第19話 不在証明

 なかなかでかい門ですなぁ。

 私の前には、試練の門とやらがある。

 形は、神社の鳥居に木製の扉が付いてる感じ。

 でも、でかい。

 フツーの鳥居の二倍くらいはある。

 ちなみに門は開いてる。 


「な、に? 何故門が開いている?」

 ヤマトが呟く。

「ねーねー、これって閉まってるなの? あ! 私、今上手いこと言った!? 門だけに門だけに!」

 私はワクワクしながらヤマトの反応を伺った。

「……ヒナミ、お前はこの試練を突破していたのか?」

 なんと、無視された。 

 私の渾身のギャグが……。

「おい、ヒナミ聞いているのか?」

「ヤマトの方こそ聞いてたのぉ! 今上手いこと言ったのに! 門だけに門だけに!」

「何を訳のわからんことを言っている?」

 ヤマトはアホだった。

 ちくしょう、せっかくいい感じだったのに。門を見て、自然に出てきたナイスな一言だったのに。


「おい、どうなのだ? ヒナミはここを突破したのか?」

「知らない!」

 私は腹が立った。

「おい! 知らないとは何事か……おい?」

「知らないったら、知らない!」

 私はてってーこうせんの構えです。


「……おいヒナミ。何を腹を立てている?」

「私のギャグが……」

「……ぎゃぐとは何だ?」

「面白い話!」

「ほう? で……何に腹を立てている?」

「ヤマトに!」

「んむ、俺にか、俺の何が悪かった?」

「私が門の話をしたのに……」

 私は怒っている。アホなヤマトにもわかるように、頬をぷくっと脹らませた。


「なるほど、門の話か。俺も丁度その話を聞きたいと思っていた」

「……本当に?」

「ああ」

「じゃあ聞いて! あの門ね~いつも開いてるもんなの?」

「いや、開いてない」

 ヤマトは私をじっと見てきた。


「んあ? そうなの?」

「そうだ。この門は試練を突破していない者を拒む、当然普段は閉まっている」

「ふーん」

「だから聞いている。ヒナミはここを通ったことはあるのか? 門番の姿は何であった?」 

「だからぁ私はここ初めてだって! 門番も見たこともないし」


「…………そうか」

 ヤマトは、何か考え込んでいるみたいだ。

 アホは考えたって良いアイデアは浮かばないと聞いたことがある。

 つまり、ヤマトは無駄なことをしている。

 

「……あほーあほー」

 暇だったので、私は小声でヤマトをバカにしてみた。

「……ヒナミ」 

「にゃ!?」

 ヤバい、怒られる。

 私が逃げたそうとすると、ぐいっと襟首を掴まれた。

「ぐぇえ」


「……まあ良い。門番がいないことは良いことだ。進むぞ」

 お、ラッキー。怒られなかった。

「はーい」


 二人で進む。

 門を潜る時、古い木の香りを感じた。

 おじいちゃんの家の臭いに似ている。

 門の奥から風が、吹いている。

 ちょっと寒い。


「ヒナミ、次だ」

「次?」 

「幸いにも門番は出なかった、次の階層に進む」

 ヤマトは前をまっすぐ見ている。

「次は何がいるの……怖いのはやだよ?」

「そうか」

「ねーねーねー、次は何?」


 しばらくして、ヤマトは答えた。

「死霊の谷だ」

「しりょうって何?」

「……あまり気にするな」


 なんだか気になります。




 

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