第12話

 石見詩織は目覚めた。

 ぬるく温まった羽毛布団に包まれ、まどろみの中にいた。巣鴨で飲んだ後、マンションに帰りしな、コンビニで安物のスパークリングワインを買った。イチゴソーダのような味のするアルコール飲料だった。そこそこの度数はあるらしく、半分ほど空けると部屋での記憶が少し曖昧になった。

 鏡台に映るダイニングテーブルには、ボトルと飲み掛けのグラスが見えた。自分の様子を確認すると、ちゃんとシャワーを浴びており、パジャマにも着替えていた。

 酔っ払っても私、おりこうさんだわね。

 詩織はぼんやりした頭を抱え、皮肉めいた笑みを浮かべた。

 意外にも兄の夢は見なかった。

 代わりに、小学校の水泳大会で一等になった時のことを思い出した。あの爽やかな夏の日差しと、高い青空が手に取るようだった。

 何故だろう? これって逃避? 

 詩織は頭を振ると、しゃきっとしないままベッドから抜け出した。

 彼女の身に着けたパジャマはピンクの小花柄で、日中の出で立ちとは随分と様子が違っていた。

 詩織の部屋は採光の良い間取りで、照明がなくとも十分に明るかった。

 ダイニングテーブルに掛かるクロスは淡い黄色のチェックで、透明なカットグラスにコスモスが一輪挿さっている。窓には星座をモチーフにしたレース編みのカーテンが二重に下がり、やわらかい朝の日差しが差し込んでいた。壁際にはベージュの合成皮革製ソファ。白と黒のウサギに似た大きなぬいぐるみが二匹、寄り添っていた。フランスの絵本に出てくるパリジャン、パリジェンヌのキャラクターである。名をリサとガスパールという。詩織はリサの頭を撫でると小さく微笑んで、おはようと呟いた。

 彼女の部屋を端的に評するならば、少女趣味という部類だろう。

 人は見掛けによらぬとは、良く言ったものだ。

 この部屋こそ、詩織のたった一つの砦なのである。誰もここに来た者はいない。友人も、恋人も、育ての親の叔父夫婦も。まして庸介など論外だった。

 ここは彼女の秘められた本音。閉じた小宇宙だった。

 しかし、いつの日か、ここを出て行くことになるだろう。それが間近に近付いていることも気付いていた。そう遠くはない。身も心も成熟するという日。実際のところ、その日が来ても、彼女は何も感じはしまい。それが今は寂しくもあり、恐ろしい気さえした。

 庸介の死は、全ての前触れなのだろうか。

 人生は巧みに仕組まれたボードゲームのように、静かに時を刻んでいる。

 詩織は葬儀の翌日ということもあり、一日代休をとっていた。のんびり家で過ごそう、そう決めたのだった。

 歯を磨き、顔を洗う。細身のジーンズにTシャツ、上にMA1ジャンパーを羽織ると、詩織はマンション一階に郵便物を取りに降りた。

 この薄暗い日中の世界も、エレベーターの照明だけは通電していた。密室犯罪はいつも暗がりから始まる。この危険な闇から、私たちを守ってくれる人たちもいるのだけれど………。

 詩織は昨日出会った(夜の盾)特別司法執行職員、多喜修一のことを思った。

 身内を処分した人物との出会いは戸惑いに始まったが、結果的に詩織は多喜修一を気に入っていた。今まで出会ったことのないタイプの男である。見掛けはちょっと怖面だが、話し上手で笑顔がチャーミングだった。初対面の人間には守りの硬い自分が、意外にも素直だったことに正直驚いている。まあ、向こうは話を聞き出す専門家なのだから、当然といえばそうなのだが。

 多喜は兄の死に、何か事件性を見出しているようだった。幾分、誇大妄想の気もあり、しかしながら興味深い仮説だと詩織も考えていた。出来れば協力してあげたい。それを差し置いても、詩織は多喜にまた会いたいと願った。

 多喜がハンサムで、素敵なおじさまだから? 

