦しい空気に言葉さえ詰まるようになった。

空気が重い?もしかして?

落ち着いて空と地面を見比べる。


「あっ!そうか。これ大雨の前兆なのか」


大雨で溺れないように地中の虫たちが避難しているのだろう。

そう考えればこれは俺の責任ではない。住宅問題に気を遣う必要も・・・

いや・・・あるな。無茶苦茶責任あるな。


炎熱系最上位階アグニで思いっきり雨雲を吹き飛ばしてたしな」


後から考えれば分かることだったが雨雲を吹き飛ばしたからといって水蒸気が無くなる訳ではない。分子レベルで崩壊させる魔法を使ったならまだしも、再度蒸発させた雨雲は空中に水蒸気としてため込まれていくだけだ。結果大量の水蒸気はあの異様な雨雲となり、それに反応した虫達が緊急避難中という訳だ。


しかし分かった所でどうしたものか。

余りのグロさに全部吹き飛ばす最上位魔法でもブチ込みたくなるが、それで森そのものが無くなれば本末転倒だ。

雨雲をまた吹き飛ばしてもさらに悪化させるだけだろう。

かといってこのまま放置では・・・

手詰まり感に漠然と中に浮いたままでいると、視界の外では地上の混乱に拍車をかける更なる異変が起こっていた。

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