あとがき 後編(11~20番まで)
※こちらは、『旅人は今日も嘯く』のあとがき後編部分となります。
11.屑星に願う
こちらの詩も『帰り道』がテーマとなっております。夜遅くに一人で帰るのって、慣れていてもやっぱり心細いものです。
この詩を書いた時は、特に自分に対する嫌悪感が強い時期でした。
自分がやっていることは正しいのだろうかと、いつにもまして悩みます。
暗い夜道の中、足を何度も止めて。
“屑星”という表記にしたのにも少々こだわりが。
「星にお願い事をする」なんて言いますが、そういうときの星ってこうキラキラと希望に満ち溢れているものというイメージがあります。
しかし、「くたびれ切った自分が見たって、所詮霞んだ光に過ぎないんじゃないか?」という疑問が浮かび上がってきました。
そういう点も踏まえて、星からより小さい星屑に変更、その後にさらに頼りない存在として屑星という表記に変えました。
“眼には…”のフレーズにも結構悩んだ詩でしたが、お気に入りの一つです。
12.車窓の夢
こちらは父のことを思い浮かべて書いたものです。
実をいうと、私の家庭はそんなに暖かいものではなくて、自由に発言できる空気というのがだいぶ枯渇した、冷え切った環境になっています。
「昔はああだったのに」と、心の中で何度呟いたことか。
どうやら私は父親似らしく、やることなすことがシンクロします。
やりたいこととか、興味を持つものも大体同じなようです。
“敢えて今も未完成のまま”なのも、これを思い出として受け止めてはいけないんだと思っているからですね。
こんな現実でも抗わないと。
13.焦がれ
この詩は植○真梨恵の『ソ○ジー』という曲だったり、コ○クロの曲だったり、様々な曲からインスピレーションを受けています。
朝早く起きて、熱いシャワーを浴びて、モクモクとでる白い湯気が朝の日差しを反射して…。
心が疲弊している時は、何をやっても満たされないような感覚になります。
どれだけ熱いシャワーを浴びても体は温まらないし、どれだけ優しいことばをもらっても心は冷たいばかりです。
「この冷たさをどうにかしてほしい」と、もがき続けます。
でも、ずっとそれではいけない。
心配してくれる人っていうのは意外とたくさんいるものです。
そんな優しい人たちに迷惑をかけたくなくて、精一杯笑います。
かつて勇気づけてくれたあの黄と青を思い浮かべながら。
自分は印象派画家が好きで、一番はモネなのですがゴッホも好きです。
数年前にゴッホの絵が日本に数多く来た時に、私は初めてあの向日葵を見ました。
「なるほどこれは、胸やけを起こしそうなほどに、何かを押し付けてくる」
14.掴まれた手、相反する何か
ちょっと精神疲弊から立ちなおり始めたときの詩です。
夏も近づいたころだからか、初夏を思わせる描写が多めです。
精神疲弊している時に何がつらいかというと、例えば息を吸うこととか、冷たさに耐えなければならないことでしょうか。
どれもこれも、自分の体を突き刺すほどに痛く感じます。
そういう痛みから逃れたくて、「もういっそのこと」なんて思ってしまうこともしばしば。
駄目だと思っていても、人間追い込まれると何を考えるかわかりません。
この詩は飛び降りに少しかけています。
それっぽいところを入れているのでわかりやすかったとは思いますが。
「もう終わりにしよう」と思った時、止めてくれた人の手はとても暖かくて、「これじゃダメなんだな」と再確認させられます。
生きるってのは、そういうことの繰り返しなのかも。
この詩に関しては、所謂サビに当たる部分である“今思い出したんだ…”のフレーズを先に書いて、前後に分をつなげた形になっています。
ふっと思いついた言葉でも、大切な文章になることもしばしば。
15.さよならアイデンティティ
アイデンティティという言葉を知ったのは、ゴー○トノートの『I、○、会い』がきっかけでした。
その当時の銀○のエンディングテーマになっていましたね。
簡単に言うと自己同一性とかいう言葉です。
ちなみに、はじめの方は『屑星に願う』を踏まえた文章で、途中には梶井基次郎さんの『檸檬』をもとにした描写があります。
どうしようもない中ですがってみたいと思う気持ちと、不吉な塊を背負っているような感覚と…。
今まで培ってきたものが全部自分なら、それを全部無くしてしまえば、今のこの現状も不幸だと思わないのでしょうか。