 一瞬だが、詩織は多喜に抱かれる様を想像して、顔を赤らめた。

 すぐにその考えを頭から振り払った。十ほども年の違う男と釣り合うわけがない。私は今、一人になった現実に怯えていて、頼れる肩が欲しいだけ。きっとそうだ。

 下のエントランスに着くと、百戸近く並んだ個人用ポストから自分のものを見付け、施錠を外して中身を取り出した。慣例的に配達される新聞に請求書、後は雑多なダイレクトメール。とりあえずそれをつかんだまま、再びエレベーターに戻った。

 八階の部屋に戻り、新聞の一面を一瞥するとダイニングテーブルの上に置いた。お湯を沸かしてカモミールティーの準備を整える。

 詩織はゴミ箱を引き寄せ、椅子に座ると、各種郵便物の仕分けを始めた。

 ブティックからのDM。請求書、請求書、化粧品の無料お試しサンプル。ちらりと内容を確認して試供品だけ切り取った。ピザ屋のクーポン。請求書、請求書、新興宗教勧誘のビラ、大学時代の友人から結婚式二次会のお誘い。まあ、羨ましいこと。請求書、請求書、………それから封書。

 詩織は、はたと手を止めた。

 このネット社会で、手紙をもらうことは稀だった。大抵の情報はデータ通信環境に収まってしまうからだ。現存する郵便システムは、通販商品の宅配のために残っているようなものである。それも民間の宅配業者に押されて影が薄い。郵政民営化が今世紀初頭にこの国を賑わせたことは学校で習った。しかしながら、さしたる効果を挙げたようには見えない。

 詩織は差出人を見て、眉をひそめた。

 差出人は石見詩織。自分だった。

 このマンションの住所が記されていた。宛先は石見庸介。兄の住所だ。しかも現住所ではなく、五年も前に住んでいた場所が記載されていた。

 つまりこの封筒は、届け先不明で詩織の元へ舞い戻ってきたというわけだ。詩織は首を傾げた。

 何これ? 

 もちろん詩織に覚えはない。

 しかしながらその筆跡から、たちどころに嫌疑の人物が浮かび上がった。癖の強い、右上がりの嫌らしい悪筆。

 兄、庸介である。

 たちまち詩織の中に、警戒と拒絶反応が蘇ってくる。

 死んでもまだ、嫌がらせなの? 

 詩織は封筒を見詰めたまま、溜息を吐いた。

 一瞬、このまま破り捨ててしまおうとも考えたが、多喜の顔がちらりと浮かんだ。そうだった。何か事件と繋がりがあるかもしれない。これは多喜に知らせるべきものだった。

 詩織はまず、気持ちを落ち着かせようと、カモミールティーを煎れた。独特の匂いにリラックス効果があると言われているが、………今の詩織に、それは期待出来なかった。しかも、そのまずいことといったら。もともと美味いと思って飲んだことなどなかったが、改めて意識すると余計にまずい。

 カップを手に消印を確かめると、渋谷38.10.04 amとなっていた。渋谷から十月四日の午前中。例の事件当日の午前中ということだ。

 詩織は嫌な胸騒ぎがした。

 封筒を振ってみると、中で薄くて固いプレート状のものがカサカサ動くのがわかった。詩織はキッチンの引き出しから、ペーパーナイフを取り出し、慎重に開封した。

 開いて下に向けると、小さな金属片が滑り落ちた。

 それに、巻き三ツ折にされた便箋が一枚。

 いや、便箋と言えるようなものではない。庸介らしい、素っ気ない安物のレポート用紙だった。

 金属片は厚さ二ミリほどの銀色のアルミ合金に、皿ネジ状のディンプルが彫り込まれている。掴みの部分は黒いプラスチックの滑り止めが付いており、その先が鎖に繋がり、番号付きタグがぶら下がっていた。

 表記は(CVP-Q144-6024A)。

 恐らく、どこか連番式ロッカーの鍵だろう。

 詩織は鍵に手を出し掛け、はたと思い留まった。

 やっぱり指紋とか付けちゃうと、まずいかしらね? 

