第25話 お風呂

「ただいまー」

 ヤマトの家に帰ってきました。


「ふー。疲れたねー?」

 ヤマトに声を掛けたけど、ヤマトは荷物を整理していた。集中してるみたい。

 

 まあいいか、私は居間でゴロゴロする。

 畳の匂いが良い。

 あー、私頑張ったって感じがする!

 うん、実際に頑張りましたよ。


「そうだ! お風呂入りたい、お風呂!」

「……勝手に沸かして入れ」

 ヤマトはこちらを見ないで言う。


「むー」

 私はふくれた。頬をぷくーっとしてやったけど、ヤマトは全然こっちを見ない。


 ちょっと腹が立った。お風呂に入って忘れよう。

 家の中をウロウロして、お風呂場を探す。


 ……あったけど、これは。


「まさかの、五右衛門ぶろー」

 薪、燃やさなきゃのやつだ。お爺ちゃんがいないと入れない。

「ヤマト! やーまーとー!」

 ヤマトに沸かしてもらおう。


「……なんだ、ヒナミ? 俺は忙しい」

 ヤマトは刀を研いでいた。

 水が流れている細長い石に刃を当てて、とても真剣な表情です。


「えと、お風呂沸かして欲しいんだけど?」

「風呂も沸かせんのか?」

 呆れたような声と顔にムカッとします。


「でも、火とか使うと危ないって、お爺ちゃんやお母さんが……」

「火が使えんなら、どんな家事が出来るのだ……取り合えず己でやってみろ」

「でもでも、火なんて起こせないし」

「……術印書があるだろう?」

 ヤマトの言葉に驚く。


「え! そんなことに使って良いの?」

「構わん、術の訓練にもなる。出来れば書が無くても撃てるようになれば節約にもなるので助かるが?」


「ふーん」

 まあヤマトが良いって言うならいいか。


 お風呂に水を張る。

 家の外に回る。

 お風呂場の外側には思った通り、薪が積まれていた。なんだかワクワクしてきた。

 かまどに薪を入れる。


「ふふふ、では!」

 火トカゲ君にお願いする。

 すぐに火が付いた。

「やったー、出来た!」

 良い感じです。パチパチと小気味いい音がする。


「あ、そだ。私これからお風呂は入るからちょうどいい湯加減でお願いねー」

 火トカゲ君にお湯の調整をお願いしておく。

 私は家に入った。

 急いでお風呂場に行く。

 

 服をぽんぽーんと、脱ぐ。

 あ、でもヤマトに貰った着物だからきちんと畳んでおこう。

 せっせと畳む。


「よっし!」

 完璧です。では!


「おっふろー」

 湯船からタライでお湯を掬って体にかける。

 あー気持ちいいー。ちょうど良い湯加減です。

 火ヒトカゲ君はいい仕事をしている。


 風呂に飛び込もうとして、気付いた。

「そだ。危ない危ない」

 床板を敷かないと熱い熱いになる。

 五右衛門風呂は、底とかが鉄だから。


 ゆっくりと床板を落とし込む。


「ふー、気持ちいいー」 

 死ぬ。体が溶けていく感じ。

 やっぱり疲れてたのかな。なんだか眠くなってきた…………。

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