第18話 門

 本当に大きい。

 ああ、もうだめだ。

「おかーさん、おとーさん。先立つふこーをお許しください」

 私は祈った。

 だってこんなの勝てるわけない。

 私は目の前の恐竜を見て思った。

 でっかいってことは、すごく強いと!


 ウロコも硬そうだし、ヤマトが刀で攻撃しても効きそうにない。

 そもそも、恐竜でも大人しそうなヤツなら良かったのに。

 なんでよりによってジュラシックな映画にででくる、肉食のデカイヤツが。

 

 まあ、この大きさなら一口で私はヤられる。痛くなさそうなのが救いです。

 私はもう、諦めた。ゆっくり目を閉じる。

 そして、ヤマトの着物を握り締めた。

 ヤマトが私を置いて逃げないように。

 

 ____ズシン、ズシン、ズシン。

 

 目を閉じてても地響きは聞こえる。

 ヤマトは動かない。

 くそう、こいつと一緒に死ぬのかぁ。

 ……まあ一人きりで死ぬよりは良いかな?


 ____ズシン、ズシン、……ドォゴオオオオオオォン!!


「わぁ!? 死んだ? 私死んだ?!」

「落ち着け」

「へ?」

 ん? 死んでない?


「運が良かったな、御前様の加護かもしれん」


 んん? 

 私は目を開けた。

 あのでっかいトカゲが倒れて、口から泡を吹いてる。体はびくんびくんしてる。


「え、何? どうなったの?」

「メスだったようだな」

「……え、何が」

「あの狂鳥が、だ」

「んんん~?」

 え、もしかしてもしかして。あれって女の子だから、変態やまとの目にやられたの?

「って! あんなでっかいのにも効くの!?」

「まあな、効く」

 ヤマトは当然のように言う。

「どんだけ! ヤマトの目ってどんだけ!?」

 

「なに、運が良かった。オスなら危ういところだ。これも御前様のご加護の賜物だな」

「御前様? 白いカラスさんのこと?」

「……ああ。なぜ、貴様のような無礼者に御目を掛けられるのか……」

 ヤマトは空を見ながら呟く。

 見てるとなんだか腹が立った。


「おりゃあ!」

 スキアリだから蹴ってみた。すねだ、足のすねを狙った。


 ____ガス


「いたぁあ!?」

「む、何をしているヒナミ?」

「い、たぁい!」

 す、すごく硬い! 何でこんなに?

 ここ蹴られたらぎゃーー!? ってなる筈なのに。蹴りを食らわせた私のほうが痛い。


「さあ、遊んでないで行くぞ」

「ちょ、ちょっと待って。何処に行くの?」


「門だ」


 




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