 詩織は鏡台に向かうと、ヘアカラー用の手袋を取り出し、両手にはめると慎重にディンプルキーをつまみ上げた。おもむろに封筒へ戻す。

 詩織は一つ溜息を吐き、巻き三ツ折の便箋に注目した。

 庸介の触れたであろうレポート用紙。

 そう考えるだけで、急に潔癖性になったような、激しい抵抗感を感じた。

 しかめ面になるのを意識した。詩織は及び腰のまま、渋々、便箋を広げてみた。  B4サイズ、7ミリ×三〇行の平凡な再生紙だった。

 その二行分を一列に見立て、金釘流の癖文字が、ボールペンの強い筆圧で書き込まれている。染み込んだ油性インクが用紙をごわつかせ、乾かぬ間にこすれた痕が、産毛の如く、四方に流れていた。

 手紙は、拝啓、でもなく、お元気? でもない。いきなりの書き出しだった。


【mandara123yoo_sk】


 なんだろう? 何かのパスワード? 

文章は簡潔だった。


(近所のインターネットカフェを使っている。俺がパソコンを持たないのは知ってるよな? 【クラウドルーム88】で検索。……… Yoo_sk)


 それだけだった。

 兄の声が聞こえてきそうだ。詩織は憂鬱な気分になった。

 Yoo_skは、庸介のよく使うハンドルネームだ。これで書いた張本人だけは確定した。しかし、内容の方はさっぱり。そもそも庸介の文章は、理系人間的に簡潔なものだったが、これはもはや簡潔さを通り越していた。

 意味不明である。

 詩織は、まずいことも忘れて、カモミールティーを啜った。

 庸介は橘生化学研究所に入所して、すぐにパソコンを捨てた。そのことは聞いている。PTSD(心的外傷後ストレス障害)プロテクトの埋設装置のせいで、仕事の持ち帰りは、意味をなさないからだ。会社以外の環境で、プロジェクトに関するいかなる情報も外部化することは出来なかった。考える事は出来ても、記録や発言、そうした全てが、ストレスホルモンによる大脳への重度後遺症の危険を孕んでいるからだ。

 詩織はそれを初めて聞いた時、よくもまあ、そんな契約を交わすものだと呆れたのを覚えている。支払いがいいのは確かだが、人として如何なものか? 

 詩織はメモ帳を用意して【mandara123yoo_sk】と、【クラウドルーム88】を書き取ると、レポート用紙を畳んで封筒に戻した。

 詩織は、お茶を飲み下すと、奥のパソコン部屋に移動して、コンピュータを起動させた。詩織のコンピュータは、アンティークのアップル社製筐体を復元させた花柄iMacモデルである。階層状に重ねられた半透明のアクリル素材に花模様がプリントされ、レイヤードな奥行きを演出している。詩織のこだわりの一品だった。

 詩織はまず、ブラウジングソフトを立ち上げると、【cloud computing server】の項目を検索した。数百を越えるサーバサービスのURLが、ずらりと現れた。更に項目を入れ、絞り込みを掛ける。【クラウドルーム88】を検索。

 ヒットした。

 ページトップが現れた。


(ようこそ、クラウドルーム88へ)


 細い明朝体で記された、お洒落なロゴタイプがフェードインすると、夏の青空に積乱雲がゆっくりと成長する様が映る。詩織はじっと待ったが、そのうちに散文詩を模したコメントがゆっくり現れては消えるという演出が始まったので、面倒になってスキップさせた。

