第3話 魔王、水を飲めない3
潔く腐った水をそのまま飲む!
そもそもこの体は人間ではないのだからいけるんじゃないか。
「地獄の眷属たる魔王が腐れ水ぐらい飲めなくてどうするというのか!」
小学校の時に飲まされかけたザリガニ水槽の水を思い出させる手の平の青緑色の水を見て気合を入れる。
あの時は飲めないと抵抗したら頭から水を被らされて「ザリシュー」とかいうあだ名をつけられたが、ある意味今あの時の自分を超えてやろう。
そう一人ごちると気合一拍一気に飲み干した・・・
一秒と経たない内に地獄の眷属から
実に魔王らしい特性がまた一つ分かったが、強酸の胃液が吐けるのに腐り水は飲めないのかこの体。
岩に腰かけ胃のむかつきが治まるのを待ちながら、沈思黙考する。およそ地上最強と呼ばれるべき魔力を持ちながら水の一杯も飲めないという現実に茫然とするが、このままではいられない。というか飲みたい。猛烈に飲みたい。この体でまともに水を飲まないでいられる期間ってどれくらいなんだろう。
そんなことを思いながら未練がましく泉をのぞき込むと水面に写った半開きの口から赤い舌がちらと見えた。
舌?
思い立った俺は水面に顔を近付け目いっぱいに舌を伸ばし水面に付けた。
つまり犬猫のやるあの飲み方である。
もはや魔王どころか人間すら怪しい四足獣のそれであるが、背に腹は代えられない。少なくとも唇に触れないように舌を出し入れするという高度なテクニックを用いている以上、そこいらの獣達より格上な筈だ。と思う。
そう思いたい。
しばし夢中になって水を飲むというか舐めていると、夢中になりすぎたのか手元の土が崩れるのに気付けず、泉に滑り落ちてしまった。
周りの水を青緑に染めながらもがいてようやく岸にたどり着く。
実際に涙を見せていたとしても体に付いた青緑色の水滴に隠されて分からないだろうが、本気で悲しくなってきた・・・
何気なしに小石を拾い泉に投げ込もうとしたが、ふと思い止まり、手の中の小石をまじまじと見る。
「石は無機物だから腐らないのか」
石、石、石だ!
石を探そう。
適当な窪みのある石だ。それならコップの代わりに使えるかもしれない!
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