第3話 魔王、階を重ねる3

カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ


ところで魔王にふさわしいとはなんだろうか?

例えば魔王城を建設するとして、どのような建築にするかということだ。

まさか3匹の子豚の童話のように藁や木?それではあまりにも心許ないしたとえ煉瓦であっても強大な敵に対する防御力は似たようなものだ。


ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ


すなわち結論は石しか在り得ない。御影石の壁、大理石の床、意匠を凝らした石像たちもまた石で出来ている筈だ。

斯様に魔王と石は切っても切り離せない深い親和性に満ちている。我が聖遺物『魔王の聖杯』一つをとってもそれは分かりそうなものだ。


カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ


一口に石と言っても決して一様ではない。雑草等という草もないし、路傍の石等という石もまたないのである。

例えばこの黒味がかった石、角張ったフォルムは木の上の木の実を狙って投げるのうってつけである。


ガッツガッツガッツガッツガッツガッツガッツガッツガッツガッツガッツガッツガッ


平たい石は水面を石切りして楽しむのに便利だし、こちらの丸い白い石に至っては手に握ってその丸み滑らかさを味わうことで精神に安定をもたらす優れモノである。何らかの魔力が宿っていても不思議ではない。


「ってやってられるか!!ボケェェェ!!」


手近の大きめの石を壁に叩きつけると大きな破壊音が森に響いた。

単調な作業をごまかそうと色々益体もないことを考えていたがいい加減限界であった。


何をやっていたかというと復讐のためとはいえ、生きながら背中の薪に火をつけるという悪魔的所業を実行したあのカチカチ山の兎へのリスペクトによる魔王レベルのアップ、つまりは火打石の探索だった。


「ていうか本当に石をぶつけて火花なんてでるのか?都市伝説じゃねーの」


伝説の魔王級の魔力を持て余しながら火打石を伝説の存在にしようとする魔王がここにいた。

とはいえ事実火花の花の字もでない状態である。せめて火の方でもでれば万事解決なのだが。


「何かこう時代劇とかでいってらっしゃいお前さんとか言ってやってたよな」


焼死体を作って保険金殺人でも狙った訳ではないだろうし、何かのおまじないだよな。あれ。

おまじない?

ふと思い立ち集めまくった石の中でもきれいな物、特に固そうな物、そういった目立つものだけは確保しておくことにした。思いつきに過ぎないが後々何かの役に立つかもしれない。


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