第21話 敵なんていない

「ここ、いいね!」

 私はこの谷が気に入った!

 なんせ襲ってくる敵がいない。

 ゆっくり散歩できるから良い感じです。


「そうか、っとぉ!」

 ……ヤマトは相変わらず腕を降ってるけど。まったく男の子だなぁ。


 私は準備体操には飽きた。

 

 暇だからカンザシを外してみた。

 うん! やっぱりこのカンザシは良い!

 お洒落な感じだ。赤い彼岸花のお色も、鮮やかで素敵。

 

「むふふー」

 思えば男の人からプレゼントなんて、お父さんを除けば初めてだ。


 うん、ヤマトにはもっと貢がせなくては!


 ん? そう言えばこの服も、術印書もみんなヤマトもちだったかな? まぁ良いか、苦しゅうないぞ、ヤマト。


「ふんふふーん、ふんふふーん」

 私は鼻歌を歌う。


「フンッ! フンッ! セヤァ!」

 ヤマトはまだ刀を振ってる。

 まったくしょうがないなぁ。

 まあ、そういう子供っぽい所もカワイイのかもしれない。 

 いい気分です。

 さっきまでは危ない鳥さんが沢山いて、ヤバかった。

 もう二度とこんなとこ来るもんか、ヤマトのアホと思った。

 でもココには敵なんかいない!

「フッフー。ヤホーイ」

 スキップしてみる。


 ____カタ、カタカタ


 ん? なんか、変な音がする。

 

「げぇ!?」

 音の方を見ると、ガイコツさんが二人カタカタとしていた。


「やまとぉー! ヤーマートー!?」

「フンッ! っとなんだ、ヒナミ?」

「何だじゃないでしょ、敵、敵! ほらぁ、ガイコツさんだよ! 何とかして!」

 

「……放っておけ」

 ヤマトはガイコツさんをチラリと見て言う。

「へぇ!? 何いってんの! 来てる来てるってほら、カタカタ来てる!」

「低級どもが、からかっているだけだ。害はない」

「害はないって! え、ウソ?」

「脆い骨など操ってもどうにもならんだろう? 力なきモノのイタズラだ。わざわざ相手をするのも馬鹿らしい」


 ____カタ、カタカタ。 カタ、カタ。

 

 ヤマトはそう言うけど。

 ガイコツさんが二人ゆらり、ゆらりとやって来ます。

 ガイコツなんて、学校の理科室でしか見たことない。学校のヤツは不気味だけと、まあ作り物かなぁと感じるからそんなに怖くない。

 でも、目の前のはすごくリアル。

 正直めっちゃ怖いです!

 

 じっと見てたら、ガイコツさんの目の穴にボォと火が灯る。


「ヤマトォ!」

 もう無理、私はヤマトの腰にしがみつく。

 

「……何故そんな低級を怖がる?」

「怖いもんは怖いわ! アホアホ、ヤマトのアホ! 早く何とかしてぇえ」

「お、おい? ヒナミ泣いているのか?」

「ナイデナイ!」 

「泣いておるではないか。……おい。おい、俺の着物で鼻を拭くな!」


 ____すびずびー。

 

「ええい! 仕方ない」

 ヤマトが腕を振るった。

 刀がガイコツさんたちの上の方を切った。


 ____カラン、カラン。


 お? ガイコツさんが転がった。 

 ジー、と様子をみる。

 お体に傷は無いようだけど………うん! 

動かない。お亡くなりになってる。


「やったぁ! もう、ヤマトったらできるなら早くやってよね。怖かったんだから」

「……そうか」

「でもすごいねー、何で倒せたの?」

「……何がだ?」

「いやーだからね。ガイコツさんに傷はないでしょう? どうやって倒したのかなーって思って。……あ! 気とか! なんか気的なもので倒したの?」

 私は疑問に思った事を聞く。


「いや、単に骨を動かしている死霊を切っただけだ」

「んー、そなの?」

「そうだ」

「あ! そうだ。ところでシリョウって何ですか?」

 

「………………気にするな」


 むー。何故かヤマトは教えてくれない。


 

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