 中央二列に各種サービスがぎっしりと並び、それを囲むように両脇に一センチ刻みの広告スペースが連なった。

 クラウドサービスシステムは、民間企業連合が提供する、クラウドコンピューティング処理形態のサービスソフトウェアエリアである。辞書機能に翻訳、各種マップ、ルート検索なと、様々な機能がブラウジングソフト越しに無償提供される。もちろんサーバのスペースを借りて、個人的なストレージにすることも可能である。

 さて、庸介が利用していたのは、いかなるサービスだろう。

 正直、詩織にはどうでもいいことだった。庸介が関心持っていたことなど、知りたくもない。しかし、これは多喜のための調査。そう思う事で気持ちを奮い立たせた。

 アカウント【mandara123yoo_sk】に絞り込んでみる。

 検索ウィンドウに表題を入れ、エンターすると、メニューの一つが残像を描いてポップアップした。


(My office)


 なるほど。庸介が使っていたのはレンタルオフィスと呼ばれるものだ。再度アカウントを聞いてくるので、ウィンドウに【mandara123yoo_sk】を打ち込んだ。


(おはようございます。石見庸介様)


 詩織のコンピュータデスクトップに、石見庸介の登録エリアが展開した。

 インターフェイスは、さほど洗練されたものではなく、地味な作りだった。黒のフォーマットにライトグレーで項目が機械的に羅列してある。ウィンドウ左隅に見える、最終接続記録は九月三十日。

 詩織は項目から【日記】をクリックしてみた。


(使用記録はございません)


 PTSDプロテクトの効果は抜群のようだ。記録メディアを開いた形跡すらない。【写真】や、【音楽】など、他の記録フォルダも開いてみたが、ここに庸介が残した情報は何もなかった。

 記録、ゼロ。

 詩織は椅子の背に持たれて、人差し指でテーブルの表面を叩いた。

 となると、庸介は私に何を見せたかったのか? 

 同封されていた鍵も気になるが、まずは今、目の前にあるこのホームページにも何か言いたい事があるはずた。

 元来、話し下手な庸介である。まるでかゆいところに手が届かなかった。

 詩織は苛々してきて、急に煙草が吸いたくなった。

 ダイニングに放り出したままのトートバッグからパッケージを掴むと、サンダルを履いてベランダに出た。部屋がヤニ臭くなるのはたまらないし、それに精密機械類にも影響する。

 外に出ると、東の空に切れた雲間から、清々しい青空が覗いていた。

 海風が強かった。分厚いMA1ジャンパー越しに寒気が染み込んでくる。ここは築地の三丁目で、職場に隣接したマンション群に位置していた。眺めは最高だった。南西方向に築地市場跡地。その先に浜離宮庭園が見える。詩織はジャンパーを風よけにして、シガレットに火を点けた。深々と吸い込んで、溜息混じりに吐き出す。

 死んでも面倒な奴。

 相変わらず兄、庸介の影は、詩織を捉えて離さない。

 これも何かの星回りかしらね? 

 煙を吹かしながら、詩織は爪に残ったマニキュアを気にした。

 ユリカモメの一群が南東に旋回する様を眺めながら、彼女はふと思い付いた。  (My office)からのネットワーク検索記録は残ってないかしら? 

 そうだ。その手がある。

 詩織は閃いて、エチケット灰皿に吸いさしをねじ込むと、急いで部屋に戻った。  (My office)の項目から【Web】をクリックし、URL検索履歴を表示させた。


【038.9/30 thu.検索履歴】

(レトロウイルスベクター)

(ヘイフリック限界を越えて)

(テロメア研究学会二〇二五年夏期報告レポート)

(オレモア症候群)

(オレモア症発症のメカニズム)

(遺伝病理学学会オレモア症候群レポート)

(血友病という考え方)

(持株会社)

(O&Iホールディングス)

(生化学系参画企業)………。


 詩織は残された二ヶ月分の履歴を調べてみた。

 庸介の関心は主に、オレモア症とO&Iホールディングスに偏っていた。興味の対象をサーフィンして、こうした記録が残ることは多々あるが、繰り返し、繰り返し限定されたキーワードを検索するには、それなりにわけがあるものだ。

 庸介の関心は二つ。

 オレモア症と、O&Iホールディングスだ。

 何を追い掛けていたのか? 

