四次元の世界(小4)
私が小学4年生の頃の出来事。
ある日、放課後に教室に残っていたら、私を含め女子4人だけになった。
「ねぇねぇ。四次元の世界って知ってる?」
一人が声をひそめて、みんなにそう尋ねた。
もう一人が答える。
「知ってる。あそこに行くと二度と戻って来れないんでしょ?」
「私、寝てる時に行ったことあるよ。お母さんが起こしてくれなかったら戻って来られなかった」
それを聞いて、私はものすごーく怖くなった。
クラスメイトの話をまとめるとこうだ。
・寝てる時に迷い込む場所。
・夢ではないらしい。
・四次元の世界という場所に行ってしまうと現実世界には戻って来られない。
・誰かに起こされて、それに気づけば戻れる。
そしてクラスメイトのこの台詞が、私をさらに恐怖に陥れる。
「誰でも一度は絶対に経験するよね。それで戻ってこられるかどうかは分からないけど」
なにそれこわい。
まだそんな経験一度もないのに。
……とものすごく不安になる齢十歳の私。
すると、その話をしていた一人の子がいきなり机にうつぶせになる。
5分も経たないうちに顔を上げ、口を開く。
「いま、行ってきた!」
いや、まて。
そんな気軽に行ける場所なの?
だとしたら居眠りして消える人が続出だよね?
さすがにそれはないだろうと当時の私は思った。
だけど、四次元の世界という恐ろしい場所があり、行ったら戻れないかもしれない。
それだけはなぜか信じてしまっていた。
四次元の世界が、どういう場所かは想像できない。
でも、恐ろしい世界に違いない!
図書館で前に借りた地獄絵図の本みたいな!
もう寝るのが怖い……。
こたつでうたた寝するのが大好きだけど、それも危険なのか。
夜、寝ていて四次元の世界へ行ってしまって起こしてもらえなかったら
それは、死ぬことと同じなんだ!
死のを恐怖を抱えたまま家に戻る。
分かりやすく元気のない私に両親が尋ねる。
「どうしたの?」
そんな母の言葉に、私は思い切って今日、聞いた話を打ち明けてみた。
すると、両親は大笑いした。
「そんなものあるわけないでしょ!」
笑いながら言う母に、妙にホッと安心した。
それがキッカケでいつも通りに戻る単純な私であった。
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