第2話 恋バナ



「あー!久しぶり!」

「もう大丈夫なの?」

いろんな声が私の前を飛び交う。

家庭の事情で年末から学校を休んでいた私が登校するのは冬休みも挟んでしまったため約1ヶ月ぶりになる。

やはり1ヶ月ぶりにもなると、たとえ周りのみんなが声をかけてくれようにも不安は拭いきれないでいた。



「「おかえり!」」

声とともに突然後ろに衝撃が走る。

後ろから抱きついてきた、もとい後ろから突撃してきたのは私の特に仲のいい友人のうちの1人、晴香。

そんな私たちの様子をやれやれ…と生暖かく見守る、こちらもまた特に仲のいい友人のうちの1人、恵理。

熱くも冷めてもいない、関心あるようで無関心のような、近すぎず遠すぎずの2人との関係は心地がいい。優しくもあり、でも遠慮なく苦言をくれる時もある。だからこそ2人といるのは落ち着ける。信頼できる。


「ただいま」

そう言う私にさらに晴香は抱きついてきた。その晴香をなだめる恵理。1ヶ月ぶりにもかかわらず、いつもの光景が広がっていた。



昼休みになった。

恵理の机に集まりお弁当を広げる。

またや突然晴香が突撃してくる。

「ねぇ!聞いてよ〜!りょうくんがね、」

また始まった。おそらく恵理も同じようなことを思っただろう。晴香の恋バナは始まると止まらない。幼なじみで彼氏である良一くんの話は耳タコで、本人とはほとんど面識がないのに私も恵理もまるでよく知る人のような錯覚に襲われるほどだ。

割と頻繁に私たちの会話は恋バナで占められる。大抵は晴香のせいだ。しかし私は専ら聞く専門。高校生になるまでさほど恋愛に興味がなかった私は、恋バナが嫌いなわけではもちろんないが自分のことを話すのは苦手だった。だから2人は知らない。晴香と恵理は私の好きな人について知らなかった。


「あ、そういえば…」

ふと思い出したかのように恵理が口を開く。私は嫌な予感がした。

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