連行2・会議1
連れ出された本堂が周囲を厳重に囲まれて向かわされた先は、最初に見えた山村の方向であった。
遠くから一瞬みただけであったが、その山村と思っていた周りには防壁ともいえるモノに囲まれている格好であった。
その囲まれている防壁伝いに進むと、その防壁の一部に設置されている門といえる場所を潜り抜け、その内部へと移動すると、本堂の目に入ってきたものは舗装されてもいない土があらわになったままの道や広間という形の場所に、土壁の様な構造の家々が規則正しく立ち並んでいた。
見える範囲では、当初に見えていた村ともいえなくもないの数ではあったが、その家々の窓や扉は厳重に戸締りがされている恰好であり、人の気配はするものの、何やら厳重とも言うべき状況を醸し出していた。
閑散としているといえる状況で、連れだっている人物たち以外の人を見かけることはなかったが、時折感じる視線の様なものから、少なくともそれぞれの家々には人が住んでいるという事を感じ取ってはいた。
そんな閑散とした場所を通り過ぎ歩かされる事数十分、その村から外れた場所にこれまた大きな構造物が目に入ってくる。
それは、それまで通ってきた場所とは異なり、まるでコンクリートの打ちっぱなしとでもいえる長方体の恰好をしている建物がそこに存在していたのであった。
本堂は、そのままその建物の中へと連れ込まれ、ある部屋と思われる場所に着くと、「METIS!」という声と共に、本堂を力任せにその部屋へと放り込む。
放り込まれても、本堂はすぐに自身の弁明へと走るのだが
「待ってくれ!自分は君たちの敵ではないと、先ほどから・・・」
「Savos!Via traktado efektivigas poste.Sed prepariteco!」
本堂の言葉をかき消すかの様に罵声が被せられ、取りつく島もないまま厳重な扉が無情にも勢いよく閉まり、機械式のカギがかかる音が、本堂がいる部屋の中に響いていった。
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ここからしばらくは、この状態を作り出した側の視点で物語を進めてみよう。
コンクリートの長方体ともいえる建屋から離れた場所に、一つの大きな屋敷ともいえる物が存在していた。
その一室において、10数名の人物が円卓を囲みながら、怒声ともいえる発言が飛び交っていた。
その一つ、進行役ともいえる人物から意見を振られた一人の男が声を荒げて主張しあっていた。
「何度も言っている!すぐに処分をするべきだ!」
その男は、大きく机をたたきながらそう主張を続けている様であった。
しかし、その主張に対して上座の隣に立つ人物からは
「しかし、今後の事を考慮するならば、情報を引き出すべきです」
「なにを悠長に事を構えている!貴官もみただろう、人族へと擬態している姿を、あれほどまでに精巧な擬態魔法を貴官は見たことがあろうのか?」
「いえ・・・それは・・・」
「あれほどの魔法を使えるのだ、他にも何かしら扱える物であるのが道理だろう!その様な危険人物を、我ら連合の腹の中に置き続ける訳にいかんだろうが!!」
反論ともいえる意見に対し、声を荒げる人物からは、それ以上の反論をさせまいとなおの追撃ともいえる論が発せられていた。
「ですが、先ほどの戦いにおいて、仲間内での戦いが起きたからこそ、この砦が存続できたのもまた事実です。なれば、その仲間内ともいえる彼奴等の情勢を知り、もし内乱でも発しているのなら、その内乱軍と接触し、協力を取り付ければ・・・」
先ほど行われた戦闘に関して、少なからず異変となっていた事実をあげ、何かしらの異常が発生している点を強く協調して対応してくる。それに対し
「貴官の言いたいこともわかる。今、我ら連合軍の戦力が彼奴等に数ですら劣っているという点は否めない。その点を鑑みれば、協力が得られるならばそれに越したことはなかろう。」
先ほどまで強く出ていた男は、いったん冷静にその案に対して否定することではなく、肯定する方向で意見を述べていた。
その肯定となる意見によって、先ほどまで反論していた人物からは、理解していただいたという風な感情を顔に出していたが、その表情は次の言葉で覆される。
「なら
「だが!相手は魔族だ。いつ何時手のひらを返される相手かわかっているのか?それも、数十年前に起きた戦いの末路も知っているだろう!協力的な態度を示した一部の部族はどうした?われらの背後から強襲し、被害を甚大にし大敗を喫しただけではなかったか!?」
ぐっ・・・」
過去の戦争事においての教訓からなのか事例を挙げられた事により、相手のその主張を退けるにはあまりにも強引ではあったのだが、しかしながら各人からは賛同を得られる事はなくなるほどであった。
「し、しかし、過去は過去であり、今現在とは・・・
「ふん、その保証もなかろうが!」
押し黙る格好になり、立っていた人物が苦虫をつぶすかの表情に変わった際、その場に外からの来客が訪れた。
「伝令!森人が到着されました!」
「おお、やっとか」
「しかし、今頃何し来たんだ?」
「戦闘はもう過ぎたというのにな。まるで計ったみたいだな」
皮肉といもいえる回りのどよめきに対し、上座に座っていた男は手を上げ、場を沈めさせ、
「やっときおったか・・・同盟契約を結び協力を取り付けたにも拘わらず、今まで何をしてたのやら。」
「で、ですが・・・」
「ん?」
伝令として訪れた一人の人物は、言うべきか言わざるべきかの苦悶をしている様であったのだが、先ほどまで立って討論をした人物から、「いいから、話せ」と促され、その口をひらく。
「はっ!現在到着なされた森人は女性が1名のみとなっております。」
「何だと?あいつ等はふざけているのか!?」
先ほどまで、討論をしてた男は、再び机にその拳をたたきつけ怒りをあらわにしていた。
それを契機に 再び回りからどよめきとも、愚痴ともいえる内容が漏れ始める。
「いまさら、どの面さげて・・・」
「しかも1名だけ」
「あいつ等は今の自体を理解していなのでは?」
「同盟が聞いてあきれる」
「臆病風に吹かれたのだろ?あいつららしいじゃないか」
「ああ、森から出ないというしな。」
などなど、その場にいた誰も彼もがその報告に対して、それぞれがそれぞれに思っていた感情を吐露し、それら愚痴ともいえる言葉を発していたのだが、ただ一人、その様な愚痴をこぼさず、目を閉じ寡黙にしていた上座に座る人物が、再び手を挙げてその場を沈めたのち
「まずは、森人と会おう。それと、捕虜の件に関しては保留だ。拘束はしているのだろ?」
「はい、魔道具による阻害と、遺跡施設による阻害障壁によって抜かりなく」
「なれば後にしよう。森人の件が先だ。」
「はっ」
そう伝えると、そのそばに立っていた人物から伝令に対し、案内する様に命令を飛ばしていた。
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○翻訳コーナー
※意訳です。
「METIS!」(入れ!)
「Savos!Via traktado efektivigas poste.sed prepariteco!」
(だまれ!貴様の処遇は後だ、だが覚悟しろ!)
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