それが本当かどうかわからないまま、ゆっくりと眠りにつくわけです。
16.蛍
投稿した季節的に少し違和感を感じた人もいるかもしれません。
この詩自体は4月くらいに書いていたのですが、メモした紙をなくしてしまい存在自体を忘れていたので遅くに掲載することになりました。
幼いころに毎年蛍を見に言っていたのですが、その時の思い出みたいなものを書き綴っています。
子供の頃って、夜暗くなって外にでると妙にテンションが上がりますよね(笑)
でも、その妙なテンションを静まらせてしまうくらい、蛍の光って不思議だったんです。
17.さよならまたね
この詩は、短編集『プロローグは誰にだって』の方にのせている『僕は終わりを知っている』と対になっている詩です。
短編の方とは違い、なんとなく可能性を信じているような希望感があります。
実をいうと短編集のほうは、私の実体験をもとにして書いている話。
その時に味わったよくわからない気持ちを詩にのせてみたわけです。
「もしかしたら、明日は会えないのかもしれない」と一緒に帰る友達不思議な気持ちを抱いて帰ったあの日、私はしっかりと「さよなら」といえませんでした。
だって、言ってしまえば本当に終わってしまうんじゃないかと思ったのだから。
18.自己解釈
個人的にこの詩作手帳中で、一番タイトルがつけにくいと感じた詩でした。
日ごろ抽象的なものばかりを取り扱って詩を書いているので、はじめに明確な主題を見出しておかないと、迷子になってしまうのです。
この詩は、そんな迷子の一つですね。
こちらも朝といえばシャワーといわんばかりに、同じような描写が出てきています。
違う点といえば、不安におびえているわけではなく、ただ単に「幸せってなんだっけ」と考えているところ。
みなさんも考えたことはありませんか?
自分にとっての“幸せ”とは。
でも、考えているうちにどうでもよくなってしまう。
それは、満たされていない時よりも、今は十分であって、それだけで生きていける理由になるから。
19.願い事を一つしました
こちらも恋の詩。
主題もなんとなく既視感を覚える「僕っていったい何なの?」というもがきです。
それに付け加えて、自分の弱さを認める点や、相手を傷つけたくないという思いを含んでいます。
詩を書くとどうしても、自分の感覚がより濃く出てしまいます。
珍しく明確なハッピーエンドを付けた詩でした。
いや、詩というよりかは物語に近いのかも。
あときっちり韻を踏んでいるので、口ずさみやすいかもしれません。
自分の中では好きな方に入ります。
20.旅する理由
何故“旅”にこだわるのかについては、前編の方で少し触れていますが、ここでの旅する理由というのは「自分が安らげる場所を探すため」というものでした。
人生というのはよく旅にたとえられます。
私もその例えが好きで、言ってみれば私も今旅の途中のようなものです。
そんな旅の中でたくさんの人と出会い、分かれます。
良い人もいれば悪い人もいるし、合う人もいれば合わない人もいる。
でも、最終的に最後まで連絡を取り合う人、つながりを切れない人は、自分にとって大切で欠かせない人たちなんでしょう。
人生の旅というのは、そういう人たちを探す旅。
そして、自分が年老いていく中でそうやってつながりを切れなかった人たちが集まっていけば、きっと自分自身が“安らげる場所”になるんじゃないかと思います。
ここであげる場所というのは、人として休める場所ではなく、魂的なものとして収まれる肉体なのかもしれません。
・最後に
長々とお付き合いありがとうございます。
この詩作手帳自体、突飛な考えでやり始めたことでしたのでなかなかうまくいかない点もありましたが、一応完結に持って行けたので一安心です。
今後は、詩の構成の仕方や、文の配置の仕方など、より良いう方向に持って行けるように試行錯誤を重ねたうえで、また新しい手帳に描きこんでいけたらなと思います。
また、あとがきも一気に公開するのはあれなので、今後はこまごまと公開していけたらなと思っています。
今後ともよろしくお願いします。
それでは、また別の旅路にてお会いできる日を夢見て。
【詩作手帳】旅人は今日も嘯く 雨旅玄夜(AmatabiKuroya) @travelerk1218
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