 お得意のいつもの妄想癖だろうか? 

 関連が良くわからない。最新の科学トピックにも頻繁に触れている。

 これは仕事上の関連事項かもしれない。特にヘイフリック限界、テロメアは繰り返し表れるキーワードだ。

 幾つか、ホームページを流し読みすると、古い記事の採録があった。 (テロメア研究学会二〇二五年夏期報告レポート)によれば、スタンフォード大学研究チームがリング状人工DNAスタンフォード7型を発表、とあった。

 概要すると、細胞の老化限界についての研究だ。

 細胞にはヘイフリック限界というものがある。細胞分裂の限界回数のことだ。  一個の細胞が分裂出来る回数は、最大で六〇回程度だと言われている。これはテロメアが細胞分裂の際、完全に複製されないためだ。

 線状ゲノムDNAの末端部分に、テロメアという構造体がある。染色体末端を保護する役目を担っている。

 細胞は分裂をする際、必ずDNAの複製を行い、遺伝情報を二倍にコピーしてから、これを一つずつ娘細胞に受け渡していく。このDNAの複製の際、テロメアDNAの末端部分は完全に複製されず、すり減って行く。これが最終的な短小化に到達すると細胞分裂の停止、アポトーシスを迎えるわけだ。

 この回数券のような働きをするテロメアを、酵素テロメラーゼにより延長させることが出来る。この方法でヘイフリック限界を超えることは、すなわち(癌化)である。細胞の癌化により、テロメアの長さが維持され、永続的な分裂能を獲得する。

 二〇〇三年にスタンフォード大学を中心とする研究チームが発表した、リング状人工DNAを組み込むと、このDNAが鋳型のように働き、テロメアを構成する塩基配列を複写して付け加え、テロメアを再生する。

 その二十二年後。それがこの記事の現在にあたる。記事によると、改良を重ねた7型では、テロメア複製の加減制御が可能になったらしい。癌治療の画期的な抑止力になることが期待されている、とあった。

 このホームページの記述によれば、分化細胞のアポトーシスを制御する画期的な基礎研究は十三年も前にアメリカで開発されていたらしい。だが現在、医療の現場にそうした治療法は存在しない。

 応用研究の遅れ、というものだろうか。

 そこで詩織は庸介の言葉を思い出していた。昨日、多喜と話していた時に、ふいに思い出した言葉だ。

(人工DNAの生化学的応用)

 庸介は確か、そんなことを言っていた。

橘生化学研究所で、このスタンフォード7型という人工DNAのさらなる応用研究がなされていたのか? それについてのヒントはない。加えてオレモア症への執拗なリサーチも気になる。オレモア症の新しい免疫治療の研究でも始めていたのだろうか。

 疑問は他にもあった。経済など、まるで関心のなかった庸介が、O&Iホールディングスの業績、グループ概要、主要株主、参画企業などを調べているのだ。以前の庸介なら、絶対にあり得ない行動だ。

 株のトレードでも始める気だったか? 

 いやいや、人一倍臆病な庸介に、マネーゲームなどあり得ない。

 細胞再生技術とオレモア症。

 そしてO&Iホールディングス。

 何を知ろうとした? いや、何を知ってしまった? 

 庸介の残した痕は、未だ形にならぬ影のままだった。


 詩織は多喜の言う事件性、という言葉にうずきを感じ始めていた。一面的な事実の背後に、複雑で言葉を持たぬ、不可解な温床が横たわっている。

 鳩尾に嫌なしこりを感じた。

 詩織は恐ろしくなって椅子の上で膝を抱え、小さくなった。

 握りしめた両手が白く血の気を失っていく。


 詩織は、何も語りかけてこないホームページの、冷たいインターフェイスをじっと見詰めていた。

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