第22話 暗闇

「ヒナミ、この先だが……何が見える?」

 ヤマトが急に立ち止まった。

 

「んあ?」

 ヤマトが指差している先には、穴があった。

 幅10メートルくらいかな? 丸めで大きめの穴だ。

 中は真っ暗。

 暗闇の中に細い石の階段が続いている。

 

「何も見えないけどー。もしかして、あの階段のこと?」

「いや、階段ではない。階段以外には……ナニか見えないか?」

「んー?」

 穴の中をじっと見つめてみる…………うん!

 

「何も見えない!」

「……そうか、ところでヒナミ。一つ頼みがあるのだか?」

「んー何ー? メンドクサイことなら、やだよ」

「そんなに面倒ではない。この先に行って……光る石を獲ってきて貰いたいのだ。距離も短いし、敵もヒナミなら問題ない」

 

 光る石を取ってくる?

 まあ、それくらいなら良いかも知れない。

 ヤマトにはお世話になってるし!

 たまには役に立ってやろう。

 でも……ひとつ確認しておかなくては。


「ねーねー、モンスターは出てくるの?」

「…………ああ、出るとは思う」

「ええぇ!? 出るのモンスター、じゃあ行かない。行く訳ないでしょう!」

 

 私1人でモンスターをやっつけれる筈がない。そんなトコに行かせようとするなんて……私に死ねってこと? 

 どうしよう、何かヤマトを怒らせるような事したかな?


「ううぅ」

「おい! 何故泣く!?」

「だって、だってヤマトがぁ」

「……お、俺が何かしたか?」

「だって私に死ねって……」

「そんなこと言っておらんだろが!?」

 ヤマトが驚いたような声を上げる。

 

「……ううぅ。でも、モンスター出るんでしょう?」

「いや、確かに敵はおるがヒナミに危害を加えることはない」

「……そなの?」

「ああ、そうだ」

 ヤマトは、私の目を見ながらゆっくりと頷く

 でも、私は簡単には騙されないぞ!


「……じゃあなんでヤマトが行かないの?」

「俺には襲い掛かってくるのだ」

「うーん? 私は大丈夫で、ヤマトはダメってこと?」

「そうだ」

 ヤマトがまた頷く。


 私は考えた。

 そんなことってあるのかな? 

 あるかもしれないし、無いかもしれない。

 結局は、わかんない。


 じゃあじゃあ、ヤマトについて考えよう。

 もし、言ってることがウソだったとして。

 私にウソを言う必要があるのでしょうか? 


 …………うん、無いな。


 冷静に考えると分かる。

 もし私を殺したいなら、何処へでも置いていけば良い。そしたら、私は確実に死んじゃう。わざわざヤマトがウソを言う必要がない。


「よっしゃあ! わかったよ、ヤマト!! 私頑張る」

「お、おう? 急にやる気になりおったな」

「光る石を取ってくれば良いんでしょう?」 

「そうだ」

「わかった、いってきます!」


 よし、頑張ろう。

 攻撃してくるモンスターがいないなら余裕、余裕。


 階段に向かって進む。

 少し進んだ所で気付きました。あ、これアカンやつだと。

 すぐ引き返す。


「真っ暗だから何か明かりをください」

 私は言った。

 

「そうか、お前は夜目がきかなかったな……だがそこの術印書を使えば良かろう?」

 ヤマトは私の巾着袋を指差す。


「おー、そうだった」

 忘れてた、私には魔法道具があった。


「火の術印を使えば簡単な灯りが作れる」

「あー、そうだった」

 確か、火はトカゲさんだ。

 火の術印書にはトカゲさんが入っている。イメージ的にはポケットなモンスターさんの、小さな火トカゲさんだ。

 進化すると怪獣になって可愛くなくなるから、Bボタンを押したい。

 

 よし! じゃあ改めて出発。

 暗闇の中にゴーです!

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